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イランでは先月、政府がガソリン価格を引き上げたのをきっかけに各地で反政府デモが起き、イラン政府は複数の死者が出たとしましたが実態は分かっていません。

国連のバチェレ人権高等弁務官は6日、声明を発表し、「女性や子どもを含む少なくとも208人が亡くなったという情報を得た。犠牲者は2倍に膨れあがるという未確定の情報もある」と述べました。

国連が入手した映像では、逃げ回る武器を持たないデモ隊に対して治安部隊が顔や心臓などをねらって発砲している様子が確認できたということで、「殺意を持っていると言える発砲のしかただ。国際的な規範に明らかに反している」と非難しました。

さらに、デモで拘束された人の数は少なくとも7000人に上り、自白を強要され、弁護士に面会することもできず、劣悪な環境で拘束されたままになっているとして、即時の釈放を求めています。

国連人権高等弁務官事務所のコルビル報道官はスイスのジュネーブで行った記者会見で、「独立した公平な調査が直ちに必要だ」と述べ、デモに対する当局の対応について調査する必要性を訴えました。

イランのロウハニ大統領は今月18日から20日までマレーシアを訪問する予定で、その前後に日本への訪問を検討しています。

これについてイランのアラグチ外務次官は、滞在先のオーストリアのウィーンでNHKの取材に対し、「訪日の日程を確定させようとしている。近く決まることを望んでいる」と述べ、日本側と調整を進めていることを明らかにしました。

そのうえでアラグチ次官は、「日本はイランにとって経済的なパートナーだ。イランはこれまでずっと日本に原油を供給してきたし、日本はイランに技術を提供してきた。これまで同様の関係を継続したい」と述べ、ロウハニ大統領の訪日を通して原油輸出の再開を含め日本との経済関係強化を図りたい考えを明らかにしました。

イランの大統領の訪日は、実現すれば2000年の当時のハタミ大統領以来、19年ぶりです。イランとしては、日本と経済関係強化をはかることで厳しさを増す国内経済を改善させたい考えですが、アメリカの制裁のもと、イランとのビジネスを活発化させるのは容易ではない情勢です。

オーストリアのウィーンでは6日、イランのほか、フランス、イギリス、ドイツなど核合意の関係5か国による次官級の協議が行われました。

去年、アメリカが一方的に核合意から離脱し制裁を再開したのに対して、イラン側は約束されていた経済的な利益が得られていないとしてウランの濃縮活動を強化する対抗措置を打ち出すなど、その存続が危ぶまれています。

このところ、ヨーロッパ側はイランに対し制裁再開の可能性も示唆していましたが、今回はこの点について議論はなく、各国が合意維持に向けて努力することを確認したということです。

ただ、ヨーロッパ側はイランに合意の全面的な履行を迫っているのに対し、NHKなどの取材に応じたイランのアラグチ外務次官は「イランにメリットがないかぎり新たな措置をとり続けると伝えた」と述べ、ヨーロッパ側こそが経済支援策を実施すべきだという考えを強調しました。

イラン側は来月上旬にもIAEA国際原子力機関の査察受け入れ停止も含めた新たな対抗措置に踏み切る可能性も示唆していて、合意の維持はますます難しくなっています。

IAEA国際原子力機関のグロッシ新事務局長は、就任後初めてイランの高官と会談し、申告されていない施設からウランが検出された問題について説明責任を果たすよう求めたことを明らかにしました。

「核の番人」と呼ばれるIAEAのトップに新たに就任したグロッシ事務局長は、6日、ウィーンのIAEA本部を訪れたイランのアラグチ外務次官と就任後、初めて会談しました。

IAEAによりますと、会談ではイランの核開発に対するIAEAの査察活動について議論したということです。そのうえでグロッシ事務局長は、イランがIAEAに申告していない国内の施設から微量の天然ウランが検出された問題について、「完全かつ適切な協力をする必要がある」として説明責任を果たすよう求めたことを明らかにしました。

これに対し、イランのアラグチ外務次官はNHKの取材に対し、「非常に有益で建設的な会談だった。IAEAとの協力関係を続けることで一致した」と評価しました。一方で、「IAEAはこれからもプロフェッショナルで公平であり続けることを確約した」と述べ、イランと対立するアメリカの政治的な圧力に影響を受けないようけん制したとみられます。

イランは、アメリカなどへの対抗措置として来月上旬にはIAEAの査察受け入れ停止も含む新たな対抗措置に踏み切る可能性も示していて、IAEAがイランとの協力関係を維持できるか、国際社会から懸念の声が上がっています。