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通訳担当官に任命されるかどうか以前に、外務省に入省した職員は皆、数年程度で、専門の言語で業務を行えるレベルに到達しなければならない。

そこで用意されているのが手厚い研修だ。
大きく言って、国内での「研修」と国外での「在外研修」に分かれる。

入省後、まずは1か月程度、神奈川県相模原市にある研修所で合宿形式の研修を受ける。在外研修に出るまでは(総合職は2年、専門職員は1年)各部署での通常業務をこなしながら、毎週2回、決められた言語の研修で基礎を学ぶのだ。

山下さんはこの1年目の国内研修が「最もつらかった」と振り返る。

「ひたすら教科書の例文を暗記するんです。これがとにかく大変で、1回の授業ごとに大体20個の例文を一言一句間違えることなく発音も正確に言わないといけない。間違えると次の授業の時に再度テストされる。週に2回授業があったので、1週間で40個ぐらいの例文を覚えるため必死に勉強していましたね」

何が大変かというと、研修を受けているだけではないということだ。入省1年目は、日中の本来業務でも覚えることがたくさんある。山下さんも時には深夜まで残業した上で勉強時間を捻出し、1年間で約800の例文を暗記したという。

「授業の前日は数時間は勉強しないと間に合わないので、通勤電車の中でもポーランド語の例文をぶつぶつ言いながら、ひたすら暗記していたのを覚えています。忙しい時は終電近くまで働き、深夜に帰宅して、睡眠時間を削りながらとにかく勉強していました。徹底的に基礎をたたき込んだ1年でした」

そして、国内研修を終えると、「在外研修」に移行する。言語によっても異なるが、原則2年から3年かけて現地の大学や大学院に通い、国内研修で学んだ基礎をベースに語学力を高めていく。

国内での研修とは違い、実際の業務は行わず、留学生として勉強漬けの毎日を過ごすことになる。

山下さんは、1364年創立のポーランド最古の大学「ヤギェロン大学」に留学。1年目は外国人向けのコースに入り、2年目は専門性を身につけるため、EUに関する研究を行った。

「2年間の在外研修を終えたらすぐに現地の大使館勤務になるので、すごいプレッシャーと責任感を感じる毎日でした。朝から晩までポーランド語に没頭して学びました。ポーランド語は名詞が7つの格に変化します。さらに名詞には男性・女性・中性、単数・複数のパターンがあり、それに合わせて形容詞も変化するので、非常に苦労しました」


1年目の後半からはポーランド人のプロの家庭教師をつけて、週3日、数時間かけて徹底的にポーランド語を勉強した。さらに山下さんが心がけたことは、とにかく現地のポーランド人と話すことだった。
「時間があったら家にこもらない。ランチでもディナーでも外に出て、人と会って話すことを基本としていました。週末はポーランドの一般の人がどのような生活をしているか知るため、さまざまなところに足を運びました」

在外研修を終えると、原則すべての外交官が大使館など在外公館の勤務となる。

そして、業務をこなしつつ、通訳などの経験を積んでいくことになる。そうした日々の中で、適性や語学力が十分だと判断されれば、通訳担当官としての道が切り開かれていく。

通訳担当官になったからといって、特別な手当が出たりすることはない。ただ「語学のスペシャリスト」として公式に認められることになり、外交官として非常に名誉なことだという。

そして政務官副大臣の通訳を経て、外務大臣、総理大臣の通訳へとステップアップしていく。特に、ポーランド語のように扱う人が少ない言語の場合、早い段階で首脳会談などを担当することがあるという。


山下さんはこれまでに50回以上の通訳を担当してきた。
ポーランド語の通訳が少ない分、首脳会談などの重要な通訳のチャンスが多いことは大変光栄なことだと思っています。これからもポーランド語の通訳担当官・専門家として日本外交に貢献していきたいと思います」

首脳会談には同席者の規模などでいくつかの種類がある。
最も秘匿性が高い会話が行われるのは、外交用語で「テタテ(フランス語で“内緒話”の意)」と呼ばれる、通訳のみを入れた首脳2人の会談だ。テタテの内容は会談後もあまり公表されない。

4月の日米首脳会談で行われたテタテについて、藤沼さんは、「もちろん具体的な中身は言えない」と強調した上で、こう振り返ってくれた。

「バイデン大統領が菅総理ホワイトハウス執務室の隣にある小食堂に招き入れ、飾られていた多数の家族の写真についてひとつひとつ丁寧に説明され、大統領のご両親、ご夫人やご子息について紹介されていました。非常に心温まる思い出話に総理も感銘を受けた様子でした。総理から、東日本大震災直後にバイデン大統領が仙台を訪れ、被災者に勇気を与えてくれたことに謝意を伝えたところ、家族の大切さ、人と人との絆の大切さについて両首脳で盛り上がったことを、自分も感動しながら訳したことが強く印象に残っています」

「実は3割の情報って、相手のことをきちんと勉強していれば、必要最低限の情報なんです。例えば『JICA(国際協力機構)』というワードしか聞き取れなかったとしても、JICAからの支援に感謝しているということと、今後はここまで延長してほしいという話だなとか、3割の情報で8割ぐらいまでは埋められるんですよ」

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