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「オレを殺してくれたら一番いいんだ。カジノグループには、ちゃんと邪魔な人を処理する、そういうグループがあるんでしょ。殺してくれれば推進派がぐっと不利になるからね」

 週刊新潮の取材にそう笑うのは、藤木幸夫氏。横浜の港で港湾荷役業を営む「藤木企業」会長にして、「横浜港運協会」会長である。通称、“ハマのドン”は御年89歳。

「カジノは許せません。横浜の副市長、局長だって、本音は反対なんです。みんなよくわかってますよ。お母さんがパチンコ入り浸りで何もしていない。親父は朝から晩まで酒飲んで、学校から帰ってきた子どもを殴る。そういう子どもを集めた市の施設があるんだよ。依存症とはどういうものなのか。避けられるものなのか。わかっているはずだ。そもそも、入るのはアメリカのカジノ業者で横浜は食いものにされるだけ。横浜のことは横浜で決めさせてくれって。俺は絶対、反対だ」

 8月22日、これまで「白紙」と言っていたカジノ誘致を表明した、横浜市の林文子市長。「最有力候補」の出馬に、すわ、カジノ開場はここで決まり、とのムードが高まったが、すかさず翌23日、記者会見を開き、その動きにビシッと釘を刺したのが藤木会長である。

 この会見には100名以上のマスコミが集まった。

「藤木さんの存在はそれほど大きいんですよ」

 と言うのは、横浜市政の関係者。

「何しろ、藤木さんは“横浜のドン”。横浜エフエムの社長であり、横浜スタジアムの会長も務めた、地元の顔役の一人。警察官友の会の会長も務め、歴代の神奈川県警の本部長は就任すると必ず挨拶に行く。政界人脈もすごく、歴代の横浜市長や神奈川県知事はみな藤木さんの支援を得て当選してきた。だから、その意向は無視できないんです」

 というから、林市長も大変な挑戦状を受け取ってしまったものだ。

「今は高齢ですからそれほどではありませんが……」

 と言葉を継ぐのは、また別の市政関係者。

「昔は朝8時に藤木企業に行くと、陳情の人が列を作っているんだよ。時には国会議員もいるし、横浜の副市長、局長、そして民間の社長……。藤木さんはその要望を聞いていろいろな人を世話してあげていたね」

 その藤木氏、コワモテの一面もある。その昔、荒くれ者をたばねる港湾荷役業はヤクザと切っても切れない縁があった。彼の父で、藤木企業創業者の幸太郎氏は全国港湾荷役振興協会の会長も務めたが、副会長だったのが、山口組3代目組長の田岡一雄氏。2人は付き合いが密で、息子の藤木氏自身も、著書で田岡氏のことを「田岡のおじさん」と呼んでいるほどである。

 政界人脈は地元に限らず、

「古くは石原慎太郎東京都知事、“参院のドン”と言われた村上正邦元労働大臣、今でも麻生太郎副総理とはよく会食をしていますし、二階俊博幹事長とも兄弟分の間柄です」(同)

 それに加えて、藤木氏が会長を務める横浜港運協会の加盟企業は、カジノ建設の予定地、山下埠頭に多くの事務所や倉庫を持つ。「居座る」の言葉通り、彼らが立ち退かなければ、市は最終的には強制執行などの手段を取らざるを得ない。あまりに重い反対表明となったワケなのだ。

 そもそも藤木氏がカジノ反対を言い出したのは2年前のこと。これがもう一つ注目を集めたのは、彼が政治家の中でも、菅義偉官房長官と最も昵懇であるためである。

 藤木氏は神奈川選出の故・小此木彦三郎元通産大臣の有力後援者だった。若き日、そこで秘書を務めていたのが菅氏である。

「藤木さんの会社によく出入りし、市会議員時代から選挙で支援をしてもらっていました。そんな関係だから、2人は師匠と弟子のようなもの。官房長官になっても藤木さんはよく官邸に行っていましたし、菅さんも事ある度に御礼をしていた。ある時、菅さんと会っていたら、藤木さんから電話がかかってきた。彼は直立不動で“会長!”“会長!”と言っていましたよ」(同)

 言わば、菅官房長官にとって藤木氏は「後見人」だ。

 他方、地元・横浜の林市長は菅氏の直系として知られる。

「2期目以降の選挙を全面的に応援したのは菅さんです。また、横浜市会には、菅さんの秘書を務めた議員が多くいる。役所も同様で、課長以上の人事はみな、菅さんへの相談が必要、と囁かれるほど」(同)

 林市長の決定は菅氏の意向抜きにはありえない。そして、菅氏は政府のIR推進本部の副本部長を務める「旗振り役」。すなわち、今回の横浜市のカジノ誘致は菅氏が大恩ある後見人を切ったという構図になる。

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