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イギリス国民はEUからの離脱にゴーサインをだしました。

その選択をグッドハート氏は、SomewhereとAnywhereの対立の中で読み解きます。

グッドハート氏は、Somewhere=特定の地域から出たことがない、労働者たちの“逆襲”が、3年前、世界を驚愕(きょうがく)させたイギリスの国民投票の結果につながったと読み解きます。

グッドハート氏
「私が定義するところの“Somewhere”の人たちが、自分たちの不満が無視され続けていることにいらだち、逆襲したのだ。既存の政党が経済的にも文化的にもどんどんリベラル化し、自分たちの声を代弁してくれる政治家がいないことに彼らは不満を強めていた。こうしてこれまで投票をしなかった彼らが、今の社会にNOを突きつけた。それが想定外の離脱派の勝利となった」

グッドハート氏
保守党の勝因は、“離脱派の党”という旗幟(きし)を鮮明にして戦ったことだ。保守党のなかにも、離脱に違和感を持っていた人も少なくなかった。しかし国民投票の結果を受け入れるべきだ、民主的なプロセスを尊重すべきだ、という人が多数を占めた。離脱による経済的なダメージよりも、国民投票という民主的なプロセスを無視することによる政治的なダメージの方がイギリスにとってより深刻だと考えたのだ

グッドハート氏
経済、つまりお金でなく、生き方、国のアイデンティティーを守るべきだという考えが台頭している。移民を巡っては日本でも意見は分かれるだろう。ヨーロッパと同じような数の移民が来れば、経済的にはプラスかもしれないが、日本社会のアイデンティティーが失われてしまうと考える人もいる。イギリスも同じだ。グローバル化の恩恵を受けていないと不満を強めるSomewhereの人たちは、国家のアイデンティティーや民主主義そのものも弱体化してしまったと感じている。そして、こうした変化を強いてきたシンボルがEUなのだ」

グッドハート氏
「保守党の大勝で、ジョンソン首相はEU離脱後の貿易交渉を本格化させる。難しい交渉になるが、双方が譲歩して好ましい合意ができるだろう。中長期的には、EUこそ難しい局面に直面する。イギリスが危機を乗り切れば、EUの離脱派を勢いづけ、統合の足を引っ張る」

「その結果、EUはドイツ、フランスを中心とするコアグループと、ユーロ圏からは離脱する第2グループ、さらに距離を置く第3グループへと多層化していく。こうしてEUはより緩やかな連合体へと変わっていくのではないか

SomewhereとAnywhereの対立はイギリスにとどまらず、来年以降、世界に拡散していくとグッドハート氏は予測します。

グッドハート氏
「私たちは、過去30年、グローバル化という遠心力の中で生きてきた。それによってすべてがばらばらに、個人主義が徹底された。それは大きな富をもたらす一方で、社会を不安定化した」

グッドハート氏
そして今、正反対の力が作動し始めた。国民国家に回帰する求心力。すなわち安全やアイデンティティーをより重視するベクトルだ。これは、今後30~40年続く新たなサイクルであり、各国でグローバル化の見直しが進むだろう。

そしてAnywhere(どこでも生きていける人たち)を代表してきた政治家たちは、Somewhere(ある場所で生きる人たち)の声に耳を傾け、その政策を取り込むことを求められる。SomewhereがAnywhereに取って代わるのではなく、双方の間で望ましい均衡が模索されることを期待する」

2020年、世界はアメリカの大統領選挙を固唾をのんで見守る「待ちの1年」になります。ただ、その結果にかかわらず、グローバル化から自国第一主義へと舵を切ったアメリカの進路は変わらないとグッドハート氏は見ています。

The Road to Somewhere: The New Tribes Shaping British Politics (English Edition)

The Road to Somewhere: The New Tribes Shaping British Politics (English Edition)

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まさにそのように「壁」に飢えている人たちが非常に多い(=圧倒的な多数派に迫る勢い?)からこそ、トランプ氏のような大統領がついに誕生したのではないでしょうか。また、先般のフランスの大統領選挙の際の右翼政党の集会で用いられた「我々は我々の国にいる」というスローガンを見ても、移民の多いフランス等、西ヨーロッパの国々の社会においても、類似の現象=「壁への飢え」が如何に「猛威を振るっている」かが窺えます。