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 2023年11月30日、渋谷駅と国道246号線を挟んで接する桜丘地区にShibuya Sakura Stageが竣工した。Shibuya Sakura Stageは働・遊・住をコンセプトにした複合施設で、オフィスと商業施設、そして住居が混在する。その総面積は、約2万6000平方メートルにも及ぶ。

 こういった新しい商業施設ができる場合、目玉として取り上げられるのは施設にある新しいサービスやショップなどが多いが、今回は、JRの線路をまたいで東西の街区を結ぶ南北2本の自由通路が同じくらい注目を集めている。南北2本の自由通路は12月1日から供用を開始し、線路西側のShibuya Sakura Stageと線路東側の渋谷ストリームの3階部分で自由通路を介してフラットでつながった。これにより、渋谷駅の利便性が高まるとの期待も高い。

 Shibuya Sakura Stageが整備されたことをきっかけに改良される渋谷の動線は、これだけではない。自由通路上には2024年秋にJRの新改札口が、2027年にはJRの渋谷駅南口橋上駅舎(仮称)も供用を開始する予定で整備が進められている。

 これまでの桜丘地区は渋谷駅から直線距離では近かったが、渋谷では玉川通りとも呼ばれる国道246号線という大幹線によって渋谷駅と分断されていた。渋谷駅を降りて桜丘地区へ行くために、改札を出て西口へまわり巨大な歩道橋を上がってみたところ、どちらの方角なのか迷ってしまったなどという体験談は珍しくなかった。そのため、渋谷駅と桜丘地区は動線的なつながりが弱く、ゆえに渋谷とは異なる独自の文化圏を築くという側面もあった。

「Shibuya Sakura StageにはJR渋谷駅と直結する自由通路が新たに設けられ、改札口も開設されます。渋谷駅は1885年に開業していますが、その頃は今の位置ではなく、もっと南側に駅舎があったと聞いています。今回、Shibuya Sakura Stageとつながる新しい改札口が開設されるので、桜丘地区の人たちからは『駅が昔の位置に戻ってきた』という喜びの声も出ています」と話すのは、東急不動産コーポレートコミュニケーション部広報室の担当者だ。

 これら大規模再開発の事業主体はそれぞれ異なるが、実質的に渋谷を本拠地とする東急と東急不動産の2社が再開発事業を主導した。

 両社はどちらも社名に”東急”がつき、渋谷を本拠地にしている。そうしたこともあって、2社はまったく同じグループと思われがちだが、少し異なる分類になる。

 東急不動産は1953年に東急電鉄の不動産部門が分離独立する形で発足した歴史があり、確かに東急電鉄とは縁がある。しかし、歳月とともに東急不動産は独自のグループを形成している。どちらもロゴマークのデザインは同じだが、鉄道系の東急は赤、不動産系の東急不動産は緑とカラーリングが異なっている。両社は歳月とともに東急系は東急電鉄の沿線開発を、東急不動産系は都市開発を中心として事業が行われるなど、企業文化や沿線開発のスタンスも微妙に違いを見せるようになった。ところが、鉄道事業の位置づけを変えざるをえない社会の変化が進んだ。

 東急電鉄はその沿線で暮らしている、それだけで一種のステイタスにもなっていた。実際、東急線東横線田園都市線が屈指の人気を誇り、これら2路線は住みたい街の常連になっている。その不動産事業の価値は、鉄道事業があってこその存在だった。

 しかし、少子高齢化・人口減少といった時代を迎えて、鉄道の利用者減は誰の目にも明らかになっている。そうした情勢もあり、東京急行電鉄株式会社は2019年に東急株式会社へと商号を変更した。同時に、鉄軌道事業を新たに設立した東急電鉄株式会社へと移管した。

 前述のように、東急は鉄道の会社として沿線開発をはじめ不動産事業にも取り組んでいた。2019年の商号変更および鉄軌道事業の移管は、東急が事業の主軸を鉄道から不動産へと移したことを鮮明にしたといえる。それにより、関係が無いわけではないが別の事業会社であった東急不動産と東急、2つの不動産事業を手がける会社グループが明確に誕生した。これら東急を冠する2社によって渋谷の大開発が進められていき、街は変貌を遂げていく。

 渋谷は、その地名に「谷」の文字があることからも窺えるように、すり鉢状の地形になっている。渋谷駅はすり鉢の底にあたる場所に立地し、駅を出てどこへ行くにも上り坂で、周囲には高層のビルが立ち並ぶ。そうした地形の影響もあり、銀座線はビルの3階にホームがあるという不思議な構造だった。

 さらに渋谷駅の地下は広大で、そうした都市構造ゆえに立体的で迷いやすい。そのため、”渋谷ダンジョン”と揶揄されることも珍しくなかった

 東急・東急不動産2社に対して、これらの質問をしてみた。両社ともに「アーバンコアを整備することで動線をスムーズにした」と回答した。

 アーバンコアとは、渋谷の地形を克服するためのスムーズな縦移動の動線整備の手法でその第1号が渋谷の大規模再開発では渋谷ヒカリエに設置されている。渋谷ヒカリエのアーバンコアは、地下3階から地上4階までを吹き抜け空間でつなぐ。また、渋谷ストリームやShibuya Sakura Stageにもアーバンコアが整備された。

 アーバンコアが画期的な動線システムで、縦移動の労力を軽減することは理解できる。しかし、アーバンコアが「迷いやすい渋谷」の緩和・解消につながるわけではない。その点について質問すると、

「そのほかにも、渋谷駅前サインガイドラインに基づいて2019年11月に渋谷駅の地下出口番号を変更しています。この変更は、渋谷駅の利便性と街の回遊性の向上を目的にしたものです。具体的には地下出入口番号はエリアごとにアルファベットを付記し、各出入口をアルファベットと数字を組み合わせで表記しました。変更後の地下出口番号は、地上の街の構造を鑑みて渋谷周辺を4つのエリアに分けて道玄坂方面を起点に時計回りでA~Dに設定してわかりやすくしています。この地下鉄番号の変更は、東急だけの取り組みではありません。渋谷区をはじめ渋谷と関係のある企業など官民が協力した成果です」(東急広報部担当者)

 100年に一度の大規模再開発は、Shibuya Sakura Stageの開業でいったん中締めとなるが、今後も2024年に渋谷アクジュが、2027年に渋谷スクランブルスクエアの中央棟と西棟が、同じく2027年にShibuya Upper West Projectの開業・竣工が予定されている。

 まだ再開発は続く。その間もたくさんの人たちが渋谷の街を闊歩する。大規模再開発で渋谷が安全で綺麗な街へと生まれ変わることは喜ばしい話ではある。

 他方で、これからは「迷わない渋谷」「使いやすい渋谷」という観点からの整備や工夫が求められる。これは東急2社だけで実現できる話ではない。東京都や渋谷区、国土交通省などの行政・道路管理者、渋谷を地盤とする企業、渋谷の商店街や町内会、NPOなど多くの団体・人たちの連携が欠かせない。

 渋谷は”ダンジョン”化を克服できるのか?

#渋谷大規模再開発(桜丘地区「ShibuyaSakuraStage」・新通路やアーバンコア設置・「ダンジョン」から脱出へ)

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#アウトドア#交通