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イランがイラクに駐留するアメリカ軍を狙って弾道ミサイルの攻撃を行ったことについてイラク政府は8日、声明を出し、イラン側からは攻撃を始めるタイミングで連絡があり、それと同時にアメリカ側からミサイルによる攻撃があったと連絡を受けたことを明らかにしました。イラン側はアメリカ軍が駐留する基地を攻撃の対象とするとしたものの具体的な場所は示さなかったということです。

また声明によりますと、これまでのところイラク側に犠牲者は出ておらず、アメリカ側からも死者が出たとの連絡は受けていないとしています。

そのうえで、「緊張を緩和し、戦争を防ぐため、内外の関係者と連絡を取り合っている。イラク政府は主権の侵害や国土への攻撃を拒否し、イラク国民を守るため事態がエスカレートしないよう努力を続けている。今回の危機は地域や世界を脅かしている」として、イラクを舞台にしたアメリカとイランの報復の応酬に強い懸念を示しました。

私が大統領であるかぎり、イランには核兵器を持たせない。幸運にも、昨夜の攻撃でアメリカ人に死傷者はなかった。

アメリカ軍の兵士はみな安全な状況にある。軍の拠点への損害は最小の規模で済んだ。

アメリカ軍は何に対しても準備ができている。イランは攻撃の構えを緩めようとしているようだ。これは世界にとってよいことだ。

私の指揮のもと、アメリカはソレイマニ氏を殺害した。ソレイマニ氏は、新たな攻撃を計画していたがわれわれがそれを阻止した。

彼はもっと前に排除されるべき人物だった。アメリカはイランに対し、新たな経済制裁を科すことにした。

欠陥のあるイラン核合意はどうせまもなく失効する。イランは核開発をやめ、テロの支援をやめるべきだ。

イギリス、ドイツ、フランス、ロシア、中国も、この現実を認識するべきだ。

関係国はこれまでのイランとの核合意にとらわれず、世界をより安全で平和にするため新たな合意に向けて協力するべきだ。

新たな合意はイランの経済的な可能性を引き出し、豊かで活気ある社会をつくるものであるべきだ。

イランが暴力をふるうかぎり地域の平和と安定はやってこない。私はNATO北大西洋条約機構に対し、もっと中東に関与するよう求めていくつもりだ。

われわれはいまや世界一の石油や天然ガスの生産国である。アメリカは自立しており、中東の石油は必要ない。

アメリカは軍事力を行使したくはない。経済力こそが最大の抑止力である。

過激派組織IS=イスラミックステートはイランの敵であり、ISの滅亡はイランにとってよいことだ。私たちは、ISとの戦いを含めて協力し合うべきだ。

私たちはすばらしい将来を望んでいる。アメリカは平和を追求するすべての人々とともに、平和に身をささげる準備ができている。

イランは革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害されたことへの報復だとして、現地時間の8日未明、イラクに駐留するアメリカ軍をねらって10数発の弾道ミサイルを発射しました。

これを受けてトランプ大統領ホワイトハウス8日午前11時半、日本時間の9日午前1時半ごろ国民向けに演説しました。

このなかでトランプ大統領は今回の攻撃でアメリカ人兵士らに死傷者はいなかったと明らかにし、「アメリカ軍の兵士はみな安全な状況にある。軍の拠点への損害は最小の規模で済んだ」と強調しました。

そして「イランは今のところ矛を収めているようだ。それはすべての関係者にとっても世界にとってもよいことだ」と述べ、イランがさらなる攻撃をする可能性は現時点では低いという認識を示しました。

そのうえで、「われわれは強力な軍や装備品を持っているが、使いたくはない」と述べるとともにイランへの対抗措置としては軍事力の行使ではなく、新たな経済制裁を科し、圧力をかけ続ける考えを示しました。

そして最後にイランの国民や指導部に対するメッセージとしてアメリカは平和を追求するすべての人々とともに、平和に身をささげる準備ができている」と述べました。

トランプ大統領はこれまでイランが報復に出れば反撃するとたびたび強く警告していますが、演説では反撃に言及せず、事態のエスカレートは避けたい考えを明確にしました。

トランプ大統領の演説について国連の報道官は8日、「本格的な衝突から退くことを示したもので歓迎する」と述べました。

国連は、現地時間の8日未明に、イランが隣国イラクに駐留するアメリカ軍をねらって弾道ミサイルを発射したあと、緊張がさらに高まったとの危機感を示し、改めて当事者に最大限の自制を求める声明を発表していました。

その後、トランプ大統領が演説で事態がこれ以上エスカレートすることは避けたい考えを明確にしたことから国連としては、本格的な衝突はひとまず回避できたという認識を示したものとみられます。

イランのザリーフ外相は8日、アメリカ軍に対して軍事攻撃を行った直後、イラン政府がアメリカ側に書簡を届けていたことを明らかにしました。

書簡の詳しい内容について明らかにしていませんが、これに先立ち、ハタミ国防軍需相は、今後の対応について、「イランがどう出るかは、アメリカが今後、どのような対応をとるかによるだろう」と述べ、アメリカの対応を見極める考えを示していました。

イランとしてはアメリカとの正面衝突を避けたいのが本音で、トランプ大統領が行った8日の演説を受け、今後の対応を検討していくものとみられます。

今回のイランによる攻撃のあと、イラク武装組織からもアメリカへの攻撃を警告する動きが出ています。

イランとつながりが深いイラクイスラムシーア派武装組織アサイブ・アフル・ハック」の指導者は、8日声明を出し、「次は、イラクがイランのソレイマニ司令官の殺害に対する報復を行う時だ。イラク国民は勇敢でイランの攻撃を上回るものになるだろう」と述べました。

この武装組織は、イラクシーア派民兵組織の集合体、「人民動員隊」に属する有力な勢力で、アメリカ政府からはテロ組織に指定されています。

イラクでは、別のシーア派武装組織も報復を警告していて、今後のアメリカの出方次第では、こうした武装組織がイラク国内でアメリカへの攻撃を仕掛けるおそれがあります。

トランプ大統領の演説を受け、イランの首都テヘランでは、今後アメリカとの軍事的緊張が緩和されるのではないかと期待する声が聞かれました。

58歳の男性は、「戦争はよいことではない。もうこれ以上緊張が高まることはないのではないか。ソレイマニ司令官がアメリカに殺されたことで、イラン国民は結束することができた。戦争になって困るのはアメリカのほうだ」と話していました。

また35歳の男性は、「イラン側から報復する必要はなく、これで十分だ。次はアメリカが今後どう出てくるのか見極める必要がある。もし仮にアメリカが報復してきても、われわれはそれを上回る反撃ができる」と話していました。

イランとの核合意についてトランプ大統領は演説の中で、関係国が新たな合意に向けて協力すべきだと述べましたが、この演説に先立ってイギリスのジョンソン首相は、8日、議会で、「核合意は、イランにおける核開発をとめる最良の手段だという考えに変わりはない」と述べました。

ジョンソン首相は、核合意の枠組みは現在、機能していないものの、アメリカとイランの間で危機が回避されれば、再び核合意を順守していくべきだという考えを示しました。

アメリカでは、トランプ大統領が明確な出口戦略を持たないままイランの司令官を殺害し、その結果、望まない戦争に突入してしまうのではないかという不安が急速に広がりつつありました。

トランプ大統領としてはまずこの不安を払しょくする必要があったのです。

また、歴代政権が見送ってきた司令官の殺害に踏み切り、共和党議員など保守層からは一定の評価を受け、すでに成果を手にしたという認識もあったとみられます。

演説で印象的だったのは、トランプ大統領自分のまわりに政権や軍の幹部を整列させた演出です。

イランに反撃しないという判断は自分だけでなく、政権内で一致した方針だとアピールするねらいもあったはずです。

演説のなかでトランプ大統領がイランに新たな経済制裁を科すと発表したのは、軍事力ではなく制裁圧力によってイランを対話に引きずり出すという従来の戦略に戻したいと考えているからです。

トランプ大統領は中東地域から軍を一刻も早く撤収させ、地域への関与を弱めたい考えですが、ことし秋には再選をかけた大統領選挙を控え、強い指導者像を打ち出したいという思いもあります。

今後のイランへの対応も、この交錯した思惑のあいだで成果を求めて揺れ動いていくことになりそうです。

アメリカのエスパー国防長官と制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、8日、国防総省で記者団に対し、今回の攻撃でイランが発射したのは16発の短距離弾道ミサイルで、イラン国内の3か所から発射されたと明らかにしました。

このうち11発イラク西部のアサド空軍基地に着弾したほか、1発が北部のアルビルの基地に着弾したということです。

また今回の攻撃で基地の誘導路や駐車場のほかヘリコプターが被害を受けたものの、大きな損害は出なかったとしています。

一方でイランの脅威は低下していないとして、引き続きイランやイランが支援する勢力による攻撃に警戒を続ける考えを強調しました。

クウェートの国営通信は、イラン情勢に関連して現地時間の8日午後、ツイッタークウェートの国防相が国内に駐留するアメリカ軍の司令官から一部の兵士を3日以内に撤退させるとした書簡を受け取ったという記事を配信しました。

記事はロイター通信や中東の衛星テレビ局アルアラビアなどが速報で報じるなどイランをめぐるアメリカ軍の新たな動きではないかと注目が集まりました。

しかし、クウェート政府はその後、ツイッターのアカウントが何者かに乗っ取られ、事実ではない記事が配信されたと発表しました。

クウェート政府は乗っ取りの背後にどのような組織が関わっているかなどについては明らかにしていませんが、湾岸諸国では3年前、カタールの国営通信がハッキングの被害を受けて、事実ではない記事が配信され、外交関係に影響を与えたこともあり、イランをめぐって緊張が高まる中水面下での情報戦が繰り広げられているものとみられます。

イラク軍によりますと、首都バグダッドで8日夜、アメリカ大使館がある「グリーンゾーン」と呼ばれる地区に2発のロケット弾が撃ち込まれました。

けがをした人はいないということですが、爆発で火災が発生したということです。

イラクでは今月、イランの精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官が殺害されたことで、イランが支援する武装組織などの間でアメリカへの反発が強まっていました。

このため、アメリカを敵視する勢力による報復ではないかという見方が出ています。

イランがアメリカ軍の拠点を報復攻撃したことに対してアメリカのトランプ大統領は8日イランとの間で事態のさらなる悪化は望まない考えを示し、報復の応酬は避けられるだろうという見方が広がっています。

そうした中でもイラクでは依然として一部で、アメリカへの反発が続いているものとみられます。

NHKはイランの弾道ミサイルによる攻撃を受けた、イラク西部にあるアサド空軍基地を、攻撃後の8日午前11時ごろ撮影した最新の衛星写真を入手しました。

アメリカにあるミドルベリー国際大学モントレー校の専門家グループが分析したところ、基地の周辺には攻撃を受けたと見られる場所が少なくとも7か所ありました。

このうち、駐機スペースには先月30日の写真では軍用機の格納庫と見られる5つのテントのような施設が並んでいましたが、8日には両端の2つを残して中央の3つの施設が壊されているのがわかります。

また、滑走路の上にも先月30日にはなかった大きなくぼみが確認できます。

このほかに攻撃されたとみられる場所も、格納庫や倉庫などに限定されており、イランが、基地に駐留するアメリカ軍に大規模な人的被害が出ないよう標的を慎重に選んだことがうかがえます。

衛星写真を分析したミドルベリー国際大学モントレー校のマーガレット・クロイ氏は、NHKの取材に対して、「かなり正確に、施設に打撃を与えている。標的をたたく精度がかなり高いようだ」と話し、イランが高い精度でミサイル攻撃を行ったという見方を示しました。

イラクで強い影響力を持つイスラムシーア派指導者のサドル師は8日、イランと米国双方が緊張緩和の姿勢を示したことを受け、イラクが直面する危機は終わったとの考えを示し、民兵組織に攻撃を控えるよう呼び掛けた。

トランプ米大統領は8日、米軍による革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害に対するイランの報復攻撃で米国人の死傷者は出なかったと明らかにした。また必ずしも軍事力を行使する必要はないと述べた。

サドル師は声明で、イラクの主権と独立を守れる力強い新政府が今後15日間で組織されるべきだとした。一方、外国軍の撤退を求める考えを改めて表明。「政治や議会、また国際的な対応が尽くされるまで、イラクの各派に慎重さと我慢強さ、軍事行動の自制、一部のならず者による過激な発言の停止を求める」と促した。

イスラムシーア派が多数派を占めるイラクで、強い影響力を持つシーア派指導者のサドル師はトランプ大統領の演説を受け8日付けで声明を出し、この中で「この恐ろしい危機は過ぎた」としてアメリカとイランの間で緊張がさらに高まる事態は避けられたとの認識を示しました。

そして「人民動員隊に対し、警戒態勢を解くよう忠告する」として、イランのソレイマニ司令官の殺害を受けてアメリカへの反発を強めていたシーア派民兵組織に対し、活動を控えるよう促しました。

イラクでは、ソレイマニ司令官の殺害を受けてイランとつながりのある民兵組織などがアメリカへの報復を警告していました。

アメリカのトランプ大統領は、イランが革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害への報復として、隣国イラクアメリカ軍の拠点を攻撃したことを受け8日、国民向けに演説しました。

このなかでトランプ大統領は、アメリカ兵らに死傷者はなく、被害は最小限に抑えられたと強調しました。そして「イランは今のところ矛を収めているようだ」と述べ、さらなる攻撃の可能性は低いという認識を示し、反撃には言及しませんでした。

さらにアメリカは平和に身をささげる準備ができている」として、これ以上の事態の悪化は避けたいという姿勢を明確にしました。

また、イランのラバンチ国連大使は8日、国連のグテーレス事務総長に書簡を送り、攻撃は正当な自衛権の行使だと主張する一方、「イランは事態がさらに悪化したり、戦争になったりすることを求めない」として、イランとしても報復の応酬は望まないという考えを示しました。

アメリカとイランの双方が冷静な対応を示したことで、国際社会では本格的な衝突はいったん回避できたという見方が広がっています。

アメリカのエスパー国防長官と制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、8日、国防総省で記者団の取材に応じ、イランが今回の攻撃で発射したのは16発の短距離弾道ミサイルで、イラン国内の3か所から発射されたと説明しました。

エスパー長官によりますと、このうち11発はアメリカ軍が駐留するイラク西部のアサド空軍基地に、1発は北部のアルビルの基地に着弾しましたが、4発は着弾しなかったということです。

攻撃ではアメリカ軍のヘリコプターや基地の誘導路、駐車場が被害を受けたものの、大きな損害は出なかったとしています。

また今回のミサイル攻撃では、事態のエスカレートを避けたいイランが、アメリカ軍に大規模な人的被害が出ないよう標的を慎重に選んだとの見方も出ていますが、ミリー議長は「攻撃は兵士を殺害することを意図したものだと見ている」と述べ、こうした見方を否定しました。

そのうえで、アメリカ兵らに死傷者が出なかったのは、アメリカ軍が早期にミサイルの発射を探知し、警報を発して避難させた対処能力の結果だと主張しました。

一方、ミリー議長はイランとつながりの深いイスラムシーア派武装組織からの攻撃の可能性について「非常に現実的だ」と述べ、今後、攻撃を仕掛けてくる危険があるとして、警戒を続ける方針を示しました。

イランのラバンチ国連大使は国連のグテーレス事務総長に書簡を送り、「イランは事態がさらに悪化したり、戦争になったりすることを求めない」として、イランとしてもアメリカとの軍事的衝突を避けたい立場を強調しました。

イランの国連代表部は8日、ツイッターでラバンチ国連大使がグテーレス事務総長に送った書簡を公表しました。

書簡では、まずイランがイラクアメリカ軍の拠点をねらって弾道ミサイルを発射したことに関して、「イランは国連憲章51条が定める固有の自衛権に基づいて、ソレイマニ司令官に対する卑劣な攻撃を実行したイラクにあるアメリカ空軍の駐屯地に、計算された相応の攻撃を遂行した」として、正当な自衛権の行使だと主張しました。

そうえで「イランは事態がさらに悪化したり、戦争になったりすることを求めない」として、イランとしてもアメリカとの軍事的衝突を避けたいとする立場を強調しています。

アメリカのトランプ大統領は、演説でイランとの間で事態のさらなる悪化は望まない考えを示していて、イランとしてもこれに応じた形です。

アメリカのペンス副大統領は8日、出演したテレビ番組のインタビューで、「イラン政府が、つながりの深い武装組織に対して、アメリカの市民や標的への攻撃をしないよう呼びかけているという心強い情報を得ており、その呼びかけが続くことを願っている」と述べ、イランが武装組織に攻撃を控えるよう働きかけているという見方を示しました。

イランがアメリカ軍の拠点を攻撃したことに対し、アメリカのトランプ大統領が事態のさらなる悪化は避けたいという考えを示したことについて、国際社会からは、本格的な衝突はひとまず回避できたとして好意的な受け止めが広がっています。

アメリカのトランプ大統領は、8日午前(日本時間の9日未明)に、イランがアメリカ軍の拠点に対して攻撃を行ったことを受け国民向けに演説を行い、「われわれは強力な軍や装備品を持っているが、使いたくはない」などと述べ、事態の悪化は避けたいという考えを明確に示しました。

これについて国連の報道官は、「本格的な衝突から退くことを示したもので歓迎する」と述べ、アメリカとイランの衝突がひとまず回避できたとして、好意的に受け止めています。

またイギリスの有力紙「ガーディアン」も「短期的には衝突が避けられた」として評価しています。ただ「中東の代理勢力を通じたにらみ合いは続くだろう」として、イランが域内の民兵組織などを使ってアメリカに対抗する構図に変化はなく、長期的な対立が続くとしています。

一方、ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領は、トランプ大統領の演説に先立ち発表した共同声明で、中東地域の緊張緩和に向けて連携を強化する考えを示し、この地域での存在感を高めたいねらいがあるものとみられます。

ロイター通信は、アメリカのクラフト国連大使が8日、国連安全保障理事会にイランと前提条件なしで話し合う用意があるとする書簡を送ったと伝えました。

書簡では「イランが国際平和と安全保障をさらに脅かすことを防ぐため、前提条件なしでイランと真剣な交渉に臨む用意がある」としています。

この書簡に先立って、トランプ大統領は国民向けの演説で、「これまでのイランとの核合意にとらわれず、新たな合意に向けて協力すべきだ」と述べています。

このため、書簡にはイランが対話に応じるよう、核合意の当事国である安保理常任理事国などに協力を求めるねらいがあるとみられます。
また書簡では、アメリカ軍が今月3日、イランのソレイマニ司令官を殺害したことについて、国連憲章が定める自衛権の行使だ」として、自衛権の正当な行使だと主張しています。

国連では、イランのラバンチ国連大使も、司令官殺害の報復としてアメリカに攻撃を仕掛けたことを自衛権の行使だとする内容の書簡安保理などに送っており、国際世論を味方につけるための駆け引きも活発化しています。

安保理では9日、世界の平和と安全をテーマにした公開討論が開かれることから、アメリカとイランの対立をめぐり各国がどのような立場を示すのか注目されます。

イラン情勢をめぐってアメリカのトランプ大統領が8日に行った演説について、イラン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授は「イランへ制裁を科す姿勢は示したものの、事態をエスカレートさせる内容ではなかった。全面戦争を望まないイラン側のメッセージを、アメリカが理解したと思われる」と分析しました。

一方「両国の緊張関係が改善するとは思えず、イランはアメリカ軍の中東からの撤退に向けて働きかけを続けるだろう」と指摘しました。

このうえで田中教授は「イランの司令官とともに幹部が殺害されたシーア派武装組織などがイランの意図とは別に、アメリカに報復攻撃を仕掛ける可能性は否定できない」と述べ、アメリカへの攻撃が今後も起きるおそれがあるとの見解を示しました。

また、殺害された司令官はイラクで過激派組織IS=イスラミック・ステートなどと対抗してきたシーア派武装組織に強い影響力を持っていたとされていることから「司令官を失ったことで、武装組織の連携が崩れるおそれがあり、もっとも得をしたのは過激派組織かもしれない」との見立てを示しました。

イランの核合意への影響については「イランはアメリカに司令官が殺害されたことをアピールしてヨーロッパから同情を得て有利な立場を得ようとしたが、アメリカへの批判は集まっておらず、イランは戦略の再検討を迫られる」と述べました。

アメリカのトランプ大統領は、イランが司令官殺害への報復として、隣国イラクアメリカ軍の拠点を攻撃したことについて、8日、国民向けに演説し、アメリカ軍に死傷者が出なかったことから、これ以上の事態の悪化は望まない考えを示しました。

これを受けて、イラン国内でも大規模な衝突は回避できたという受け止めが広がり、首都テヘランの市民からは「緊張が高まってほしくないし、そうならないと思う。戦争はよくない」などと安どの声が聞かれました。

その一方で、イランの核開発問題をめぐってアメリカは核合意から一方的に離脱し、イランへの制裁を強化しています。

またイランの最高指導者、ハメネイ師も報復攻撃のあと、「この地域でのアメリカの存在を消し去ることが重要だ」と述べ中東地域からアメリカ軍の排除を目指す姿勢を一層鮮明にしています。

大規模な衝突は回避されたという受け止めが広がっているものの、両国の間の溝は深く対立が収まる見通しはたっていません。

アメリカのトランプ大統領は、イランによるイラク駐留アメリカ軍へのミサイル攻撃を受けて、日本時間の9日未明、国民向けに演説し、イランによるさらなる攻撃の可能性は低いという認識を示すとともに、反撃に言及せず、事態のさらなる悪化は避けたいという考えを示しました。

安倍総理大臣は9日午前、総理大臣官邸に入る際、記者団に「日本はすべての当事者に対して自制的な対応を強く求めてきた。自制的な対応を評価するのが日本の立場だ」と述べ、トランプ大統領の演説を評価しました。

そのうえで、「今後も日本は、地域の情勢緩和と安定化のために外交努力を尽くしていく考えだ」と述べました。

官房長官は記者会見で、アメリカのトランプ大統領の演説についてアメリカとイランの双方がさらなる事態のエスカレーションを望まない旨を明らかにしている中で、トランプ大統領は『軍事力を行使したくない』と述べており、地域の緊張緩和に資するものだと考える。自制的対応を政府としては評価したい」と述べました。

そのうえで、「事態のエスカレーションは避けるべきで、引き続き、中東情勢を高い緊張感を持って注視し、関係国と緊密に連携しながら地域の緊張緩和に向けてできるかぎりの外交努力をしっかり行っていきたい」と述べました。

一方、今週末から予定している安倍総理大臣の中東3か国歴訪については「現地の情勢を見極めたうえで判断していきたい」と述べました。

また、中東地域への自衛隊派遣について、菅官房長官「わが国の船舶の安全な航行を確保することは、政府にとって最大の責務だ。必要な情報収集態勢の強化が大事であり、現時点において、現地の情勢を見極めながら準備に万全を期していきたい」と述べ、派遣方針に変わりがないことを強調しました。

自民党の小野寺元防衛大臣は党本部で記者団に対し「アメリカが自制的な対応をとったことで、一定のおさまりがあればいいと思っているが、イランには、さまざまな勢力もあり感情的なもつれがあると思うので、不測の事態が起きてもしっかり対応できるよう、備えが大事だ。自衛隊の派遣までに、さまざまな装備や訓練が必要だ」と述べました。

安倍総理大臣は9日午前、総理大臣官邸の執務室で、外務省の秋葉事務次官防衛省の高橋事務次官自衛隊の山崎統合幕僚長らとおよそ30分間、面会しました。

イランによるイラク駐留アメリカ軍へのミサイル攻撃や、アメリカのトランプ大統領の演説などを受けて、最新の情勢などについて分析を行ったものとみられます。

面会のあと外務省幹部は、今週末から予定している安倍総理大臣のサウジアラビアなど、中東3か国歴訪について記者団に対し「情勢を見て判断する。それは変わっていない」と述べました。

安倍総理大臣は、今週末からサウジアラビア、UAE=アラブ首長国連邦オマーンの3か国を訪問する予定で調整を進めていました。

しかし、アメリカ軍によるイランの司令官殺害や、それに対するイランのミサイル攻撃などを受け、政府内では訪問を延期すべきだという意見も出ていたため、慎重に情勢を見極めてきました。

そして安倍総理大臣は、アメリカのトランプ大統領が、これ以上の事態悪化は避けたいという姿勢を明確にしたことに加え、イランも同様の考えを示していることなどを踏まえ、当初の予定どおり3か国を訪問する意向を固めました。

これについて外務省幹部も、9日午後記者団に「情勢が急変しないかぎり、当初の日程に変更はない」と述べました。

安倍総理大臣としては、今回の歴訪で3か国をはじめとする関係国に、事態の安定化に向けた外交努力を尽くすとする日本の立場を明確に示すとともに、中東地域への自衛隊派遣の目的も丁寧に説明して理解を求めたい考えです。

中東地域への自衛隊派遣について政府は、日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化するために変更はないとしていて、着実に準備を進めていく方針です。

河野防衛大臣は、東京 目黒区の海上自衛隊幹部学校で、不測の事態が起きた場合の対応などを想定した図上演習を視察し、部隊の運用や情報共有の手順などを確認しました。

このあと河野大臣は、記者団に対し「情勢の変化を見極め、必要な分析を行ったうえで、日本の関係船舶の航行安全に必要な情報収集を強化していきたい。しっかりと日数を取って、万全な準備を整えて送り出したい」と述べました。

一方、河野大臣は、アメリカのトランプ大統領の演説について「『軍事力を持っているが行使するわけではなく、経済力を使って抑止していきたい』ということだった。『中東の平和と安定が重要だ』というのはアメリカ、イランを含め各国の共通理解であり、すべての国が緊張感緩和に向けて動いていただきたい」と述べました。

河野防衛大臣は9日夕方、イランのハタミ国防軍需相と電話で20分間会談し、中東情勢をめぐって意見を交わしました。

河野大臣は午後7時前から記者団の取材に応じ自衛隊の中東派遣について最新の状況を伝えた。ネガティブな反応はなかった」と述べ、自衛隊の中東派遣を予定どおり行う方針を説明したことを明らかにしました。

そのうえで「ホルムズ海峡を通過する日本の関係船舶の安全についてイラン側の協力を求めた。船舶の安全についても、沿岸国として、イランから必要な協力、支援は得られると思っている」と述べました。

一方、緊迫する中東情勢をめぐるイラン側の反応については「時間を割いて意見交換をしたが、先方の発言を引用するのは避けたい」と述べるにとどまりました。

アメリカ・ワシントンを訪れている北村国家安全保障局は、日本時間の9日、安全保障政策を担当するオブライエン大統領補佐官と会談し、緊張が高まる中東情勢をめぐって意見を交わし、今後も緊密に連携していくことで一致しました。

日本時間の9日、ホワイトハウスで行われた会談では、アメリカ軍によるイランの司令官殺害や、それに対するイランのミサイル攻撃など緊張が高まっている中東情勢や北朝鮮情勢をめぐって意見が交わされました。

そして、両氏は、日米同盟の重要性を改めて確認するとともに、今後も緊密に連携していくことで一致しました。

これに先立って行われた韓国のチョン・ウィヨン(鄭義溶)国家安保室長も交えた3か国の協議でも、北朝鮮情勢やイラン情勢などをめぐって意見が交わされ、3か国の協力の重要性について一致しました。

イランの首都、テヘランに駐在員事務所を置く三菱UFJ銀行、三井住友銀行みずほ銀行の大手3行は、9日までにイランに駐在する日本人社員に対して、国外に退避するよう命じました。

いずれも社員の安全を確保するためで、すべての従業員に対してイランや周辺地域への出張も見合わせるよう求めています。

またイランの首都テヘランに事務所を置く大手商社「豊田通商」の加留部淳会長は、すべての駐在員を9日までに国外に退避させたことを明らかにしました。

名古屋市に本社がある豊田通商の加留部淳会長は、9日名古屋市内でNHKの取材に応じ、テヘランに駐在する3人の駐在員を9日までに国外に退避させたことを明らかにしました。

一方、12人の現地スタッフの安否は確認できているとし、今のところ、現地の事務所の営業は続けているということです。

そのうえで今後の対応について、加留部会長は「駐在員、現地スタッフの身の安全、命の安全を最優先に対応している。社員のイランへの出張は禁止しているし、中東地域へも不要不急の出張を控えるよう注意喚起している」と述べ、現地の情勢を見極めながら安全を第一として、対応していく考えを示しました。

トルコでは8日、ロシアの天然ガスをトルコへ送る全長930キロのパイプライン「トルコストリーム」が新たに完成し、プーチン大統領エルドアン大統領が式典に出席しました。

これに合わせて両首脳は共同声明を発表し、イラン情勢についてはアメリカとイランを含むすべての当事者に対して自制心と常識を示すよう働きかける方針を示しました。

またシリア情勢についてはテロとの戦いを継続しながらも人道支援を強化する必要性を確認しています。

式典でプーチン大統領が「両国は将来、エネルギー以外の分野でも多くの計画を実現できる」と連携強化に期待を示したのに対し、エルドアン大統領は、「この地域の緊張を緩和するために両国は外交努力を尽くす」と応えました。

ロシアとトルコは内戦が続くシリアやリビアで異なる勢力を支援するなど一部で利害が異なる面がありますが、アメリカが中東地域で反発に直面する中、ロシアとトルコには、利害の相違を乗り越えて緊張緩和を実現しアメリカに代わってこの地域で存在感を高めたいねらいがあるものとみられます。

また共同声明でプーチン大統領エルドアン大統領は、リビアで戦闘を続けるハフタル氏が率いる東部の軍事組織とシラージュ首相が率いる西部の暫定政府に対し、今月12日の午前0時から停戦するよう呼びかけました。

リビア情勢をめぐっては、ロシアは東部の軍事組織を、トルコは西部の暫定政府をそれぞれ支持していて、今回、関係するロシアとトルコが双方の勢力に停戦を呼びかけることで戦闘の泥沼化を阻止できるかどうか、注目されます。

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