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国連安保理では6日、ウクライナ情勢をめぐって緊急の会合が開かれ、議長声明が全会一致で採択されました。

声明は「安保理は、ウクライナの平和と安全の維持に深い懸念を表明する。平和的な解決策を探るグテーレス事務総長の努力を強く支持する」としています。

ことし2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めて以降、安保理では繰り返し会合が開かれてきましたが、ロシアも含めたメンバーが一致して議長声明を発表したのは初めてです。

ただ、議長声明に法的拘束力はなく、ロシアの名指しも避けた内容となっています。

声明をとりまとめたメキシコのデラフエンテ国連大使は、記者団が「ロシアは本当に外交を求めているのか」と質問したのに対し「声明が採択されたことから、少なくともその方向に進む意思を示していると言える。これは最初の一歩だ」と述べました。

国連のグテーレス事務総長は先月、ロシアとウクライナを相次いで訪れ、ロシアのプーチン大統領とはウクライナ東部マリウポリの製鉄所から市民を避難させるために国連が関与することで合意し、今週に入り製鉄所や周辺地域からの市民の避難を実現させています。

今回の声明で、ロシアも事務総長の取り組みについては支持する立場を示した形で、停戦交渉が停滞する中、仲介外交による成果につながるかが焦点です。

これについてグテーレス事務総長は声明を発表し「ウクライナの平和のためにきょう、安保理が初めて声を1つにした」と評価したうえで「私はこれからも命を救い、苦しみを減らし、平和の道を見つけるための努力を惜しまない」と決意を示しました。

ロシア国防省は6日、空軍がミサイルを発射し、ウクライナ東部のルハンシク州など31か所を攻撃し、同じ東部のドネツク州にある3つの弾薬庫を破壊したと発表しました。

ロシアは、第2次世界大戦で旧ソビエトナチス・ドイツに勝利した9日の「戦勝記念日」を前に、ウクライナへの軍事侵攻の戦果を上げようとしていると見られ、特に、ドネツク州にある東部の要衝マリウポリの完全掌握に向け攻撃を続けています。

ウクライナ側が拠点としているマリウポリのアゾフスターリ製鉄所には今も数百人の市民が取り残されていると見られ、ウクライナのベレシチュク副首相は6日、製鉄所からの市民の避難状況について「きょう、女性と子ども、それに高齢者合わせて50人を避難させ、あすの朝も避難活動を続ける。しかし、ロシア軍は停戦合意に常に違反していたため、避難に時間がかかった」とSNSに投稿し、ロシア軍が避難を妨害したと批判しました。

また、ゼレンスキー大統領は6日マリウポリは決して降伏しない」と述べた一方、停滞しているロシアとの停戦交渉について「最低でも侵攻前の2月23日の状況に戻し、兵士を撤退させることだ。通常なら、そうした状況で初めて交渉を始められるが、ロシア側にしてみれば撤退するためには何かを言う必要があるのだろう」と述べ、双方にとって交渉の再開が必要だという考えを示しました。

こうした中、G7=主要7か国の議長国ドイツは6日、ロシアの「戦勝記念日」の前日にあたる8日にG7の首脳がオンラインの会合を開き、ウクライナ情勢などについて協議すると発表しました。

ゼレンスキー大統領も一部参加するということで、ウクライナへの連帯を改めて示すとともにロシアへのさらなる制裁などについて協議すると見られ、圧力を強める構えです。

ウクライナ南東部のマリウポリ市当局は6日、ロシア軍が停戦合意に違反し、同市アゾフスターリ製鉄所から民間人を避難させようとする車両に向けて発砲したと発表した。

当局のオンライン投稿によると、避難する民間人の方向に向かって移動中だった車両をロシア軍が対戦車誘導弾で攻撃。兵士1人が死亡、6人が負傷した。

当局はロシアが民間人避難のための停戦を順守していないとロシア側を非難した。ウクライナによるとこの日も民間人退避が行われていたという。

ロイターは事実を確認できていない。

こうした中、ウクライナ政府は国際人道支援非政府組織(NGO)の「国境なき医師団」(MSF)に支援を要請。医療支援実施のほか、状況証拠の収集を依頼した。

MSFの広報担当者は、ウクライナ政府から要請を受けたことを確認。どのように支援できるかウクライナ当局と協議するとした。

マリウポリからの民間人の避難には国連と赤十字国際委員会(ICRC)が関与している。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は6日、ポーランドの言動が敵対的になっているとし、同国が「脅威の源」になる可能性があると述べた。

欧州連合(EU)加盟国であるポーランドはEUに対ロシア制裁の強化を求める動きを主導しているほか、北大西洋条約機構NATO)に対しウクライナに兵器を提供するよう呼びかけている。

ポーランド安全保障局のスタニスワフ・ザリン報道官は電子メールで、ロシアはポーランドウクライナの領土保全に対する脅威になると示唆するなど、数日前からポーランドに関する偽情報を組織的に拡散していると指摘。「ロシアはポーランドウクライナの間に不信感を作り出そうとしており、ポーランドが東欧で紛争を引き起こす危険な国であるというイメージを植え付けようとしている」とした。

ポーランドのアンナ・モスクワ気候・環境相はこれまでに「ポーランドプーチン大統領の非友好国リストに載っていることを誇りに思う」と述べている。

欧州連合(EU)が打ち出した対ロシア制裁の一環としてのロシア産原油の段階的輸入禁止について、ハンガリースロバキアチェコに対応する時間を与えるための変更を欧州委員会が提案したことが関係筋の話で分かった。ただ、6日朝の協議で合意は得られなかったという。

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は4日、ウクライナ侵攻を受けた対ロシア制裁第6弾として、ロシア産原油の段階的輸入禁止、主要銀行や放送局への制裁措置を提案。原油の輸入を6カ月以内に、石油製品の輸入は2022年末までに、それぞれ段階的に停止するが、ロシア産原油に大きく依存するハンガリースロバキアについては、既存契約のもとで23年末まで輸入を認めるとした。

これについて、ハンガリースロバキアチェコの3カ国に対しては24年まで輸入を認める案が6日朝に討議されたが、合意は得られなかった。

ハンガリー原油需要の65%をロシアから調達。オルバン首相ロシア産原油への依存から脱却するには5年かかるとの見通しを示している。

EU外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、週末の間に合意が得られなければ、来週に臨時のEU外相会合を開くと表明した。

英国のジョンソン首相は6日、フランスのマクロン大統領と電話会談を行い、安全保障の面で一段と緊密に連携していくことで合意した。

英首相府によると、両首脳はウクライナに対する長期的な安全保障と経済支援のほか、ロシアの孤立化に向けた措置で一段と緊密に連携することで合意。ジョンソン氏はマクロン氏に対し、ロシアの主張に信頼を与えるような形でロシアと交渉しないよう呼びかけた。

マクロン氏は先月の大統領選で再選。選挙戦初期にロシアのプーチン大統領と定期的に会談していた。今週に入ってからも会談している。

ロシアのプーチン大統領は、第2次世界大戦の対ナチス・ドイツ勝利を祝う5月9日の戦勝記念日に西側諸国に対し「終末の日」を示唆する警告を発すると見込まれている。

対独戦勝記念日では首都モスクワにある赤の広場プーチン氏が演説する予定。その後、軍隊、戦車、ロケット、大陸間弾道ミサイルなどのパレードが実施される。

ロシア国防省によると、核搭載可能な戦略爆撃機「ツポレフ(TU)160」のほか、空中指揮機「イリューシン(IL)80」などが聖ワシリイ大聖堂の上空を飛行する見通し。IL80の飛行は2010年以降で初めて。IL80は核戦争勃発時に大統領らが乗り込むことから「終末の日の飛行機」と呼ばれる。

西側諸国はウクライナに侵攻したロシアに対し厳しい制裁措置を科しており、世界最大の核保有国であるロシアと米国の対立が激化する恐れが高まっている。

ロシアによるウクライナ侵攻では数千人が死亡、1000万人近くが避難を余儀なくされている。

ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻以降、隣国ポーランドにはウクライナから多くの人たちが避難しています。

今回、NHKは、ポーランドの国境を管理する国境警備当局からウクライナへの出入国に関するデータを入手し、独自に分析しました。

その結果、先月24日までの2か月間にウクライナからポーランドに入国・避難した人は延べ294万1200人でした。

一方で、ウクライナに出国・帰国した人の数は、避難者全体の3割ちかくにあたる延べ85万2300人にのぼることがわかりました。

帰国者の数は2月下旬は1日に1万人ほどでしたが、3月下旬ごろから徐々に増え、先月15日にはこれまで最も多い2万5100人にまで増えて、初めて1日当たりの帰国者数がポーランドへの避難者数を上回りました。

また、1日当たりの避難者数は3月6日の14万人をピークに減少傾向となり、先月24日には9800人と1万人を割り込みました。

これについて難民問題に詳しい名城大学近藤敦教授は「ロシア軍が首都キーウ周辺から撤退し始めたのが3月下旬で、このころからウクライナに帰国する人が増えている。戦況の影響によるところが大きいとみられる」と分析しています。

そのうえで「今後も戦況次第では帰国した人が再び移動して国外に避難する人たちがさらに増える可能性があり、長期的な支援が必要だ」と指摘しています。

依然としてロシア軍の脅威が続く中で、なぜこれほどの人たちがウクライナに戻るのでしょうか。

ポーランドの首都ワルシャワから帰国する人たちに話を聞きました。

ワルシャワの駅からはウクライナに向かう寝台列車やバスが運行されていて、連日、ウクライナに戻る人たちで大混雑しています。

このうち、首都キーウに帰国を予定しているというマリーナさん(51)は「この国のことばも法律も分からないので長くいることはできません。ポーランドの人たちにはとても感謝していますが、多くのチャンスがあるとは思えません。ここで仕事を見つけるのは難しいと思います。このままだとお金がなくなってしまうので帰らなければなりません」と話していました。

また娘が住むイギリスに避難し、今回、ウクライナの北西部ボルィーニ州に戻るというラリサさん(42)は「避難先では仕事を見つけるのが難しかったです。高齢の母親を残しているので、母のところに帰りたいです」と話していました。

さらに、首都キーウに戻るというナタリアさん(60)は「1か月半前にポーランドに避難しました。もともと、帰るつもりでいたのでここで仕事は探していません。生まれ故郷だから帰るのです。働いて税金を払い、街を再建したい。誰にも迷惑をかけずに自由に生きたいです」と話していました。

ウクライナに帰国する人が増えている状況について、難民や避難民の問題に詳しい名城大学近藤敦教授は「ロシア軍が首都キーウ周辺から撤退し始めたのが3月下旬で、撤退したのが4月初旬とされている。この動きに応じて出国者と入国者の差が少なくなり、4月中旬にはウクライナに戻る人の方が増えていて、戦況の影響によるところが大きい」と分析しています。

また、「ポーランドEUのほかの国と比べて、難民(避難民)支援の制度が十分に整備されているわけではなく、教会や個人が、避難者に住む場所を提供して衣食住を確保している状況だ。特に就労支援が弱いと見られ、大量にウクライナから人が流入したことなどで失業率がかなり高く、仕事を見つけるのが困難な状況になっているとみられる。そうしたなかで、ウクライナに戻る方が自分たちの生活にとっていいと判断する人もいるのではないか」と指摘しています。

そのうえで、「いまの段階でウクライナに帰る人が増えるというのは一時的なものだと思う。ウクライナに帰ろうと思っても生活の再建が無理だと思えば再びポーランドに戻ることもあるし、別の国に移動する可能性もあるかもしれない。事態が収束して国を再建する状況になるまでは、むしろ避難していく人がさらに増えていく可能性はまだ十分ある。収束までの期間が長ければ新しいところで生活を再建するという選択肢も出てくるので、自分で新たな生活を切り開けるように支援していくことも重要だ」と避難者が他国で自立できるための長期的な支援の必要性を指摘しています。

今回、NHKが分析したのは、ロシアがウクライナに軍事侵攻した2月24日以降、ポーランドの国境を管理する国境警備当局が、ポーランドウクライナの国境を出入りした人数をまとめたものです。

当局は出入りした人のうち94%をウクライナ人が占めていると見ています。

それによりますと、先月24日までの2か月間にウクライナからポーランドに入国・避難した人の数は延べ294万1200人でした。

一方、ポーランドからウクライナに出国・帰国した人の数は避難者の3割ちかくにあたる延べ85万2300人にのぼっています。

1日当たりの帰国者数を詳しく見ますと、ロシアがウクライナに軍事侵攻した初日の2月24日は9700人でした。

その後、しばらくは1万人ほどで推移していましたが、ロシア軍が首都キーウ近郊から撤退し始めた3月下旬ごろから急増し、4月2日には2万人に達しました。

さらに4月15日には、この2か月間で最も多い2万5100人にまで増え、初めて1日当たりの帰国者数が、ポーランドへの避難者数を上回りました。

一方、1日当たりのポーランドへの避難者数を詳しく見ますと、軍事侵攻があった2月24日には3万1200人でしたが、その4日後の28日には10万人と一気に増えています。

そして、ロシア軍がウクライナ原子力発電所を攻撃したと伝えられた3月4日以降はさらに増え、6日にはこの2か月間で最も多い14万2300人に達しました。

しかし、その後は徐々に減っていき、ロシア軍が首都キーウ近郊から撤退し始めた3月下旬以降は3万人を割り込むようになりました。

そして、先月24日にはこの2か月間で最も少ない9800人と、初めて1万人を割り込みました。

ロシアは、第2次世界大戦で旧ソビエトナチス・ドイツに勝利した今月9日の「戦勝記念日」を前にウクライナへの軍事侵攻の戦果をアピールしようとしていると見られていて、アメリカ国防総省のカービー報道官は6日、ウクライナ東部では、ロシア軍とウクライナ軍の間で激しい砲撃戦が起きているほか、制空権をめぐる攻防も続いているという認識を示しました。

このうち、東部の要衝マリウポリでは、ロシア軍が包囲するアゾフスターリ製鉄所に取り残されている市民が数百人にのぼっているとみられていますが、ロシア側が5日から7日までの3日間、一時的に戦闘を停止し、避難のための「人道回廊」を設置すると発表したことを受け、避難が進められています。

しかし、製鉄所からの市民の避難状況について、ウクライナのベレシチュク副首相は6日、SNSへの投稿で女性や子どもなど50人を避難させたとしたもののロシア軍が避難を妨害し、避難に時間がかかったと批判しています。

さらに、製鉄所を拠点としているウクライナ「アゾフ大隊」も6日、SNSに「市民を避難させるための車をロシア軍が攻撃し、兵士1人が死亡し、6人がけがをした」と投稿するなど、避難は難航しているとみられています。

ロシア側が避難のための攻撃の停止期間を7日までとする中、取り残された市民の避難を進められるかどうかが焦点となっています。
こうした中、ウクライナへの新たな軍事支援が6日、相次いで発表されました。

アメリカのバイデン政権はりゅう弾砲の砲弾や移動式レーダーシステムの供与など日本円でおよそ195億円相当の追加の支援を発表したほか、ドイツも遠距離からの砲撃が可能な自走式のりゅう弾砲7両を供与すると明らかにしました。

また、G7=主要7か国もロシアの「戦勝記念日」を前に日本時間の9日午前0時から首脳がオンラインの会合を開き、ウクライナ情勢について協議することになりました。

ゼレンスキー大統領も参加する予定で、ウクライナへの支援やロシアへのさらなる制裁などについて協議しロシアへの圧力の強化を打ち出すものとみられます。

国防総省のカービー報道官は6日、米国がウクライナへ供与したM777型155ミリ榴弾(りゅうだん)砲のウクライナ軍兵士200人以上に対する操作訓練が終了したことを明らかにした。

記者会見で、別の兵士150人余が現在、この訓練を受けているとした。同報道官は以前、教官役の米軍兵士がウクライナ国外の場所でこれらウクライナ軍兵士への習熟訓練に当たっているとも説明していた。

対空レーダーシステムでは兵士15人、陸軍の装甲兵員輸送車「M113」では兵士60人が実習などを完了したと述べた。M113では約50人の習練が続いているとした。

また、同省のウィリアム・ラプラント国防次官(調達担当)は6日、ウクライナへ譲渡する自爆型ドローン(無人機)の「スイッチブレード」を確保するための契約を同日中に関係企業と結ぶと発表した。

契約総額は1780万ドル(約23億3000万円)相当。次官は記者会見で、契約はウクライナ向け軍事支援イニシチアブ資金に基づくもので、企業から購入し同国へ提供する形となっていると述べた。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は7日までに、ブルガリアに対しロシア軍との戦闘で損傷した軍装備品の修理での支援を要請した。ブルガリアの国営放送(BNT)が報じた。

ゼレンスキー大統領はウクライナの駐ブルガリア大使が同国国会へ渡した書簡の中で、軍装備品の修理での協力とブルガリアへ逃避したウクライナ人への支援継続を求めたという。BNTによると、ブルガリア国会は「軍事・技術の装備品」に関しウクライナを支援するかどうかを決めるとした。

ロシアは最近、ウクライナ戦争に絡む西側諸国の経済制裁への報復措置としてブルガリアポーランドへの天然ガス供給を完全に遮断。ブルガリアなどがロシアが要求するガス輸入代金の通貨ルーブルでの支払いを拒絶したことに反発していた。

ロシアで、5月9日は、第2次世界大戦で旧ソビエトナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」で、首都モスクワにある赤の広場では毎年、記念式典が開かれ、軍事パレードも行われています。

戦後77年のことしは、ロシア軍がウクライナへ軍事侵攻を続ける中で行われ、ロシア国防省の発表では一方的に併合したウクライナ南部のクリミアを含む28の都市で実施されるとしています。

このうちモスクワでは、兵士およそ1万1000人が参加することになっていて、7日、これを前に、軍事パレードの予行演習が行われその様子が公開されました。

このなかではウクライナへの攻撃でも使用されている短距離弾道ミサイルの「イスカンデル」やアメリカのミサイル防衛網に対抗するICBM大陸間弾道ミサイルの「ヤルス」など核弾頭も搭載できるロシア製のミサイルが登場しました。

また、ロシアの主力戦闘機の「ミグ29」が8機で「Z」の文字を表す編成で飛行しウクライナへの軍事侵攻の象徴となっている「Z」を用いて、国民に支持を訴える演出が披露されました。

プーチン大統領は、戦勝記念日のパレードで国内外にロシアの軍事力をアピールするとともに、1年で愛国心がもっとも高まるこの日に、ウクライナでの戦闘の長期化が指摘されるなか、式典でどのような演説を行うか注目されています。

ウクライナへの軍事侵攻を続けるなかで、今月9日に「戦勝記念日」を迎えることについて、ロシア各地の市民は、複雑な心境で受け止めていることを
インタビューで明かしました。

このうちモスクワの20代の女性は、軍事パレードの予行演習を受けて「演習とは思えず恐ろしかった。今の状況でパレードなどなくてよい」と話し、ウクライナで戦闘が続く中で兵器を誇示するのはふさわしくないという考えを示しました。

およそ40年前、旧ソビエトによるアフガニスタン侵攻の際、ウクライナ東部のマリウポリ出身の男性とともに従軍したという男性は「ウクライナ人と戦うことなど想像もできない。軍事作戦の開始以来、当時を思い出してずっと頭痛に悩まされている。とてもつらい」と苦しい胸の内を明かしました。

モスクワ市内の公園で花を見に来ていた男性は「1日の戦争より1000日の交渉のほうがよいに決まっている。目的達成の手段が武器しかなかったような古代に生きているわけではない」と話し、時間をかけて外交による解決を図るべきだったとして政権側の対応を批判しました。

極東のウラジオストクを母親と訪れていたモスクワの大学に通う女性は「この祝日を汚しているようで悲しくなります。いま起きていることはひどいものです。政権はすべてを台なしにしているので、本当に悲しいです」と率直に話していました。

一方、軍事侵攻を支持する声も多く、極東サハリンの中心都市ユジノサハリンスク年金生活を送る女性は、9日の軍事パレードで行われる予定のプーチン大統領の演説について「気持ちを高ぶらせるようなことを言ってほしい。今こそ団結が必要だ」と期待を寄せていました。

また、曽祖父が従軍したというモスクワの20代の男性は、第2次世界大戦で勝利した歴史を後世に伝えることが重要だと強調したうえで「ウクライナは兄弟国なのに反ロシア的になってしまった。ネオナチを根絶やしにしなければいけない」と話し、政権側の主張そのままに答えていました。

ロシアでは先月、ウクライナの村で、旧ソビエトの国旗を手にした高齢女性がウクライナ軍とみられる兵士に近づき、国旗を踏みつけられたことに抗議しているとする動画が、SNS上で拡散しました。

国営テレビは、「ロシアによる解放を待っていた女性がウクライナ軍に勇気を示した」などと伝えましたが、女性の名前や女性が住む村など詳しいことには触れていません。

また、先月11日には、ロシアのポリャンスキー国連次席大使が国連安全保障理事会の会合で取り上げ、「彼女の偉業と勇気は多くの人に感動を与えた。われわれにとって大切な戦勝記念日には、その旗が踏みつけられるようなおそれもなくなり、ウクライナナチスから解放したわれわれの思い出をたたえられるようになるだろう」と主張しました。

さらに、ロシア軍が掌握したと主張する東部の要衝マリウポリでは女性の像まで建てられ、今月4日に現地を訪問したプーチン大統領の側近の1人、大統領府のキリエンコ第1副長官は、「この記念碑が意味するのは、われわれが必ず勝利するということだ」と強調しました。

国営のロシアテレビは、ウクライナ南東部のベルジャンシクで、この女性を描いたとする壁画を紹介するなど、政権側は、この女性を、9日の「戦勝記念日」を前に侵攻の正当性を主張したり愛国心の高まりを演出したりするプロパガンダに利用しています。

これに対してウクライナのメディアは、ウクライナ当局や軍の話として、実際には自宅を砲撃された女性がロシア軍に攻撃をやめてほしいと訴えたものだと伝え、ロシア側の主張を否定しています。

ウクライナは世界有数の小麦の産地で、FAO=国連食糧農業機関によりますと世界第5位の輸出量ですが、ロシアによる軍事侵攻で東部や南部を中心に農地が荒らされたり、黒海沿岸にある貿易の拠点、オデーサの港が封鎖されたりして輸出が困難になっています。

こうした事態に首都キーウ近郊の農地で小麦やトウモロコシなどの穀物を中心に生産を行っている農家のバシル・ソローカさんも懸念を深めています。

ソローカさんは、およそ130ヘクタールの土地で小麦を栽培し、去年の秋にまいた小麦が20センチほどの背丈に成長しています。

しかし、ことし2月にロシアによる軍事侵攻が始まると、夜間外出禁止令が出て農作業やトラクターの点検などに充てる時間が減ったほか、直接の被害はなかったもののミサイルによる攻撃の音が頻繁に聞こえ、不安な毎日が続いたといいます。

ソローカさんは「侵攻が始まった日には航空機が飛んできて爆弾を落とす音も聞こえた。3日目には自宅の近くにヘリコプターが飛んできて、妻がとても怖がっていた。毎日、戦争が続いているので大変だ」と話しました。

また、ソローカさんがもっとも懸念しているのは、去年収穫を終えた小麦の多くが出荷できないまま倉庫に保管されていることです。

このままだと、ことし収穫する小麦を保管する場所も確保できず、小麦が売れないと収入もなくなるため、農業そのものを続けていくことが難しくなるといいます。

ソローカさんは「戦争のせいだ。ロシアの軍事侵攻で港が封鎖されているからだ。おなかをすかせた人たちがたくさんいるのに売ることができないでいる」と指摘し、一刻も早い事態の打開を訴えました。

一方、ソローカさんは、激しい戦闘が続く東部や南部では農家が置かれた状況はさらに深刻だとして「彼らの将来がどうなるかわからない。何も作付けできなければ、どうやって生きていくのか。彼らを支えるために小麦を送りたい」と話していました。

ウクライナの小麦の輸出に関連してFAOは6日、港が封鎖されたりインフラが破壊されたりしたことでおよそ2500万トンの穀物が輸出できなくなっていると明らかにしました。

また、国連のWFP=世界食糧計画も6日、「世界的な食糧危機を引き起こさないためにウクライナ南部の港の再開を求める」とする緊急声明を出すなど、国際機関も問題の深刻さを指摘しています。

ロシア国防省は7日、空軍が東部ハルキウ州や南部オデーサ州の軍事施設18か所を攻撃したと発表しました。

このうちハルキウ州では、ロシアとの国境からおよそ20キロ南の地点で、ウクライナ軍が欧米から提供を受けた軍用機器の集積場所を破壊したと主張しています。

一方、イギリス国防省は7日、ウクライナの戦況について、ロシア軍の最新鋭の戦車少なくとも1台が破壊されるなど、ロシア側は精鋭部隊や最新の装備に大きな損害を受けているなどとする分析を公表しました。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も6日、ウクライナ軍が第2の都市ハルキウやその周辺の広範囲にわたって反撃に転じ、一部で支配地域を奪還しているとして「今後数日でハルキウ市内を砲撃する射程外にロシア軍を押し出す可能性がある」と分析しています。

こうした中、東部の要衝マリウポリについて、ロシア側は、軍が包囲する製鉄所に取り残されているとみられる大勢の市民を避難させるためとして、一時的に戦闘を停止し、「人道回廊」を設置するとしていて、その期限を7日、日本時間の8日午前0時に迎えます。

しかし、ウクライナのベレシチュク副首相は6日、ロシア軍による妨害で避難に時間がかかっていると批判するなど、避難は難航しているとみられています。

ロシアとしては、プーチン大統領が重視する、第2次世界大戦で旧ソビエトナチス・ドイツに勝利した今月9日の「戦勝記念日」を前に、軍事侵攻の成果をアピールしようと、マリウポリの完全掌握をねらって攻勢を強めることも予想され、避難が進むかは不透明です。

ロシアで、5月9日は第2次世界大戦で旧ソビエトナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」で、最も重要な祝日の1つとなっています。

第2次世界大戦で、旧ソビエトは、世界で最も多い少なくとも2600万人の兵士と市民が死亡したとされています。

なかでもナチス・ドイツとの戦いは、ロシアでは「大祖国戦争」と呼ばれ、苦難の末に勝利した栄光の日と位置づけられています。

こうした歴史は、ロシアの学校現場でも詳しく教えられていて、この日はロシアの人たちがソビエト軍の功績や戦争に加わったそれぞれの祖先に思いをはせるなど、愛国心が最も高まる日とされています。

毎年5月9日は、首都モスクワにある赤の広場で記念式典が開かれ、軍事パレードや大統領による演説なども行われています。

このうち2005年の60周年の式典には、日本からも当時の小泉総理大臣や、アメリカの当時のブッシュ大統領など、欧米を含む50か国以上の首脳が出席し、戦勝国・敗戦国を問わず犠牲者を追悼するなど、平和に向けた国際社会の結束が誓われました。

このように「戦勝記念日」は、「追悼と和解」の象徴という側面もありましたが、プーチン政権は、近年、この祝日を国威発揚の場として利用する傾向が強まっています。

プーチン大統領は、パレードで最新の兵器を披露させるとともに、欧米との対決姿勢を鮮明にする演説も行っています。

また、「ゲオルギー・リボン」という黒とオレンジ色でデザインされた、勝利のシンボルを普及させる市民が始めた運動をここ最近では、政権側が積極的に主導しています。

77周年となることしの記念日は、ウクライナへの軍事侵攻が続く中で迎えることになります。

プーチン大統領は、ウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」だと一方的に主張しながら2か月以上にわたって軍事侵攻を続けています。

ロシアのラブロフ外相は今月(5月)1日に公開されたインタビューで「ロシア軍は、戦勝記念日を含む特定の日にもとづいて行動を調整することはない。5月9日はいつものように厳粛に祝う」と述べ、1つの節目ともみられてきたこの記念日のあとも戦闘が継続されるという見方を示しています。

ただ、「非ナチ化」を掲げて軍事侵攻を正当化するプーチン大統領は、ナチス・ドイツへの勝利を記念した日を強く意識しているとみられ、式典の中でどのような演説を行うか注目されています。

ロシアでは、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した「戦勝記念日」の5月9日、毎年、各地で軍事パレードが行われます。

特に首都モスクワでは、中心部の「赤の広場」で大規模なパレードが行われ、大勢の兵士が参加するほか最新の兵器なども披露され、ロシアの軍事力を内外にアピールする機会にもなってきました。

ロシア国防省は、ことしの軍事パレードについて28の都市で実施されると発表し、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアでもロシアによる軍事パレードを行うとしています。

モスクワのパレードでは、兵士およそ1万1000人が参加するということで、去年と比べて1000人ほど少なくなっています。

また131の兵器が披露される予定で去年と比べて60台ほど少なくなっています。

なかにはアメリカのミサイル防衛網に対抗するICBM大陸間弾道ミサイルの「ヤルス」や、ウクライナへの攻撃でも使用されている短距離弾道ミサイルの「イスカンデル」など、核弾頭も搭載できるロシア製のミサイルが登場するということです。

さらに、ことしは、戦後77年にちなんだ77機の戦闘機や軍用ヘリコプターなどが参加するということです。

このうちロシアの主力戦闘機の「ミグ29」は、8機が「Z」の文字を表す編成で飛行するとしていて、ウクライナへの軍事侵攻を支持する象徴となっている「Z」を用いて、国民にも支持を訴える演出となっています。

また核戦力による戦争など非常時に大統領などが乗り込み、上空から部隊を指揮することから「終末の日の飛行機」とも呼ばれる特別機「イリューシン80」も飛行することになっています。

ロシアのメディアによりますと「イリューシン80」が最後に軍事パレードに参加したのは戦勝65年を祝う2010年以来だということです。

プーチン大統領核兵器を使用する可能性も辞さない構えを示していて、軍事パレードでは核大国であることを誇示し、ウクライナを支援するアメリカをはじめNATO北大西洋条約機構の加盟各国をけん制するねらいもあるとみられます。

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアで、仮にプーチン大統領が「戦争状態」を宣言すると、「戒厳令」が導入されたり、国民を対象に「動員」が宣言されたりすることになります。
国防に関する法律によりますと、「戦争状態」は、他国から武力攻撃を受けたり、国際条約の履行において必要があると判断されたりした場合に宣言され、その時点から「戦時」になるということです。

そして、大統領は、ロシアが侵略または侵略の脅威を受けた場合や、ロシアに対する武力紛争が起きた場合に、総動員または一部の動員を宣言し、戒厳令を導入する権限があると規定されています。
戒厳令が導入されると、国民が出国することが禁止されたり、居住地からの移動が制限されたりするほか、敵国の市民の抑留なども可能になるということです。

また、当局は、国民の財産や企業の資産を差し押さえることができるほか、防衛のための作業や施設の復旧などのために国民を徴集できるとしていて、ロシアの独立系メディアは、強制労働につながると警戒しています。

さらにデモやストライキなどが禁止されるほか、外国や国際組織の活動を強制的に止める措置がとられる可能性もあるということです。
一方、大統領には戒厳令とは別に「動員」を宣言する権限も与えられています。

独立系ネットメディアの「メドゥーザ」によりますと、兵役を終えたか、予備役に登録された50歳未満の男性は、総動員令が宣言されると徴兵される可能性があるということです。

また、予備役に登録されていなくても領土防衛のため動員されることはありうるとしています。

このほか大統領令によって手紙や電話、インターネットを対象に「軍事検閲」が導入される可能性もあり、「メドゥーザ」は、「ロシアにはおよそ3万5000ものネット事業者がいる中ですべて強制的に遮断することは不可能だ。ただ、当局が複数の大手事業者を閉鎖すれば、ユーザーの80%の生活は困難に陥るだろう」と伝えています。

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