【速報 JUST IN 】「徴用」問題 協定に基づく仲裁委員会開催を韓国政府に要請 #nhk_news https://t.co/SvxKlYK0wK
— NHKニュース (@nhk_news) 2019年5月20日
太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国の裁判所が日本企業の資産の差し押さえを認めたことを受けて、日本政府は、ことし1月9日に韓国政府に対し、日韓請求権協定に基づく協議を要請しました。
その後、河野外務大臣が韓国のカン・ギョンファ(康京和)外相と2度に渡って会談して協議に応じるよう要請するなど、韓国側に再三にわたって協議に応じるよう求めてきましたが、韓国側は応じていません。
さらに今月1日には原告側が差し押さえていた株式を現金化する手続きを始めたと発表し、今月15日には、対応策の取りまとめにあたってきた韓国のイ・ナギョン(李洛淵)首相が、韓国政府だけで問題を解決するのは難しいという結論に至ったことを明らかにしました。
政府は、こうした事情を総合的に勘案し、協定に基づく協議によっては、この問題を解決することができなかったと判断し、20日午前、協定に基づき、第三国の委員を含めた仲裁委員会を開催するよう韓国政府に求めました。
協定では、仲裁委員会は3人で構成され、このうち2人は開催の要請から30日以内に、日韓両政府が、それぞれ1人ずつ任命することになっていて、外務省によりますと、日本政府は、20日付けで任命したということです。
韓国側も今後、委員の任命に向けて作業を進めることになりますが、韓国側が要請に応じず、委員を任命しない場合には、仲裁委員会の開催が難航することも予想されます。
菅官房長官は午後の記者会見で、「日韓請求権協定に基づく協議を要請してから4か月以上経過し、その間累次にわたって要請を続けたが、韓国政府は協議に応じなかった。最近の韓国側の指導者の発言からも現在、具体的な措置がとられる見込みがないと言わざるをえない。さらに原告側による日本企業の資産差し押さえの動きが進む中で、5月1日には売却申請が申し立てられた」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「日本政府として、このような事態を総合的に勘案をし、協定に基づく協議によって本件の解決はできなかったものと判断した。韓国政府は協定上、仲裁に応じる義務を負っており、日本政府としては仲裁に応じるよう強く求めてまいりたい」と述べました。
河野外務大臣は参議院決算委員会で、「先般、韓国のイ・ナギョン首相から、『政府の対応には限界がある』というような発言もあった。韓国政府の対応を心待ちにしていたが、残念ながら責任者からそのような発言があったこと、また、4か月以上にわたり協議を受けていただけないという状況もあり、総合的に勘案した結果、きょう午前、日韓請求権協定に基づく仲裁の付託を韓国に通告した」と述べました。
そのうえで河野大臣は、「日韓両国は国民的な交流は非常に活発であり、両国関係のベースはしっかりしているが、この問題に関しては国交正常化以来、両国の間の法的基盤を根本から損なうことになってしまうもので、この問題だけはしっかりと韓国政府に対応していただく必要がある。仲裁に韓国側が応じていただき、この問題の解決を図っていきたい」と述べました。
また河野外務大臣は「協議を要請し、ずっと待ってきたわけだが、ここできちんと仲裁のプロセスに入っていきたい。必要ならば国際的な司法に訴えて日本企業に対する実害が及ばないよう、きちんと対応をとっていきたい」と述べ、仲裁委員会の開催が難航した場合には、国際司法裁判所への提訴も検討する考えを示しました。
外務省の秋葉事務次官は20日午後、韓国のナム・グァンピョ(南官杓)駐日大使を外務省に呼び、韓国政府は仲裁に応じる協定上の義務を負っているとして、仲裁委員会の開催に応じるよう強く求めました。これに対し、ナム大使は「本国に伝える」と述べるにとどめ、要請に応じるかどうかは回答しませんでした。
韓国外務省は20日午前、日本政府から日韓請求権協定に基づいて、仲裁委員会を開催するよう求める文書を受け取ったと発表しました。
発表では「韓国政府は、日本側の措置について諸般の要素を勘案し、慎重に検討していく予定だ」と表明するにとどまり、これまで同様、具体的な対応策は示しませんでした。
仲裁委員会は、日韓請求権協定をめぐる両国間の紛争が、外交交渉で解決できなかった場合に設置を求めることができるとされていて、第三国の委員も交えて協議を行い、両国政府は、「仲裁委員会の決定に服する」と定められています。
協定では、開催の要請があってから、30日以内に、日韓両国が1人ずつ仲裁委員会の委員を任命し、任命された2人の委員が、さらに30日以内に第三国の委員を選ぶなどして、仲裁委員会が開かれることになります。
ただ、日本と韓国のどちらかが委員を任命しない場合や、第三国の委員について合意されない場合には、さらに30日以内に、日本と韓国それぞれが選定する国の政府が委員を指名することになります。
外務省は「韓国側は仲裁に応じる協定上の義務を負っており、日本政府として仲裁に応じるよう強く求める」としています。
今回、発端となったのは、去年10月、韓国の最高裁判所が言い渡した判決でした。
太平洋戦争中に「徴用工として日本で強制的に働かされた」と主張する韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、韓国の最高裁判所が、「個人請求権は消滅していない」として、賠償を命じる判決を言い渡したのです。
判決を受けて、日本政府は、1965年の国交正常化の際に締結された日韓請求権協定で「徴用」をめぐる問題は解決済みで、判決は日韓関係の法的基盤を根本から覆すものだとして、韓国政府に適切な措置を講じるよう、直ちに要請。しかし韓国側は、具体的な対応策を示さないまま、時間が経過します。
一方、韓国の原告側は、資産の差し押さえに、動き出します。去年12月、原告側は裁判所に対し、新日鉄住金の韓国にある資産の差し押さえを認めるよう申し立て、裁判所はことし1月、申し立てを認める決定を行います。
決定を受けて、日本政府は、日韓請求権協定に基づく協議に応じるよう要請。さらに、日本企業に不利益が生じかねないとして、対抗措置の検討も始めます。
その後、河野外務大臣は、2度にわたって韓国のカン外相と会談し、協議に応じるよう求めましたが、カン外相は「検討している」などと述べ、協議に応じず、対応策も示しませんでした。
そして今月1日、原告側は、すでに差し押さえていた株式を売却し、現金化する手続きを始めたと発表。今月15日には、対応策の取りまとめにあたってきた韓国のイ・ナギョン首相が、「結論は、政府の対応策には限界があるということだった」などと述べ、韓国政府だけで問題を解決するのは難しいという結論に至ったことを明らかにしました。