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米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領が、新政権の財務長官にイエレン前連邦準備理事会(FRB)議長を指名した。注目されるイエレン氏の政策展開を占うカギは、同氏による2016年10月14日の講演にある。

「危機後のマクロ経済リサーチ」と題した同講演録は注釈や参考文献が極めて多く、通常の講演録ではない。そこには、労働経済学の専門家として、かつ議長として連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーに有無を言わさぬ強烈なメッセージが込められている。イエレン氏による「高圧経済政策構想論文」と呼ぶべき政策提言だ。

高圧経済とは供給能力を上回る需要がある状態だ。当時はトランプ氏が予想外の大統領当選を果たし、イエレン氏自身がその構想を否定した。しかし、今回、民主党政権が誕生し、イエレン氏が財務長官に就任する見通しとなり、この高圧経済政策構想論文の重要性がよみがえってきた。

<マクロ経済の「負の履歴効果」を看破>

イエレン論文は、まず潜在的な供給能力は需要とは無関係だとの経済学的コンセンサスを否定するところから始まる。

企業ベースで考えると、需要不足という低圧経済状態が続けば、正規雇用を抑制するなどの必要が生じ、供給能力は増加しにくい。論文では「今回の危機(リーマン・ショックを指す。木野内注)を機に、米国は移民の減少と労働参加率の低下の結果として、わずかながらも労働供給の減少を経験したことが示された」と、低圧経済下ではマクロベースにおいても労働投入量の減少があったことを指摘している。

リーマン・ショック後は、労働生産性成長率の著しい低下が推計されているが、それについては「危機以来、異常に遅い経済の資本蓄積ペースを反映していると思われる」と分析。さらに推測としながらも、「研究開発投資の急激な減少と近年の新規起業ペースの遅れが反映されていると思われる」との見方を示している。

需要不足が続けば、企業は設備投資を抑制し供給能力を引き上げない。研究開発費も抑制され、供給能力はさらに増加しにくくなる。

このように、企業ベースで考えれば当然のことが、マクロ経済においても発生しているとイエレン論文は看破した。これらは「負の履歴効果」と呼ばれている。

マクロ経済学でこうしたことが理解されにくいのは、この負の履歴効果を正確に計測できないからだ。たとえば、リーマン・ショック時に正規雇用の機会を得られなかった世代は就労を諦めてしまい、職探しをしていることが前提となる失業者数の計測に含まれない状態となった。雇用のスラック(需給の緩み)議論だ。

しかし、実際には就業率は失業率ほど改善していないし、失業率がかなり下がっても賃金インフレは起きなかった。設備投資や研究開発費を怠った結果として、企業の手元資金は豊富だ。負の履歴効果はなお存在している。イエレン論文はまず、FOMC参加者を含め経済学を学んだ人々のコンセンサスである「潜在的な供給能力は需要とは無関係」という認識を否定した訳だ。

<高圧経済政策で何が変わるか>

次にイエレン論文は高圧経済の効能を説く。「実際にある程度の履歴効果が見られることを前提にするならば、当然次に問われるのは、力強い総需要と逼迫した労働市場という『高圧経済』を当面維持することによって、こうした供給サイドの悪影響を反転させることが可能かという問題だ」と同氏は提起する。

そして、「これが起こりうる妥当な経路を明らかに指摘できる」とし、「特に将来の見通しをめぐる先行き不安が低下した場合、企業売上高の増加は、設備投資の増加を通じて、ほぼ確実に経済の生産能力を底上げする。その上、労働市場がひっ迫すれば、尻込みしていた潜在労働者が市場に復帰し、より効率的で生産的な職業のマッチングにつながり得る転職を促進するかもしれない」と高圧経済政策の効果を明示した。

イエレン氏はオークンの法則で有名なアーサー・オークンの論文“Upward Mobility in a High-Pressure Economy”を注釈で紹介している。このオークン論文のポイントは、高圧経済を推進すると、就労を諦めた無就業者が就労の機会を得られるだけでなく、既存の全ての就労者がより良いポストに転職できる機会が増加し得ることを示している点だ。

このように、イエレン「論文」には、随所に労働経済学の知見を動員し、経済学を学んだFOMCメンバーらに有無を言わせない迫力がある。

同氏が講演した当時のロイター記事は「経済危機による損失の修復を図るには『高圧経済(high-pressure economy)』政策が唯一の方策となり得る、との考えを示した」とやや驚きをもって評した。

<手法は金融と財政の長期間の協調>

イエレン論文は、高圧経済政策の手法にも踏み込んでいる。

「履歴効果が逆転する可能性は、金融政策と財政政策の実施に重要な意味を持つ可能性がある」と、金融政策と財政政策を同時に俎上(そじょう)に載せたうえで、「景気後退に対応して政策立案者が迅速かつ積極的に行動することがより重要であると示唆しているように思われる。その様に行動すれば、景気後退の深さと持続性を低下させることができ、それによって後に続く供給側の被害(負の履歴効果の発生=木野内注)が限定されるからだ」と、金融政策と財政政策の協調の重要性を示唆した。

「さらに、力強い経済状況が供給側のダメージを一部回復させることができる場合、政策立案者は景気回復局面において、供給が需要にほとんど依存しないとの伝統的な考えの下での政策に比べ、より緩和的な政策運営を目指す可能性がある」と、両政策の協調を長期間続ける大切さを示唆している。

こうした発言は新政権における財務長官の立場を得て、一層重みを増していくとみられる。

政策の出口に関しては、FRBに決定権を持たせることで財政ファイナンスとは一線を画すことが可能だ。ただ、金融政策と財政政策の協調を長期間続けることが重要であるなら、当面、出口議論をしない形での一体化が現実的な選択肢であろう。

<政策効果の波及は住宅ローンが重要>

政策効果の波及経路に関しては、ホームエクイティローンを通じた消費や経済への影響を重ねて説明している。「消費に対する住宅エクイティの逆資産効果について考える。一般的に、家計は富の減少に対応して支出を削減するが、住宅価格の下落によって実際に家計の持分がマイナスに転じた多くの世帯は、借り入れ能力が著しく低下するため、支出をさらに激減させる可能性がある」とリーマン・ショック時に起きた事態を分析する。

現在なら逆にポジティブな方向の資産効果に置き換えて読むことができる。ハリス次期副大統領や民主党による、マイノリティに持ち家を促す政策とも平仄(ひょうそく)が合っている。

<バイデン政策が公約以上に財政規模になる可能性>

さて、イエレン氏が共和党トランプ政権ではなく民主党バイデン政権となら手を組めるのはなぜだろう。

改めて、バイデン氏とトランプ氏の2020年選挙の公約を集計すると、10年間でバイデン案は5.6兆ドル(約590兆円)、トランプ案は4.95兆ドルの新規の財政赤字増を主張していた。財政支出の規模については、両者は大して変わらない。

ただし、バイデン案は増税プラス支出増、トランプ案は減税プラス支出増の組み合わせだった。前者の方が金融政策との相性が良い。増税は民間貯蓄を減少させる一方で、減税は民間貯蓄を増加させる効果を持つ。投資額に対する均衡金利はバイデン案の方が上昇しやすい。

ただし、バイデン案でも10年間で5.6兆ドルの新たな財政赤字で、1カ月間に換算すると400億ドル程度だ。既にFRBMBSを含め1200億ドルの資産購入を続けている。400億ドル程度の購入増加でイエレン氏の目指す高圧経済政策が実施できるのだろうか。

筆者はイエレン財務長官下ではバイデン案よりも大きな予算となる可能性があると考える。赤字の拡大は共和党が嫌がることもあるので、バイデン案以上に大きな増税を要求する可能性もある。1940年代の金利のくぎ付け政策の間、米国の所得税最高税率は94%まで引き上げられた。ただ、現在は戦時中ではないし、北欧のような福祉国家の姿は米国には似合わない。

この「論文」はイエレン氏の経済学的な裏付けが、FRBメンバーに対しては強い武器になることも示している。最終的に議会が予算を許さず財源が確保できないとなると、もっと踏み込んだ形での金融と財政の一体化が必要になり得る。その場合は労働経済学の専門家として、元議長として、さらには現役の財務長官として、FRBのメンバーに有無を言わさぬ迫力の「論文」第2弾が放たれるかもしれない。

米著名投資家ジム・ロジャーズ氏は30日、「ロイター・グローバル・インベストメント・アウトルック・サミット2020」で、金融市場にとって来年最大のリスクは、米政府の債務と米連邦準備理事会(FRB)の積極緩和に基づく空前の規模の紙幣増刷だとの見方を示した。

ヘッジファンドの先駆けとなったクォンタム・ファンドをジョージ・ソロス氏と共同で創設したことで知られるロジャーズ氏は、今後10年間は自身が経験した中で市場が一番難しい局面を迎えると警告。その理由として世界的な債務規模の大きさを挙げた。

ロジャーズ氏は「われわれが2008年にひどい目にあったのは債務が膨れ上がったせいだった。そして08年以降、世界中で債務がさらに急増している。今では正確な水準を測定できないほどだ」と述べた。

米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領は、前FRB議長のジャネット・イエレン氏を次期財務長官に指名することを決めた。ロジャーズ氏は「もしイエレン氏が財務長官になれば、彼女は喜んで紙幣を刷り、財政支出に回す」と言い切った。

一方、ドルについてロジャーズ氏は「今は弱気派が多く通常ならこれは上昇につながるので、私は弱気にはなっていない」と語り、安全通貨としての魅力もあるとしている。

2000年代初めにいち早く商品市場の好況を予測した1人であるロジャーズ氏は、金と銀を現在の価格では買わず、押し目を待っていると表明。その上で「歴史的な値動きに照らすと銀は金に比べてずっと割安だ。私はいずれ両方(銀と金)を買うが、銀をより多く購入する」とも述べた。

リブラの運営を担う団体「リブラ協会」は1日、声明でリブラの名称を「ディエム」に変更したと発表しました。

ディエムはラテン語「日」を意味することばで、声明では「プロジェクトに新しい1日をもたらす」とコメントしています。

リブラは去年6月、フェイスブックが計画を明らかにし、スマートフォンを使って国境を越えた送金を簡単にできるようになると期待が高まる一方、各国の規制当局からは、犯罪に悪用されるおそれがあるなどと懸念が相次いでいます。

声明によりますと協会はこうした懸念をふっしょくするため、新しい経営幹部を招いて組織を強化したということで、現在は、拠点を置くスイスの当局から承認を得る手続きを進めているとしています。

11月、イギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズは、ドルを裏付けとするリブラが来年1月にも発行される可能性があると伝えていて、その行方に関心が集まっています。

仮想通貨ビットコインが過去最高値を更新する状況の中、機関投資家は多額の資金を金から引き揚げた。

  これが単なる偶然なのか、それとも仮想通貨市場と貴金属市場に深刻な影響を与えるローテーションの始まりなのか確実に知るのは不可能だ。しかし、ビットコインがいつかインフレヘッジやポートフォリオの分散先として金に匹敵する資産になり得るかの議論は今、白熱している。

  今年に入り150%値上がりしていたビットコインは先週急落し、3月以来の大幅な下げを記録。一般の投資家が二の足を踏む原因となってきたビットコインの変動の大きさが浮き彫りになった。しかし、一般の投資家が金の持ち分のごく一部でもビットコイン業界に移し始めれば、ウォール街の分散化戦略を一変させるだろう。

  以前は商品関連ヘッジファンド運用者で現在は仮想通貨投資家のジャンマルク・ボヌフー氏は、「金は過去の世界やベビーブーム世代の安全資産だった」が、今やビットコインのような資産に取って代わられつつあると述べた。

  ファミリーオフィスなどのファンドは、ビットコインを買うために金連動型上場投資信託ETF)の持ち分を売却していると、JPモルガン・チェースのアナリストらが指摘。ビットコイン投資手段として機関投資家に選好されているグレースケール・ビットコイン・トラストは、8月初めからドルベースで2倍余りに上昇している。

原題:
The Hottest Debate on Wall Street Is Buying Bitcoin Over Gold(抜粋)

#金#gold