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「伝説の為替トレーダー」がどこにもいない理由【特別対談】楠木建 × 野口真人(最終回)|あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門|ダイヤモンド・オンライン

【野口】ファイナンス理論って、比較的新しい学問ではありますけれど、同時に「古い」部分もあると僕は考えています。たとえば、たぶんこの数十年で、CAPM(資本資産価格モデル:Capital Asset Pricing Model)に代わる理論は何も出てきていない。
これはなぜかというと、ファイナンスという学問は本質的には、昔からある1つの真理を、ある時代にパッとえぐりだしたものだからです。これは、ウィリアム・シャープとか、ハリー・マーコウィッツといった、ノーベル賞を受賞するようなすごい理論であっても同じ。
だからこの学問は、世の中になかったものを生みだす「発明」ではなく、それまで世の中に知られていなかったものを見つける「発見」の学問なのかなと思います。だから新しいものはもう出てこないし、ある意味、学問としては完結してしまっています。「CAPMの修正版」とか、そのようなものがたくさん出てくるんですけど、CAPMに替わる新理論は出てこないんです。

【野口】「投資の話をしてください」という講演依頼をいただくことがよくあるんです。「どんな話がいいですか?」と聞くと、ほとんどの場合「FXの話をお願いします」と言われるんですよ。FXはみんながやっているからと。仕事中もできるし、市場も24時間開いている。理論的にはもう完全市場に近い。


【楠木】近いですね。


【野口】取引コストはゼロで、24時間いつでも、どんな量でもできる。理想の市場のように思えますが、違います。市場って基本的に出し抜けないんです。だから必ずいつかは損をする。長期的に見れば負けるようにできているんです。

【野口】そうです。だいたいそういうトレーダーの伝説のパターンは決まっていて。ある年、ものすごく儲けるわけですね。その実績がすごいから、翌年、別の会社から引き抜かれるんです、破格の待遇で。「破格の待遇」とは、給料ももちろんそうですが、それとともに、より大きな「リスクの許容量」が与えられるんです。前の会社よりも大きな取引をしてよいと。するとその「伝説のトレーダー」は、そこで決まって大損をする。より大きなリスクをとっているから、本当にひどい負け方をする。
もちろん、FX投資家が10万人いたとしたら、ある年は半分の5万人が儲けて、次の年はそのうちの2万5000人が儲けると考えると、勝ちが10年続いている人も必ず何人かはいます。でもほとんどは、みんな勝ったり負けたりなんですよね。市場は出し抜けない。

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