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日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)はオマーンの販売代理店に日産から支出させた資金の一部をみずからが実質的に保有するペーパーカンパニーに還流させていたとして特別背任の疑いで東京地検特捜部に再逮捕されました。

関係者によりますと、このペーパーカンパニーからはゴーン前会長の妻のキャロルさんが代表を務めるバージン諸島のペーパーカンパニーに少なくとも9億円が送金されていて、特捜部はキャロルさんに参考人として説明を求めるため、裁判官が呼び出して尋問する手続きを行うよう東京地方裁判所に請求していました。

関係者によりますと、キャロルさんはゴーン前会長が再逮捕された翌日の今月5日にフランスに出国しましたが、10日夜、日本に戻り、11日、裁判所に出頭して裁判官の尋問に応じる見通しだということです。

ゴーン前会長の弁護士はキャロルさんについて「逮捕されることはないと確信し証人として尋問に応じるようアドバイスした。キャロルさんは恐れておらず、尋問に応じる予定だ」と述べていました。

フランスの経営者団体「フランス企業運動(MEDEF)」のジェフロワ・ルードベジユー会長は10日、前日産自動車会長カルロス・ゴーン容疑者の日本での処遇について「言語道断だ」と評し「多くの企業や経営者が日本へ行くのを断念するだろう」と発言した。同国のニュース専門テレビのインタビューに答えた。

 MEDEFは日本の経団連に当たる。ルードベジユー氏は「私たちが目にしている日本の司法制度は全く言語道断だ。弁護側は自分の主張をすることができない」と強調。「彼(ゴーン容疑者)は明らかに口封じのために再逮捕された。許しがたい」とも述べた。

 前日産会長ゴーン容疑者の妻キャロルさんの証人尋問に立ち会った弘中惇一郎弁護士は「誠実に対応した。ゴーン氏の無罪獲得につながると確信している」と話した。

日産自動車の前会長 カルロス・ゴーン容疑者(65)は、オマーンの販売代理店に日産から支出させた資金の一部を、みずからが実質的に保有するペーパーカンパニーに還流させていたとして特別背任の疑いで東京地検特捜部に再逮捕されました。

関係者によりますと、日産の資金の一部はキャロルさんが代表を務めるペーパーカンパニーに流れた疑いがあり、特捜部はキャロルさんに参考人として任意での事情聴取を要請しましたが応じなかったため、裁判所で尋問する手続きを行うよう東京地方裁判所に請求していました。

キャロルさんは前会長が再逮捕された翌日の今月5日にフランスへ出国していましたが、10日夜、日本に戻り、11日午後、弁護団とともに裁判所に出頭しました。

前会長の弁護士によりますと、裁判所での尋問は午後1時半から非公開の法廷で3時間にわたって行われ、裁判官や弁護士の立ち会いのもと、検察官が英語の通訳を介してキャロルさんに説明を求めたということです。

尋問のあと前会長の弁護士は報道陣の取材に対し「証言は拒否せず誠実に答えた」と話し、キャロルさんは不正への関与を否定したものとみられます。

刑事訴訟法では事件の重要な参考人が出頭や供述を拒んだ場合、検察は初公判の前に証人尋問を行うよう裁判所に請求することができます。

尋問は捜査の一環として非公開で行われ、裁判所は参考人が出頭要請を拒んだ場合「勾引状」と呼ばれる令状を示して強制的に呼び出すことができます。

関係者によりますと、手続きは通常、法廷で行われ裁判官や検察官が尋問するほか、裁判所が認めれば弁護士が立ち会って反対尋問を行うことができます。

参考人は、うその証言をすれば偽証罪に問われる可能性がありますが、みずからや配偶者など近い親族が刑事訴追を受けるおそれがある場合は証言を拒むことができます。

日産自動車のゴーン前会長らが使用していたクルーザー「SHACHOU号」とみられる船は、船舶の位置情報などを公開しているサイトによりますと、去年10月中旬からイタリア中部ピサ近郊の港の近くにとどまっています。

クルーザーは船舶の修理や改修を行う会社の敷地に陸揚げされていて、現地では船の甲板などに人があがり、何らかの作業が行われている様子もうかがえました。

この会社はNHKの取材に対し、クルーザーの所有者が誰かや、どんな依頼を受けたのかなどについて「何もコメントできない」と答えています。

郷原 去年の11月19日に「日産のカルロス・ゴーン氏逮捕へ」っていうニュースを見たときには、もう本当に衝撃を受けたんですけど、一つは、あれだけの人が犯罪者として逮捕されるということを全く予測してなかったということと、最近、東京地検特捜部の力がもう極端に落ちていてどうにもならない、まともな捜査が本当にできない、本当に困ったもんだと思ってたその特捜部が、なぜそんなに立派な事件、カルロス・ゴーン氏ほどの経営者を逮捕できるのかということが私はちょっと信じられなくて、何が起こったのかよく分からなかったというところから始まったんですが、本当にその後の展開を見てると、やっぱり間違いだったと。

 結局、その11月19日に起きたことは大きな間違いだった。検察だけではなくて日本の社会にとっても、あらゆる面でそこからとんでもないことが繰り返し起きてきたなということを思いますよね。そういう意味じゃ、日本のこの平成の30年が終わろうとしてるときに、何か本当に日本の社会のシステムが結局こんなに駄目だったのかと思わせられるような事態だったというのが私の率直な印象ですね。

細野 あの日の夕方の時間帯は家でテレビを見ていました。そして、夜8時ぐらいに携帯の履歴見たら留守電が6時くらいに入っていたので、折り返したら朝日(新聞)の記者で、それで、「細野さん、見ましたか? 日産のゴーンさんが逮捕されたんだけど、どう思いますか?」って聞かれました。私、逮捕のことは、テレビのテロップで目に入ってはいましたけれど、その内容は詳しくは知らなかった。

「どう思いますか?」って、どうも何も、一番違和感があったのは、有価証券報告書の虚偽記載という逮捕事由です。例えば背任だとか、あるいは、何かカネに関わることなら分かるけれど、そもそも日産のゴーンさんなんか、会計なんて何も知らないでしょう。日産の有価証券報告書をこの人が作っているわけではありません。それでも逮捕事由は有価証券報告書の虚偽記載、粉飾決算(報酬の過少申告)になっている。「それはないな」と思いましたね。

 そのころ私は、今年5月に上梓する『会計と犯罪』(岩波書店)って本の執筆をしていました。この本は、2009年の厚労省の村木(厚子)さん(雇用均等・児童家庭局長=当時)の事件やその後の大阪地検特捜部の証拠改ざん等を分析し、それを私自身の、(最高裁敗訴後の)地獄の底からの脱出物語の中に織り交ぜて、一般向けエンターテインメント風に分かりやすく書き下ろしたものです。結局、この本には日産ゴーン事件の分析も入れることになりましたが、特捜検察の捜査が、ああいうふうに「物証を改ざんする」ことまで、なんでやるんだろうっていうのがやっぱりこの本のテーマなんですね。あの時は、「特捜部はもう要らない」というような意見もかなり強かったけれど、大坪(弘道)特捜部長と佐賀(元明)副部長に詰め腹切らせて、おまえらが悪いということにして特捜検察は残ったわけじゃないですか。

 あのとき特捜検察の信頼ならびに権威は地に落ちたけれど、あれから10年ですよ。ずっと特捜検察は威信回復を狙ってたなと、ちょうどいいタイミングで日産が案件を持ちこんだなと思いましたね。

細野 今の郷原先生の話にも出たけれど、有価証券報告書虚偽記載について言うと、「もらってたんだけれど書かなかったんだ」とか、「もらってもいないのになぜ書かなきゃいけないんだ」とか、皆さんいろんな話をしますよね。しかし、2009年の「日債銀事件」の最高裁差し戻しの補足意見には、「有価証券報告書に虚偽記載があったかどうかというのは会計基準で考えるんだ」ということをわざわざ書いているんです。

 カネのことについては、いろんな考え方ができるでしょう。もらったとか、もらわないとか、いや確定していたとか、いろいろあるんですよ。いろいろあるんで、そういうことのために会計基準があるんです。

 だから本件については会計基準で判断すべきです。で、会計基準上は、これは役員報酬に該当しない。それはもう議論の余地がない。あのときに、もう一人逮捕されてるじゃないですか。

郷原 ケリー代表取締役ですね。

細野 そう。そのケリーさんが言うには、「金融庁にお伺い立てて、これは該当しないからって、そういう意見をもらっている」と。当たり前でしょと。会計の分かった人であれば、誰でもそう言います。これは会計基準からすれば、「開示すべき役員報酬に該当しない」んです。それをなんで監査法人は言ってあげないのか? 新日本監査法人なんだけど。

郷原 しかも、検察のこの理屈が一番おかしいのは、「もらってない報酬ともらった報酬を合算して計上しろ」っていうところです。これ、投資家からしたら意味不明です。一体、その年にいくらの役員報酬をもらったのかが分からなくなってしまいます。「もらった役員報酬とは別にもらってない退任後のものもありますよ」という付記をするのならまだ分かるんです。もらってないものも書いておきなさいって言われるのであれば、しかし、「将来もらう予定の報酬」だけを切り離して考えれば、それが投資判断にとって「重要な事項」であるはずないじゃないですか。何重もの意味で、有価証券報告書の虚偽記載になるわけがないんですよ。

細野 おっしゃるとおりですね。それで、今度は2月になって、西川さん(廣人社長)が記者会見に出て、「やっぱりあれ、引当金を計上することにしたんだ」などと話した。それはそれでいいけれど、そしたらその後に、「支払うという結論に至るとは思っていない」とか言うわけです。ばかじゃないの? 払うつもりがないんだったら引当金にならないじゃないの。

郷原 これ、虚偽記載ですよね。

細野 虚偽記載。払うつもりもないような役員報酬引当金を計上した。これを有価証券報告書の虚偽記載というんです。意図を持ってやってるんだから。なんちゅうこと言うのですか? となりますよ。

郷原 その西川氏の話になりますけども、今回、ゴーン氏の事件で、西川氏のことを何回かYahoo!ニュースで書いたんですよ。例えば、最初に2015年までの5年分の虚偽記載でゴーン氏を逮捕して、その後に直近3年分の虚偽記載で再逮捕したことについて、同一の意思、同一の目的で毎年繰り返されてきた一つの行為(犯罪)であるという見立てなのに、それをぶつ切りするみたいなやり方があるかと。こんなものは検察の捜査としてあり得ないという話を書いたんです。しかも西川氏は直近2年分はCEOじゃないですか。

細野 西川氏は有価証券報告書の作成責任者でしょう。

郷原 作成責任者ですよ。なんでこの人が逮捕されないで……。

細野 ともすると、彼が虚偽記載の主犯じゃないですか。

郷原 その話とか、先ほど出た引当金のことも含めていろいろ西川氏のことを書くと、すごいページビュー数が伸びるし、論旨に反対を表明するコメントがつかないんですよ。「西川は許せない」、「ゴーンも悪いけど西川も悪い」というようなコメントばっかりなんです。ゴーン氏の評価については、いろいろありますよ。「あんな役員報酬もらってるのがけしからん」とか、「検察も悪いかもしれないけども、やっぱりゴーンは悪党だから」というコメントが結構あるのですが、西川氏のことを書くとみんな私の意見に同意で、コメントも批判的なものはほとんどないんです。 

 みんな思ってるんですよ、やっぱり西川氏はおかしい。5億円近くもらってるじゃないですか、西川氏。(払うつもりのない役員報酬引当金を積むという)虚偽記載までするんでしょ。

細野 検察と手を握ってるからね。

郷原 そうなんですよ。

細野 結局、直近の3年分ですか、あれについては主犯が西川さんで、ゴーンさんは共犯、あるいは幇助犯にしかならない。共犯あるいは幇助犯を捕まえて、主犯はお構いなしです。そんなばかな話がありますか。烈日秋霜が聞いてあきれます。なぜそうなるのかといったら、検察にとって西川氏は“友達”だから。情報を渡してそれで事件作ってるんだから。裏返せば西川氏は自白してるようなものでしょう。ひどい。これ言いだすとキリがないんだけどさ。

細野 特別背任での再逮捕は12月21日ですね。それで私、『JBpress』というウェブメディアに、この件が「スワップ」だと全く理解されていないことについて書いたんです。有罪だ、無罪だ、いろいろな論評があるんだけれど、スワップってことが分かっていない。分かっていなくて立件してるんです。それでスワップってこういうことなんですよっていうのを書いたところ、大変な数のヒット件数になったんですね。

 この事件でおかしいのは、通貨スワップ契約で18億5000万円の損が出たっていうところです。だから付け替えたって言うんだけど、ゴーンさんは損なんかしていません。分かりにくいかもしれませんけれど、スワップっていうのは、もともと先物外国為替と直物外国為替のセットなんです。先物でドルを売ると同時に、同額のドルの直物を買う。ユーロを直物で100万ユーロ買ったら、100万ユーロの先物を売る。このセットをスワップっていうんです。直物と先物の交換(スワップ)取引のことなのです。

 では、なぜそういうことをやるかっていうのはいろんな動機があるんですけれど、その一つがリスクヘッジなんですよね。今、現物で非常に大きなドル資産を持っているとします。ドルが下がると困っちゃう。だから先物で売っておくとヘッジになります。ゴーンさんはこれと同じことをやっただけです。

 為替で18億5000万円の損が出ていて、それを付け替えたみたいなこと言うんだけれど、あのときはリーマンショックで約17.6%の円高になっています。18億5000万円の想定元本っていうと、約105億円になる。もともとゴーンさんは、ドルを基軸通貨として生きている人で、だから円貨建てエクスポージャー(円貨建て資産と円の受取キャッシュフローの為替変動リスク)を管理するため、新生銀行と為替の管理契約を結んでいるわけですよ。その一環として新生銀行スワップをやってるわけで、先物の105億円があるのであれば必ず直物の105億円が存在するんです。ここで、18億5000万円のロスが先物で出たって言うんでしょう。ならば直物は必ず18億5000万円の利益が出ています。ゴーンさんは、もともとヘッジのためにやったんだから、損などしているはずがありません。損をしていないのに損を付け替えようとするわけがないでしょう。

 なぜこういうことになったか。そのときに証拠金を入れていたわけです。105億円の証拠金っていうと、大体30%ぐらい、つまり30億円ぐらい要る。恐らく、ゴーンさんは日産の株式を持っていて、当時の株価からすると、ちょうど30億円ぐらいになる。多分、ゴーンさんは、「俺の持ってる日産の株でいいだろ」と言ってこれを証拠金に入れていたと思います。

 リーマンショックの際に、円高になっただけじゃなくて、株も下がりました。30億円の日産株が15億円ぐらいになって、ゴーンさんは新生銀行から証拠金が足りませんってことを言われたはずです。だけど、証拠金が足りないからって、なんで日産に付け替えるの? 日産に付け替えたら日産が証拠金出すんですか。出さなかったじゃないの。

 つまり、関係ないんですよ。全体のスワップ契約のリスクはゼロですよ。円高になったけれど直物で利益が出てるわけですから、トータルでノーリスクなんです。証拠金っていうのは形式上入れているにすぎない。そこを付け替えるというのは、証拠金の問題があったからではなく、新生銀行がそれをチャンスに日産との取引が欲しかっただけだと思います。いずれにせよ、ゴーンさんは損なんかしてないのに特別背任って……ばかげていると思いましたね。

細野 無罪になったらもう特捜部なくなりますね。

郷原 これはかなり大きな出来事になるんじゃないかと見てるんですね。一方で、背任のほうは、恐らく検察が必死になって引き延ばしにかかりますから、いろいろな立証をしようとしてきて。今の幹部が辞めていなくなるまで引き延ばして、10年でもやりたい。そのぐらい長期化を図りますよ。

 ただ、残念ながら今回はケリー氏の判決が先に出るんで、そんなことが許されなくなるんじゃないかと思います。そこで日本の刑事司法が、特捜の在り方が変わる、ということになればいいんですけどね。

細野 僕はあんまり楽観してないんです。裁判官の立場になってみると、「虚偽記載について、ゴーンさんはこんな計画をしていました、こんなことも言っていました」みたいな調書が山のようにあるわけじゃないですか。特別背任も、「裏でこんなことを言っていたんですよ、こうだったんです」って膨大な調書が出るわけですよね。そして、裁判所はその調書を証拠採用するわけじゃないですか。裁判官が、それだけの膨大な証拠を全て否定して「無罪です」というのはもう至難の業だと思います。

 これを無罪にするのは、だからやっぱり村木さんのときと同じようなことにならないと駄目だと思う。検察はなんでこんな犯罪でもないようなものをターゲットにしたのか。なんで日産は検察に話を持っていったのか。経済産業省はなぜこの話をこんなことで膨らませちゃったのか。新生銀行は別に証拠金も要らないのに、なぜ日産に付け替えようとしたのか。そういうストーリーを裁判で明らかにして、それで国民世論、今回の場合は海外の世論も激高して、初めて、裁判官は自信をもって無罪判決が書けるということになると思います。ゴーンさんの無罪はいいとして、じゃあ真相はどうだったのか? なぜ無実の人がこんな目に遭わなきゃいけないのか? というのを追及していく。それが社会に明らかになった時、その強い国民世論を背景にして、やっと裁判官は「無罪だ」と書けるのです。

細野 僕は喜田村さんもよく知っているし、(ゴーン氏を担当する)弘中(惇一郎)先生はよく一緒に仕事をしているので分かりますが、お二人とも「一審で世論に訴えるっていうのが大事だ」ということをよく知っている人達です。有罪・無罪の判決は事実の認定により行われ、事実の認定は裁判官の自由心証に委ねられます。でも裁判官の自由心証は社会性のある経験則と合理的な推論に基づくものでなければなりません。だから、心証について、プロとアマチュアの差はないんです。普通の常識的な人間がこれはおかしいと思うことが合理的心証となります。だから、最高裁は、下級審が出した判決が国民の常識とかけ離れているかどうかを非常に気にしますよね。

 長銀事件では最高裁で逆転無罪になりましたし、日債銀事件も、最高裁が審理を東京高裁に差し戻し、逆転無罪が確定しています。長銀日債銀の事件で逮捕された役員の方たちの中には、不良債権の後始末のために後から入ってきた人たちもいて、それはあまりにもかわいそうだということを日本のメディアがワーワー言って、国民もそうだそうだ、かわいそうだと、すごいマスコミの盛り上がりでした。最高裁としたら国民の合理的心証と下級審の判決がずれてるんだから、逆転無罪としなければ、日本の裁判制度が国民から支持されなくなってしまいます。

郷原 でも一審、二審は有罪だったし。世の中のそういう見方って、最高裁でやってるときにそんなに大きな力になったかっていったらそれほどでもなくて。私はあの最高裁判決はかなり詳しく検討したんですけど、やっぱり無罪になった大きな要因は、監査法人に対する民事訴訟粉飾決算に関する判断が次々とひっくり返ったこと、民事事件で最高裁も「粉飾ではない」という判断をしたことが大きかったのだと思います。

細野 まあそれもあったかもしれないけど、基本的には弁護側が駄目だったと思います。だって日債銀事件の下級審では粉飾決算を重要な争点にしていないのですから。最高裁は下級審に差し戻すに際して、わざわざ「粉飾事実を争ってくれ」と言っているんですよ。粉飾かどうかを決めるのは会計基準だから、その当時の会計基準でどうだったのかと。その会計基準で見たときに、日債銀の貸付金はどうだったかっていうのをもう少し審議しないと駄目なんだということで差し戻したじゃありませんか。弁護士はみんなそうだけど、特捜が粉飾って言ってるものに対して粉飾事実で争うなんてことはやりたがりません。それで、「犯意がなかったんだ」と、故意を争点にするんですよ。故意ばっかり。

郷原 検察の得意の領域にはまっちゃうんですよ、そうすると。

細野 故意で争っちゃったら、向こうは供述調書を思いっきり取っているんだから、絶対勝てない。日本の弁護士はそこが分からないと駄目です。村木事件をはじめとして、特捜事件で無罪が出てるのは唯一、犯罪事実を争点にしたときだけなんです。

郷原 そうですね。それは間違いないですね。

細野 故意かどうかで争って無罪はあり得ない。ただ、今回の喜田村さんは、粉飾事実と故意の両方とも争います。勝ち目は十分あるんだよね。

郷原 さっきの話にちょっと戻すと、検察の常套手段として、関連性のないことを山ほど立証しようとするというやり方がある。

細野 被告人が悪い人だっていう印象を作っていくわけですね。

郷原 今回の金商法については、場面が限定されてるんです。退任後に受け取る報酬額を記載した「覚書」を隠したとされていますが、この覚書作成に関与していたのは司法取引に応じたという秘書室長と、ゴーン氏、ケリー氏と、それと西川氏、限られた人しかいない。なのに、その背景とか言って、日産における役員報酬の決め方や、、ゴーン氏の役員報酬の隠蔽の動機というようなことを争点にし始めたら、審理の対象が不当に拡大してしまう。

細野 まあそうだけど、検察は虚偽記載のほうについては専門家証人を出すでしょう。専門家を呼んできて、「うん、これはやっぱり虚偽記載です」と証言させるのです。

郷原 (事実関係についての証人ではなく)専門家証人ですね。

細野 いくらでも出すでしょう。

郷原 しかし専門家は5人も6人も立てたってしょうがないですよ。

細野 もちろん(日産の監査を担当した)新日本監査法人もそうやって証言するんだよ。

郷原 今度は監査法人

細野 だって新日本監査法人はそうやって証言しないともうつぶれちゃいます。それから学者も呼びますよ。そのとおりに証言する学者はいくらでもいる。

郷原 そういうところまで広げ始めると簡単には裁判が終わらなくなるかもしれないですね。

細野 だから検察は「勝てる」と思ってる。それに抗するには国民世論が大事だと思うんですよね。

郷原 しかし、今回の事件でのメディアの報道に期待するのは難しいですよ。

細野 そうです。日本のメディアは全然駄目。

郷原 私は細野さんみたいに英語ができるわけじゃないけども、今回のゴーン氏の事件では、BBCとか、フランスの公共放送とか、AFPなどの海外メディアが通訳連れてインタビューに来てくれて、日本の刑事司法の構造的な問題なども詳しく話しました。

細野 そうでしょう。僕のところにも来るんだけれど、やっぱり自分で書かなきゃ駄目。

郷原 確かに、自分自身で書いて発信することが重要ですね。この12月から1月にかけては自分のブログの記事を自費で英訳をして、英訳したブログ記事を海外メディアに送ったんです。検察が国際的な批判にさらされている今回の事件こそ刑事司法が変わるチャンスだと思ったんで。

細野 それしかないですよ。まあほっとけば有罪だと思いますね。司法ムラですから。日本の裁判所は、「特捜検察があるから日本の司法はもっているんだ」ぐらいのことを思ってますから。

郷原 確かにそういうふうに思ってる裁判官が圧倒的に多かったし、思ってなくても特捜に歯向かえない。検察が組織を挙げて有罪立証をしてきて、徹底して攻めてきているんで、裁判所も逆らえなかった。

細野 そうですよ。判決書くのはたかだか3人です。

郷原 3人ですから。本当に細野さんの事件のときに私そう思いましたね。これだけ無罪が明白なのに、こんなひどい事件があるかと思って。高裁の、控訴審の3人の裁判官は体調まで崩して、結局、無罪判決が書けなかった。これが端的な例ですよ。それが現実だった。しかし、裁判所は今回……。

細野 海外があるから。

郷原 そうですね。それがある。それと、裁判所は幾つかまっとうな判断を見せたじゃないですか、今回。勾留延長請求却下と保釈。

細野 いまだかつてないことですね。

郷原 裁判所の争点の整理の仕方、証拠の採否、それがこれからどうなるのか、注目ですね。

細野 そうですね。僕は、何とか自分が生きてる間にこの人質司法を正して、次の世代にはもうちょっとマシな経済司法を残していきたい。

郷原 私は、検察に関わった者の一人として、今までのように特捜検察によって人生を踏みにじられる人が出ないように、特捜の在り方、特捜事件の刑事裁判の在り方を少しでも変えること、そのために最大限の努力をしようと思っています。それが自分の使命だと思ってますから、これからも闘い続けます。

細野 ちょっと頑張らんとあかんですよね、本当に。期待しています。

 僕は、最高裁判決により公認会計士資格を剥奪されましたが、その後の9年間の方が本来の公認会計士らしい仕事をすることができました。公認会計士をクビになって本当の公認会計士になれたように思いますが、それは2010年の郵便不正3事件に負うところが大きいのです。振り向けばそこにはいつも郵便不正事件があったのです。

 郵便不正事件で無罪判決を勝ち取った村木厚子さんは、「自分が無罪を取れたのは運がよかったから」 と言います。僕もそう思う。しかし、この発言は、村木厚子さんに無罪判決が出ているから言えることで、無罪判決を取れなかった私が、「自分が有罪となったのは運が悪かったから」と言うわけにはいきません。 

 村木厚子さんに無罪判決が出て私に無罪判決が出なかったのは、運以外に、何か説明可能な必然がなければならない。この本はその謎解きの物語なのです。そして、その謎解きによる研究成果が犯罪会計学になり、現在の私があるのです。この本は、本来、会計と司法に関する重厚な本として書いたのですが、出来上がったものは、地獄の底から這いあがる涙と希望の人間ドラマとなって、エンターテインメントとしても読める面白い本になりました。

細野 本当に、ここまでやるとはね。しかし、それだけ、検察が追い込まれているということですよ。これまで郷原先生や私が、徹底して、検察捜査を批判してきた。それが効いているということですよ。特捜としては、世の中はゴーンさんが強欲で悪党だと思い込んで、刑事裁判の方も、有罪間違いなしという雰囲気に持っていきたかった。でも、それが全くそうではなくて、海外からも厳しい批判を浴びてしまった。有価証券報告書の虚偽記載なんか全然犯罪にならない、サウジアラビアの話なんか立証できない、ということが分かっているんで、このままいくと検察にとって大変なことになる、何とかして、ゴーンを踏みつぶさないといけない、ということで焦って、また、ひどい事件で逮捕してきた。

郷原 今回の逮捕容疑の特別背任は、オマーンの販売代理店に日産から支出させた資金の一部をゴーン氏が私的に流用した、それがゴーン氏による「会社の私物化」だということのようです。これどう見ますか。

細野 全然ダメだと思います。特別背任になどなるわけありません。

郷原 オマーンの販売代理店に日産が支払ったお金に合理性があるのかということが問題なんですね。

細野 そうです。それがすべてです。中東日産からオマーンの代理店に流れたという1500万ドル(約16億6700万円)は、その支払いに合理性があれば、代理店の方でそのお金をどう使おうが自由です。代理店からゴーンさんの実質支配する口座に500万ドル(約5億5500万円)が流れたとしても、代理店が正当に受け取ったお金で、そこからの支払いを正当に会計処理していれば何の問題もありません。ところが、その販売代理店側が検察には協力していないというじゃありませんか。こんなものは、販売代理店のスヘイル・バウアン氏の話を聞いてみなければどうしようもありません。

郷原 ゴーン氏側は、オマーンの販売代理店に支払ったのは、正当な販売奨励金だと主張しているようですが。ゴーン氏の逮捕以降、「金に汚い」などとボロクソにこき下ろしていた自動車ジャーナリストの井上久男氏の記事によると、オマーンでの日産の自動車の売上は年間540億円程度、販売代理店への支払が年間5億円程度です。この金額は、販売奨励金の金額としてどうですか。

細野 売上の1%の販売奨励金なんて全く普通の金額ですね。販売奨励金としてどの程度の金額が相当かというのは、その国や地域の実情によって違います。中東での自動車の販売というのは、日本のようにキャンペーンやったり、チラシを配ったりしてチマチマやるのではなくて、有力者のところにまとめてお金を落とすというやり方です。大手マスコミはこの支払いが例のCEOリザーブからなされたことをもって不正の温床だなどと断罪していますが、CEOリザーブはアラブに対する金の落とし方としてむしろ機動性に優れていたとも言えるのです。その程度の金額は全くおかしくありません。また、なにか、検察は、代理店からゴーンさんの実質支配する口座に500万ドルが流れたことを鬼の首でも取ったような言い方をして、だからということで、「日産に500万ドルの損失が出たのは明らかだ」などと言うのですが、ゴーンさんの実質支配する口座に500万ドルが還流したからと言って、それだけでは日産に500万ドルの損失が発生したことにはなりません。この取引は代理店とゴーンさんの実質支配会社との間の資金移動に過ぎないからで、販売代理店のほうではこの500万ドルを貸付金として会計処理しているはずです。会計上、これを資金取引と言いますが、そもそも会計では、損益認識のない取引のことを資金取引といいます。オマーン・ルートが特別背任になるためには、この取引は資金取引ではなく損益取引でなければならず、会計上の損益取引であるためには、スヘイル・バウアン氏が、「500万ドルはゴーンさんに対するバックリベートなので、これを返してもらうつもりなど毛頭なかった」、「これを貸付金と会計処理したのは会計監査をごまかすためだった」、「そもそも中東日産からもらった販売奨励金の1500万ドル自体がインチキで、これはもともと1000万ドルの販売奨励金にゴーンさんに対する裏リベート500万ドルを、ゴーンさんと秘密裏に共謀して上乗せした金額だった」ということを自白していないといけません。

郷原 経営者についての特別背任のハードルは非常に高いんです。三越事件東京高裁判決では、社長の愛人が経営する会社への支払いが、三越にとって有用であったことが否定できないとされ、一部無罪になりました。ゴーン氏についても、販売奨励金としての支払いの合理性が否定できなければ、オマーンの販売代理店の支払いについて特別背任罪は成立しません。仮に、販売代理店側から何らかの形でゴーン氏が個人的利益を得ていたとして、経営倫理上の問題はあっても、犯罪の成否とは直接関係ありません。もし、特別背任が成立するとすれば、販売奨励金の支払いに「上乗せ」して、ゴーン氏への還流分のお金を支払うという「合意」が、代理店側とゴーン氏との間にできている場合ですが、販売代理店側は検察の捜査に協力していないようですし、マスコミ報道でも、そのような「合意」の証拠があるという話は全く出てきていません。ところが、マスコミは、「販売代理店からゴーン氏に還流」とか「流用」などと勝手に決めつけているんです。ゴーン氏の4回目の逮捕後の報道は、本当にひどいと思います。

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人違いや犯罪事実そのものが認定されなかった事案ではなく、故意が認定されなかったに過ぎない事案は、法益侵害の事実は存在しているのであり、民事責任(過失責任)は認定される余地がある。

被告人の人権を理由に判決の事実認定批判を差し控える根拠はないというべきだ。

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大胆な理論や仮説を議論することを避けて、瑣末な枝葉の議論に終始するポストモダン的な瑣末主義である。