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【昭和正論座】防衛大学校長・猪木正道 昭和50年2月18日掲載

 毛沢東主席や周恩来首相が、日本や西ヨーロッパ諸国からの来訪者に向って、防衛力の整備やアメリカ合衆国との同盟関係の維持強化を力説したという話は、両三年来しばしば伝えられている。中ソ両国の対立が論争から紛争へ、紛争から局地的な軍事衝突にまでエスカレートした歴史をふりかえると、中国の首脳が日本とEC諸国との防衛力に深い関心を持ち、日米安全保障条約北大西洋条約との存続を求めるのは当然といえよう。

 中国の指導者たちが、ロシア・ソ連の“膨張主義”を恐れるのは、歴史的に見ても十分な根拠がある。それでは、ロシア・ソ連だけが悪玉かというと、全くそうではない。ロシアが世界史の舞台に登場してから今日までの歴史は、彼等の立場から見れば、まわりの国々から脅威を受け続けた受難の歴史なのである。

 たしかにロシア・ソ連の安全を脅威したものは、モーコ帝国から、ポーランドをへてドイツにいたるまで、長年月のうちに分割され、その一部をロシアに併合され、弱体化されている。同じ歴史的事実でも、ロシアから見れば侵略に対する防御と反撃であるのに対して、まわりの国々から眺めれば、ロシアの侵略であり、膨張である。

 国際社会の難しさは、まさに右の点に存するといってよかろう。一方の立場だけに固執していては、国際関係は理解できないし、国際平和を守ることも不可能だ。互いに相手方の立場からものを見る努力を重ねて、警戒心と恐怖感との連鎖反応を制御する以外に平和の途は存しないのである。

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