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ベネズエラは、前のチャベス政権の時代は、政治的にも経済的にも比較的、安定していました。

チャベス氏は、1999年に大統領に就任したあと、それまでアメリカなどの石油メジャーが占有していた国内の石油関連の事業を強制的に国有化。石油で得た富を貧困層に分配するという「富の再分配」政策をとりました。

低所得者向けのアパートや学校、病院などを次々と整備し、チャベス氏は、そのカリスマ性も手伝って、貧困層から絶大な支持を集めました。

ところが、チャベス氏が病気のため2013年に死亡し、その後継者であるマドゥーロ氏が大統領に就任したのを境に流れが変わります。
マドゥーロ大統領は前のチャベス大統領ほど人気がなく、求心力を維持しようと、従来の国会から権限を剥奪して自分が主導する「制憲議会」をつくり、国内外から反発を浴びます。さらに、富の分配の原資となっていた石油価格も下落。石油関連施設の老朽化も重なりました。

ところが施設を修理しようにも、アメリカなどから無理やり奪い取る形で国有化したため、協力が得られません。マドゥーロ大統領は、石油収入が減る中でも、貧困層の支持をつなぎ止めようと、いわゆる「ばらまき政治」を続けますが、政治汚職の深刻化もあり、国は疲弊していきます。
さらにことし1月、アメリカなどが後押しするグアイド国会議長が、暫定大統領への就任を宣言。

アメリカのトランプ政権が経済制裁を強化したことで、石油取り引きは事実上ストップ、最大の収入源を断たれた政府は機能不全に陥ったのです。

日本や欧米では、グアイド氏が呼びかける反政府デモの様子が繰り返し報道されていますが、実はマドゥーロ支持派の集会も同じくらい開かれていて、政治的なこう着状態が続いています。

マドゥーロ大統領の主な支持層は、軍や反米の社会主義思想を持ったインテリ層、それに、貧困層です。対するグアイド氏を中心とする反対派を支持するのは、現状に不満を持つ中間層です。

ところが中間層は、経済破綻で生活が難しくなったことで、その一部はすでに国外に脱出しています。

さらにチャベス政権時代に徹底した反米教育がとられ、“嫌米感情”が広がっているため、庶民の中には、そのアメリカが後ろ盾となっているグアイド氏を素直に支持できないという人もいます。

このため、グアイド氏は欧米の後ろ盾はあっても、圧倒的な支持を集めるまでには至っていないというのが実情です。

政治的なこう着状態が続く中、市民生活は悪化の一途をたどっています。

物不足が加速し、数少ない物資は、アメリカドルしか使えないような高級スーパーやレストランなどでのみ手に入る状況です。

ベネズエラの現在の最低賃金は月に6ドル程度ですが、こうしたレストランでは、夕食のメニューが1人当たり20ドル程度で提供されています。

高級レストランには、ドルでの収入がある富裕層がおしかけ、連日にぎわいを見せています。

一方で、一般庶民は、飲み水にも事欠く状況で、社会主義国にもかかわらず、貧富の差は拡大しています。

グアイド氏の後ろ盾となっているアメリカの“アメとムチ”の政策も、マドゥーロ政権だけでなく、ベネズエラ国民を苦しめています。

アメリカは、グアイド氏を通じて、人道支援物資の供給をベネズエラ側に申し出る一方で、経済制裁を強化しています。

マドゥーロ大統領は「アメリカの陰謀だ」として人道支援物資の受け入れをかたくなに拒否する姿勢を強めていて、経済制裁と相まって、物不足だけがますます加速しています。

こうした状況をグアイド氏のせいだと考える国民もいて、グアイド氏が圧倒的な支持を集められない理由の一つとなっています。

一方で、ロシアや中国がマドゥーロ政権を支持し、ベネズエラをとりまく国際社会が分裂していることも、事態を複雑にしています。

ロシアには、ベネズエラキューバと同様、影響下におさめてアメリカに対抗しようという思惑がありますし、中国には、石油エネルギーの確保や南米での政治的影響力を拡大したいという思惑があります。

極度の窮乏状態にあるベネズエラの人たちは、いつになったら救われるのか。

ベネズエラ国内のこう着状態と国際社会の分裂によって、その解決の糸口は見えないままです。

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