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インド北部ラダック地方の中国との係争地帯では先月15日、両国の軍が衝突し、インド軍の20人が死亡しました。

中国側は死傷者の数を明らかにしていません。

インドのモディ首相は3日、衝突があった場所に近い軍の拠点を予告なしに訪問し、視察するとともに集まった兵士たちを前に演説しました。

この中でモディ首相は、犠牲になった兵士を追悼し「拡張主義の時代は終わり今は発展の時代だ。歴史は拡張主義勢力の敗北や後退を目撃している。全世界が不正行為に反対している」と述べ、影響力を強める中国を暗に批判しました。

一方、中国外務省の趙立堅報道官は、3日の記者会見で「双方は、軍と外交のルートを通じて、事態の緩和に向けた対話を行っている。状況の複雑化につながる行動は双方ともとるべきではない」と述べ、インドをけん制しました。

両国は衝突のあと、対話によって解決する姿勢を示していますが、インド軍関係者によりますと、その後も複数の場所で軍どうしがにらみ合いを続けているということです。

モディ首相としては、中国に対して領土問題で譲歩しない姿勢を示すとともに、中国への反発を強める国内向けに強い指導者像をアピールするねらいもあるとみられます。

#南アジア

 しかし、この習近平主席の「夢」はこの2020年に大きな曲がり角を迎えるでしょう。それは米英仏独をはじめ、印、豪、ASEANなど超大国や多くの経済大国・地域から、“不実な大国”中国への警戒意識がかつてない高まりを見せており、強固な「中国包囲網」が構築されつつあるからに他なりません。

 コロナ以降の中国の姿に、いまや世界の主要国はじめ多くの国々では「チャイナ・アウェアネス(対中警戒心)」とでも呼ぶべき意識が急速に高まっています。

 イギリスのこうした動きは全欧的そして世界的な広がりを見せています。イギリスと歴史的に縁の深い、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド「アングロスフィア」(ここでは、米英の価値観や社会観念、あるいは経済・金融のネットワークや伝統的な安全保障の絆などを中軸として協調する国々のグループ、その圏域というくらいの意味)と呼ばれる国々の中核である英語圏5カ国(「ファイブ・アイズ」と称される)の政府が、香港の国家安全法に反対する共同声明を出すなど中国に強く抗議しています。

 そして、この動きは、単なる抗議にとどまらず、世界の勢力図を塗り替えかねない可能性があります。というのは、この「アングロスフィア」の動きは様々な点で今の国際情勢の流れを決定づける影響力を持っているからです。

 実際に西ヨーロッパの国々はその後イギリスに倣って追随の動きを見せ始めました。フランスのマクロン政権では、5G用のファーウェイ工場建設を白紙化しようとする動きが起こっています。

 ドイツもこの数カ月で態度をガラリと変え、欧州議会で対中関係を担当する有力ドイツ政治家は「今回、中国はヨーロッパを失った」とまで明言しました。また、ドイツの大手メディア、アクセル・シュプリンガーのCEOマティアス・デェップナーは「我々には今や根本的な政治的決断が求められている。中国か米国か。両方につくことはできない」(「ヨーロッパは米中いずれかを選ぶしかない」『ビジネス・インサイダー』5月4日)と語り、アメリカの側に立って共に中国に対峙するしかないと主張しています。実際、6月19日、欧州議会は中国による香港の国家安全法の導入に対し非難決議を行い、国際司法裁判所に提訴し、あわせて中国への制裁措置に踏み切るよう求めました。

 中国が近年、いかに世界第2位のGDPを誇る経済大国になったとはいえ、その人口や市場の規模あるいはその発展段階から言えば、まだまだ世界中から資本を集め、中国国内への投資を誘導していかなければならない。

 その中でも、香港は中国国内にあって、最も外国から様々な「成長資源」が獲得できる場所でした。たしかに今や、深圳の方が香港にくらべてGDPを稼いでいるし、金融センターとしての機能だけでいえば一部では上海が主流になっていますが、情報、金融、そして東南アジアの華僑人脈などの世界的な人的ネットワークなど有形無形の「資源」を抱える香港は、いまなお中国経済にとって非常に重要な都市であり続けています。

 しかし今回、北京政府はその香港という、“金の卵を産むニワトリ”を絞め殺したのです。そして、その“絞め殺した姿”を目の当たりにした国際社会が、急速に中国から手を引き始めている。「やはり中国とは価値観が違うんだ」と目を醒ましたのです。

 当然ながら日本も他人事ではありません。たとえば、領土問題で中国は日本に圧力も強めています。

 尖閣諸島周辺では、中国当局の船が連日確認され、過去最長となっています。コロナ禍の4月14日から80日連続(7月2日現在)という異常さです。中には機関砲のようなものを搭載した船もあったといいます。6月18日には、日本の領海近くまで潜航して入り込んだ中国海軍の潜水艦の動きが捉えられています。このドサクサの中、中国のこうした傍若無人な振る舞いを見るにつけ、日本人も連日「価値観の違い」を思い知らされているのです。

 では、その「本性」とはどのようなものなのか。私は世界史の中における中国の行動を研究する中で、隋や唐、明や清の時代から、国際社会への対応に共通する3つの特徴があると指摘してきました。(詳しくは、中西輝政『帝国としての中国――覇権の論理と現実』を参照)

 まず、世界を「文明や国力を背景にした上下関係」で見ていることです。歴史的に、中国は自国をアジアの「盟主」、周辺諸国を属国つまり「家来の国」として下位に位置づけるよう振る舞ってきました。さらに、そこには自国と他国という区別が希薄で、周辺諸国「国内の延長」のようにみなしていたのです。

 ところがアヘン戦争で中国は西洋に敗れ、1861年に初めて「総理各国事務衙門(がもん)」と呼ばれる外務省のような機関が出来るまで、対等な外国の存在を認めようとしなかったので、本当の意味で「外交」という概念が制度化されることはありませんでした。問題は、今でも当時を引きずっているかのように、近代の国際法的な「国家主権対等の原則」よりも、そうした力による上下関係が重視されてしまう瞬間があることです。

 広大な国土と人口を誇る中国でも、周囲の国に対しいつも力関係で上の立場をとれるとは限りません。その際に現れるのが、徹底した“ご都合主義”ともいうべき便宜主義に基づく「原則外交」です。

 自身が下位に甘んじなければならない状況下では、それを覆い隠すために儒教共産主義民族自決理念、人類共同体論と、都合良く時々の「イデオロギー」を利用する。一見、原則や建前を非常に大切にしているようにみえるのですが、そこに一貫性はありません。本音は「力の論理」で動いていますから、戦略的に「枠組み」を整えているだけ。本質は非常に現実主義的なのです。

 だから、中国にはダブルスタンダードとも思える言動が多い。社会主義体制を維持しながら「改革開放」を唱えて市場経済を導入していることはその代表例でしょう。また、言葉それ自体が「ダブルスタンダード」だともいえる「一国二制度」も一例です。

 香港、マカオの返還、そして中台の統一を狙って、この言葉が生み出された1980年代、中国はまだいまほどの力がありませんでした。そこで指導者・鄧小平が持ち出したのが「一国二制度」。自分たちのそれまでの立場と矛盾するイデオロギーでさえも利用するのです。

 ところが、これはあくまで自分が力関係で下位に甘んじている間に用いられる、当座の措置に過ぎません。実際、経済力を身に付けた現在の中国は、香港に「国家安全法」を導入して、「一国二制度」という自分たちが持ち出した理念を放り投げようとしているのは、何よりの証拠というべきでしょう。まさに中国の徹底した便宜主義という「本性」を示す好例です。

 鄧小平の言葉とされる「韜光養晦(とうこうようかい)」で表されるように、これまで中国は“爪を隠し時期を待つ”姿勢で国際社会と付き合ってきました。あくまで根本には力関係の計算がありますから、自己の勢力が強くなれば理念は捨てられてしまう。しかしそれが、あまりに不誠実に見える振る舞いを生んでしまうので、結局、周囲からより強い反発や抵抗を生じさせ、自らの覇権も早期に挫折するわけです。

 そして3つ目の特徴が、中国が実は、本来とても「内向きの国」であることです。

 中国という国を地球儀で見てみると、どれほど広大な領土であるか、改めてわかります。中央アジアの砂漠地帯も、東南アジアの海洋文明も、北方アジアの狩猟民族も混ざり合っている。本来、全く生活形態が違う人々が国家に類する社会集団を形作る、巨大な多民族・多文明国家なのです。

 しかし、その国家はこれだけ多様な人々を、あれだけ広大な領土の中でまとめなければならない。だから、中国の対外行動の大部分は、国内秩序の安定という至上命題に大きく規定されている。いいかえれば本質的に非常に内向きの国なのです。

 それゆえ、そんなことをすれば、世界を敵に回す、と頭では分かっていても、国内の不満や軋轢が噴出すれば自分たち自身が瓦解してしまう。それゆえ外から見ると、暴走としか見えない行動をとらざるを得なくなるのです。

 習近平政権の国内問題という足元は、昨年から揺らいでいました。そもそも香港に「国家安全法」を制定しなければならなくなった一因は、沈静化できなかった香港デモ。それが、中国本土に波及することを恐れたのも、今回、「香港処分」に踏み切った大きな理由の一つです。しかも、中国は香港だけでなくチベットウイグルなどにも火種を抱えています。

 さらに、長年言われている農村と都市の格差問題や、一説には何千兆円規模とも言われる不良債権問題も抱えている。相当な勢いで成長してきただけに、この数年で明らかになってきた中国の経済成長の鈍化が市場と社会全体に及ぼすインパクトも甚大です。そこに、コロナ・ショックで需要も供給もストップし、大量の失業者が溢れ出しています。

 そんな行き詰まった国内問題のために、国民の目を国外に向けさせたい。解決困難な国内問題に対する回答として、外交が利用され対外強硬策に出ている。また他方では、自国のコロナ禍も完全に収まっていないのに、外国にマスクや医療品を配って協調姿勢を見せる。かと思うと、日本など周辺地域には軍事的圧力も強めるような事態が生まれるのです。これらは、結局、国内要因によるところが大きいと思われます。

 この間、まず目を配るべきは、11月のアメリカ大統領選挙がもたらす米中関係への影響です。選挙のアピールのためにも弱みを見せたくないトランプ大統領が、これまで以上に強硬な対中政策に打って出る可能性が懸念されます。

 すでに尖閣諸島台湾海峡で米中あるいは日中間の軍事的な緊迫度が増している中、ひとたび中国が、コロナの苦境でアメリカの対応力が落ちていると見なせば、より大胆な行動に出てくる可能性があります。そのときに、日本は、情勢が一気に極端な流れにならないように慎重に振る舞わなければなりません。

 しかし、繰り返しますが、日本が大前提とするべきは、米中間で軍事を含めた鋭い対立や危機が起きた時には、日本は間違いなく「アメリカの側につく」とつねに明白にしておくことです。もし、この点であいまいさを残していると、日本は孤立するだけでなく、本当の危機を誘発することになりかねないからです。「安保はアメリカだけど、経済は中国だから……」などと“真ん中”に立ってその場をしのごうとする姿勢は、今後は日本の存続にとり大変危ういことになりかねません。

 世界の中国を見る視点が大きく変化している中で、世界は日本の振る舞いに注目しています。日本という国が、いわば世界に「模範」を示すような役割が求められているのです。

 一方では、高い中国依存度と同時に、他方で中国とも渡り合える経済力・技術力を持ち、また地理的な接近性を持って、長い歴史を共有している。そんな日本が中国に対してどのように振る舞うのか、世界が悩んでいるからこそ、注目が集まっているのです。

 問題は日本人の決意如何なのです。世界経済への影響力を背景にして中国がコロナ禍に一体どんな対応をしたか、そして今、香港に対してどんなに酷い振る舞いをしているか、我々日本人はよく知っています。2020年という歴史の節目の中で、一方では日本は、中国との接点を維持しつつ、しかし世界有数の民主主義国家として、一線を越え出した中国の強硬外交を抑止する包囲網の一翼を担い、世界にその「気骨」を見せるときです。

 日本の為政者、あるいは日本の国民も、中国にどのように対応していくべきなのか。いま覚悟が問われているのです。

「日本という国は、そうそう簡単に軍隊を出さない。最初は警察、おそらくコースト・ガードだ。それを出すのにも時間がかかる」

「具体的にいつ頃と予想していますか?」

「明るくなって水平線が見えてくるのは朝の5時くらい。コースト・ガードが灯台の中国国旗に気づくのは、完全に明るくなる日の出以降。早くて6時過ぎだ。これが東京に報告され、大騒ぎになり、議論の末に出動命令が下るのは半日後だ。奴らが灯台付近に来るのは夕方、どんなに早くても15時だろう。だから、我々は水の確保がうまくいかなかったとしても、15時までには灯台に戻る」

「コースト・ガードは旗を日本国旗に戻すため、灯台付近に来る。そこを攻撃する。ただし、絶対に殺すなよ。怪我までだ」

 4人のうちの一人が質問した。

「反撃して来たらどうするんですか? 手負いの獣ほど恐ろしいものはない」

「撃ち返しては来ない。現場が撃とうとしても、日本のトップが絶対に許可しない」

 今度は、別のメンバーがリーダーに食ってかかった。

「許可しないって、そんな……。そうしたら、ただ撃たれるだけです。それでも日本は許可しないんですか? 第一、そんな指示に日本人は従うんですか?」

「そうだ。日本人は、信じがたいくらい権威に弱い。上位者からのどんな指示にでも黙って従うから、政治家や官僚は現場の者に命があることを忘れてしまっている。それにすら異を唱えないのが日本人だ」

「本当ですか? 抗う奴はいないんですか?」

「いない。しかも、あの国は決断を嫌い、どこまでも譲歩をしてくる。際限なしの泣き寝入り国家だ。ところが、ところがだ。ある一線を越えると大変なことになる」

「え?」

「お前の一発で日本人が死んだ時は、どうなるかわからない。国民の性格が180度変わって、手がつけられなくなる。だから、もし反撃されても、絶対に私の指示なく撃つな」

アメリカ海軍の当局者はNHKの取材に対しロナルド・レーガンニミッツの2隻の原子力空母が、南シナ海で4日から、軍事演習を行っていることを明らかにしました。

これについて当局者は国際法が許すところなら、どこでも飛行し、航行し、活動できるといったすべての国の権利のために、アメリカは立ち上がるという揺るぎない約束を支えるものだ」と強調しています。

中国は、主権を主張する南シナ海の、西沙(パラセル)諸島の周辺で、今月1日から5日までの予定で軍事演習を行っているとみられ、国防総省は今月2日に発表した声明で南シナ海情勢をさらに不安定化させる」として非難していました。

アメリカ政府は、中国が新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による混乱に乗じて南シナ海での活動を活発化させているとして、警戒感を強めています。

アメリカのメディアは、今回の2隻の空母による演習はここ数年、南シナ海で行われた中で最大規模になると伝えています。

米中が同じ海域で同時期に大規模な軍事演習を行うのは異例で、アメリカ海軍としては強くけん制するねらいがあるとみられます。

#反中国
#対中露戦

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