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『民法大意 上巻』
P40

 社会生活においては、すべての個人とその集合たる団体とが、財産上も身分上も、それぞれ独自の地位と独自の職分を有し、この地位にあってこの職分を全うすることによって、自己の幸福を追求すると同時に、国家社会の向上発展を導いている。従って、個人の幸福と社会の向上を目的とする私法規範は、個人とその集合たる団体に対して、その地位を保持しその職分を全うすることができるように法律的な力を認めることを適当とする。これが、私法関係が権利義務の関係から成立している理由である。社会は「個」と「全」との有機的結合である。「個」の幸福なしには、「全」の向上はなく、「全」の向上なしには、「個」の真の幸福はない。私権は「個」をして真の幸福を追求することを可能ならしめることによって、「全」の向上発展をはかろうとするものである。この意味において、「私権は公共の福祉のために存する」といってもよい。少なくとも、私権は、公共の福祉と調和する限りにおいてのみ、国家の承認・保護を受け得るものである(憲一三条参照)。戦後の改正によって加えられた民法第一条の第一項は、この原理を宣言したものである。