https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

 第1に、西川社長ら現経営陣が、ゴーン氏を代表取締役会長の座から引きずり下ろした方法が、コーポレートガバナンスの観点からどう評価されるかという問題である。

 西川氏は、逮捕直後の記者会見で、ゴーン氏への権力の集中によってガバナンスが機能していなかったことを強調した。しかし、ガバナンスの観点からまず問題とされるべきは、その西川氏らが行ったこと、すなわち、「ゴーン氏の不正」について密かに社内調査を行い、その結果を検察に情報提供して代表取締役のゴーン氏・ケリー氏の2人を検察に逮捕させ、その間に、臨時取締役会を開催して両氏の解職を議決したやり方である。

 社内調査の結果把握した「絶対権力者」の不正が悪質・重大であったとしても、不正が、「会社の開示義務違反」「会社の資金の私的流用」など会社の対応や財産に関するものなのであれば、本来は、ガバナンスのルールにより、「私的自治」の範囲で解決されるべきだ。社内調査結果を取締役会に報告し、当事者に弁解・説明の機会を与えた上で、代表取締役会長の「解職動議」を出して議決するというのが本来のやり方だ。

 第2に、日本を代表する上場企業である日産自動車に関して、株主や投資家に対して「重要な事項」が迅速かつ正確に情報開示されているのかという「上場企業の経営の透明性」の問題がある。 

 上場会社の財務内容に加えて、いかなる体制で、いかなる方針によって経営が行われているのかなどの企業の内容が正確に開示されることや、経営者が交代したのであれば、それがいかなる理由により、どのような手続で交代が行われたのか(辞任か解任か)が明らかにされることは、株主や投資家の判断にとっても極めて重要な事項であり、迅速かつ正確に情報開示されることが必要だ。それは、「上場企業の経営の透明性を確保する」ということだ。

 そのような「不透明な状況」を招いている根本的な理由は、西川社長ら日産現経営陣が、それまでの経営トップであったゴーン氏を解職すべき理由として西川氏が指摘した(1)~(3)の不正について、社内調査の結果を検察に持ち込み、ゴーン氏に対する捜査を要請し、検察が、それに応じて、日本への帰国直後のゴーン氏・ケリー氏を、いきなり逮捕したからだ。

 そこで問題になるのが、西川氏らの行動を是認し、ゴーン氏らを逮捕するという判断を行った検察という組織の問題だ。

 「日産・ゴーン氏事件」で、コーポレートガバナンス、企業の透明性、検察の在り方、マスコミ報道の4つに関して起きたことは、相互に深く関連している。

 西川社長らが、「ゴーン氏の不正」についての社内調査の結果を、検察に持ち込み、ゴーン氏・ケリー氏が不在の取締役会において、代表取締役会長を解職したことは、コーポレートガバナンスとして許容できることでは決してない。

https://d1021.hatenadiary.jp/entry/2019/01/06/200430(ゴーン氏は、なぜ勾留理由開示公判に打って出たのか)