トランプラリーの熱狂も冷める中央銀行の「資産正常化」問題 - 金融市場異論百出 https://t.co/Wgfbw9L6ux
— ダイヤモンド・オンライン (@dol_editors) 2017年1月19日
金融危機対応で取った金融緩和策からの正常化をどのように行うか、世界の中央銀行が頭を悩ませている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、2015年と16年に短期金利(フェデラルファンド金利)の引き上げを1回ずつ実施。非常にゆっくりとだが、金利面では正常化に向かっている。しかし、FRBのバランスシートの正常化はまだ全くの手付かずである。
08年夏時点のFRBの資産は9000億ドルだった。その後、リーマンショックを経て、FRBは量的金融緩和策(QE)などを次々と実施。長期国債やモーゲージ担保証券(MBS)を市場から大量に購入した。その結果、QE3を完了した14年末のFRBの資産は、4.5兆ドルへと膨張。金融危機前と比べて5倍の規模だ。
17年初時点でも4.5兆ドルであり、資産規模は横ばいが続いている。FRBはQE3終了後、保有している証券に満期が来たら、資産が縮小しないようにそれらを同額購入する「再投資」を継続しているからだ。16年、FRBはMBSだけで市場から3870億ドルも購入した(昨年の平均ドル円レートで換算すると42兆円)。
再投資をテーパリング(縮小)し始めれば、FRBの資産はゆっくりと縮小し始める。しかし、出口政策の手順に関するFRBの基本方針は、これまで大きく揺らいできた。QE2実施中の11年6月にFRBは、(1)先行き経済が回復してきたら、最初に証券への再投資を縮小または停止する、(2)その後に短期金利の引き上げを開始する、(3)MBSの売却を始め、3〜5年で保有残高をゼロにする、と説明していた。
だが、14年9月公表の正常化策の手順は次のように変更された。(1)まずは短期金利を引き上げ始める、(2)経済の状況を見ながら証券への再投資を縮小する、(3)MBSの売却は基本的に実施せず、時間をかけて自然に減るのを待つ。
このときにMBSの売却を見送ることにしたのは、それが長期金利を高騰させ得るからだ。
さらに、ここ数カ月の間、FRB幹部は米連邦公開市場委員会(FOMC)で出口政策の方針について再検討を行ったが、またもや大きな変化が見られた。
まず、長期的な資産の規模に関しては、今よりは縮小させるものの、準備預金残高管理の技術的な課題もあって、金融危機以前の世界に戻さなくてもよいのではないか、との見方が増えている。
また、再投資のテーパリングについても慎重なコメントが見られる。一部の地区連邦準備銀行の総裁は「再投資の減額開始を検討すべき」と主張しているが、それによって長期金利が上昇すると、代わりに(景気を熱しも冷ましもしない)中立的な短期金利の水準が低下し得る。その結果、短期金利の利上げペースが遅くなることを主流派FRB幹部は警戒している。
一方、日本にとって中銀の資産正常化問題は、米国以上の難題だ。国際通貨基金(IMF)の推計による16年末時点の名目国内総生産(GDP)に対する中銀の資産規模は、FRBの24%に対して、日本銀行は94%だ。日銀の方が圧倒的に巨大で、その上、バランスシートの膨張はまだまだ続く。
さらに、日銀はFRBと異なって、上場投資信託(ETF)というかたちで株式も大規模に購入し続けている。FRBですら前述のように資産の正常化に頭を悩ませていることを考慮すると、将来における日銀の資産の正常化はより難しい問題になり得るといえる。
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