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日銀の短観は、国内の企業9200社余りに3か月ごとに景気の現状などを尋ねる調査で、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数で景気を判断します。

今回の調査は8月下旬から9月末にかけて行われ、大企業の製造業の指数はプラス8ポイントと、前回を1ポイント下回り、3期連続で悪化しました。

部品などの供給不足が徐々に解消されていることで「自動車」などの業種で景気判断が改善しましたが、原材料価格の高騰によってコストが増加し、収益が圧迫されていると回答した企業が「非鉄金属」や「紙・パルプ」など幅広い業種でみられます。

一方、大企業の非製造業の景気判断は、プラス14ポイントと、前回を1ポイント上回り、2期連続で改善しました。新型コロナの行動制限が緩和され感染者数も減少傾向となる中、「運輸・郵便」や「宿泊・飲食サービス」などが改善しています。

3か月後の見通しについては、大企業の製造業では、円安で業績が押し上げられることや、販売価格への転嫁が進むことが見込まれることから、1ポイントの改善となっています。

一方、大企業の非製造業では、原材料価格の高騰が続き、仕入れコストが上昇するとして3ポイントの悪化が見込まれています。

今回の日銀短観の結果についてマクロ経済に詳しい三菱総合研究所の武田洋子政策・経済センター長に聞きました。

Q 大企業製造業の景気判断が3期連続の悪化となったが短観の結果の受け止めは?

武田さん:部品の供給不足が解消する中で、もう少し改善を見込んでいたが、事前の予想に比べ悪い内容だったと言える。原材料の調達コストの上昇や海外経済に減速が見られることも背景にあるとみられる。

Q 原材料価格の高騰が進む中コストの上昇を販売価格に上乗せする、価格転嫁は進んでいるのか?

武田さん:製造業では、仕入れ価格に対し販売価格が追いついてきており、世界的にはまだ低い水準だが少しずつ転嫁する動きが広がっている。

Q 日本経済の回復に向けて必要なことは何か?

武田さん:カギは2つある。1つは、賃金上昇。賃上げには追い風が吹いているところもある。生産人口が減少し、人手不足感が強まってきているのは今回の短観の雇用判断の指標を見てもうかがえる。企業が生き残りをかけてよい人材を確保するために、賃金を上げていく動きに弾みが出ることが期待される。2つ目のカギは投資。企業はデジタル化や脱炭素化の投資に前向きな姿勢がうかがえる。企業の現預金が投資や賃上げに回っていけば日本経済は短期的な回復だけでなく、企業のイノベーションや消費拡大を通じて成長力を高めていくことも期待できる。

Q 日本経済の今の立ち位置は?

武田さん:価格転嫁と賃金上昇がともに進んで企業や家計がデフレマインドから脱却できるのか。あるいは、海外経済が減速し、コストが上昇する中で企業や家計のマインドが萎縮するのかという重要な分岐点にあると思う。物価上昇が続く中で企業の賃上げの動きが広がらないことが懸念材料としてあげられる。その場合、家計の実質的な所得が低下し、消費に悪影響が及ぶ可能性がある。

#経済統計

金融政策決定会合における主な意見(9月21、22日開催分)[PDF 197KB]

日銀は、先月22日まで2日間にわたって開いた金融政策決定会合の「主な意見」を公表しました。

それによりますと、このところの物価上昇について政策委員からは「値上げの予定公表が相次いでおり、引き続き幅広い品目で価格上昇が続く」という意見が出された一方、「賃金上昇率が低く、広範かつ大幅な物価上昇には至っていない」という指摘も出されました。

会合では、大規模な金融緩和策の維持を決めましたが、この決定を受けて、外国為替市場では急速に円安が進み、政府・日銀は市場介入に踏み切りました。

会合では、相場変動の影響を注意深く見るべきだという認識が示された一方、「金融政策の運営にあたって為替相場は直接コントロールする対象ではない」という指摘が出されました。

その一方で、金融緩和の長期化による副作用も指摘されていることから、会合では「今後、適切なタイミングが来た際には、出口戦略についても市場と適切なコミュニケーションをとることが重要だ」として、金融緩和を縮小するいわゆる「出口戦略」についても市場との対話が重要だという指摘が出ていたことがわかりました。

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