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ベルギーのブリュッセルで23日にかけて行われたEU首脳会議で、イギリスのメイ首相はEUからの離脱に向けたイギリス政府の方針を説明しました。


この中でメイ首相はEU側が交渉の最優先課題の1つとするイギリスに住むEU市民の権利について、5年以上住んでいれば離脱後もイギリス人と同等の権利が保障され、公的サービスも受けられることをなどを提案しました。


これについて、加盟国からは「よい一歩だ」とする声が聞かれた一方、不十分だという声も上がっています。


このうちEUのトゥスク大統領は23日の記者会見で「期待を下回っており、市民の状況が悪化するおそれがあるという印象だ」と述べ、厳しい見方を示しました。
またドイツのメルケル首相も「よいスタートだが突破口にはならない」と述べ、懸念を払拭(ふっしょく)するには不十分だとの認識を示しました。


背景には権利を巡って法的な判断が必要になった場合、イギリスの裁判所とEUの裁判所のどちらで判断するのかなどの点が明らかになっていないことがあるものと見られます。


イギリスとEUの離脱交渉は今月19日に始まったばかりですが、早くも立場の違いが表面化した形で、今後、厳しい交渉になることが予想されます。

イギリスのメイ首相はイギリスに暮らすEU市民の権利の保障をめぐってメイ首相が行った提案に対してEU側から不満の声が出ていることについて、首脳会議後の記者会見で「提案は公平で真面目なものだ」と強調したうえで「立場によって考え方に違いがある」と述べ、早くも意見の隔たりが出ていることを認めました。


メイ首相はEU市民の権利に関する争いが起きた場合にヨーロッパとイギリスの裁判所のどちらが管轄するのか問われると「今後の交渉の中で話し合うことになる」としながらも、「私の立場からすれば市民の権利はイギリスの法律によって守られるべきものだ」と述べ、今後の交渉でみずからの主張を貫きたい思惑も伺わせました。

EU=ヨーロッパ連合との離脱交渉が始まる中、メイ首相は厳しい立場に立たされています。


最大の要因は今月8日に行われた総選挙です。
メイ首相はことし4月、離脱交渉を前に議会の基盤を強化しようと総選挙を前倒しする意向を明らかにしました。
高い支持率を背景に与党・保守党の圧勝を見込んで行った総選挙でしたが、保守党は議席を減らして過半数を維持できず、メイ首相の求心力は一気に低下しました。


選挙後、少数与党による政権となったメイ政権は北アイルランド地域政党と閣外協力に向けた協議を進めていますが、いまだ合意に至っていません。
さらに総選挙の結果はメイ首相が示した「ハード・ブレグジット」の方針を拒否するものだという受け止めが広がっていて、ハモンド財務相が「交渉では経済を優先すべきだ」と述べてメイ首相の方針に反する発言をするなど離脱交渉に大きな影響を与える可能性も出ています。


一方、イギリスでは3か月間でイスラム過激派に影響を受けたテロが3件相次ぎ、今月19日にはイスラム教徒を狙ったと見られるテロも発生。社会の分断が懸念されています。


さらに今月14日発生した低所得者向けの高層住宅の火災では公営住宅の防火対策の不備が明らかになり、国民の間で格差への不満が高まっています。


イギリスが政治的にも社会的にも不安定さを増す中、メイ首相は国内の対応に追われながら、EUとの厳しい交渉を進めなければない状況に追い込まれています。

EU首脳会議の終了後、ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は共同記者会見を行いました。


会見で両首脳は保護主義的な動きが世界で強まる中での自由貿易の推進や、難民の受け入れの重要性に言及し、両国が積極的に連携していくと強調しました。


そのうえでマクロン大統領は「両国の緊密な関係はヨーロッパが発展していくために不可欠な条件だ。フランスとドイツの同意がなければ、ヨーロッパは発展しない」と述べ、イギリスとの離脱交渉が始まる中、今後のEUを両国がけん引していくことに強い意欲を示しました。


EU首脳会議の終了後には加盟国の多くがそれぞれ記者会見を行い、会議での決定事項や自国の立場などについて説明しますが、加盟国が共同で行うのは極めて異例です。

EUはイギリスとの離脱交渉に厳しい姿勢で臨んでいます。
19日に行われた初めての交渉では市民の権利の扱いや、イギリスが支払いを約束していたEUへの巨額の分担金をめぐる協議を優先し、十分な進展がなければ離脱後の双方の通商関係をめぐる協議は行わないと強く主張して、イギリス側の譲歩を引き出しました。


こうした厳しい姿勢の背景にはイギリスに譲歩する姿勢を見せれば加盟国の中のEU懐疑派を勢いづかせるほか、EUのさまざまなルールや取り決めの制約を受けている各国からの反発を招きかねないという事情があります。


仮にイギリスがEUからの移民の受け入れを制限したうえで、EUの単一市場の恩恵をいままでどおり受けるなどといった有利な条件をEU側から引き出した場合、移民や難民の受け入れなど取り決めにしたがっている国から反発が出ることも予想されます。


このためEU側は交渉責任者のバルニエ首席交渉官が「離脱するのはイギリスであってEUではない」と述べるなど譲歩はしない構えで、今後も離脱交渉に厳しい姿勢で臨むことでEUに懐疑的な勢力を封じ込め、求心力を取り戻したい考えです。

EU加盟国ではここ数年、EUに懐疑的な勢力が台頭していて、ことし主要国で相次いで行われる国政選挙ではこうした勢力が政権を取ったり大きく躍進したりするのかが注目されてきました。


このうちことし3月、オランダで行われた下院議会選挙では移民の排斥やEUからの離脱を掲げたウィルダース党首率いる極右政党・自由党が第1党の座は逃したものの議席を伸ばしました。


また、ことし4月に行われたフランスの大統領選挙では移民の制限やEUからの離脱を問う国民投票の実施を掲げた極右政党・国民戦線のルペン党首が決選投票に残りました。先月の決選投票でルペン候補はマクロン大統領に敗れたものの、投票総数のおよそ3分の1の票を獲得し、EUに懐疑的な意見への支持が根強いことを印象づけました。
一方、今月フランスで行われた国民議会選挙では国民戦線が獲得した議席は全577議席のうち8議席にとどまりましたが、依然として一定の支持を得ています。


これらの選挙ではEUに懐疑的な勢力がいずれも当初予想されたほどの大きな支持は得られませんでしたが、今後選挙で示された市民の不満にEUがどう応えるのかが注目されます。