焦点:変わるドイツ経済勢力図、エネ問題契機に北部が台頭 https://t.co/y9H7lHKwpe
— ロイター (@ReutersJapan) 2022年9月16日
ドイツで北部地方と言えば、湿気が多く、風が吹き荒れるという厄介な気象条件のせいで、工業化された南部地方に比べて長らく経済発展が遅れてきた。ところが世界的なグリーンエネルギー移行の動きや、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした欧州のエネルギー危機を受け、こうした従来の勢力図に変化が起きている。
スウェーデンの新興電池メーカー、ノースボルトが国外最初の工場建設地をドイツで探していた際に選んだのは南部ではなく、風力発電施設が稼働し始めている北海沿岸に近い場所だった。
ノースボルトの公共問題責任者は「電池製造はとてつもなくエネルギー集約的だ。ドイツのこの地域に目を向けると、エネルギー(調達)の観点だけでなく、エネルギーの種類にも関心をそそられる」と述べた。
同社がこの工場建設を発表した3月15日は、まさにエネルギー危機が本格化しつつあった時期に当たる。ウクライナに侵攻したロシアに対して西側が制裁を強化し、ロシアが欧州向けのパイプラインを通じた天然ガス輸出をじりじりと減らしたからだ。
こうした中でロシア産ガスに大きく依存していたドイツは、エネルギー調達における脱ロシア化を急いでいる。北部沿岸地域は、再生可能エネルギーの生産を拡大するとともに、原発や石炭火力の代替燃料としてガスを輸入するという、こうした取り組みの中心地と言える。
北海沿岸では数カ月中に液化天然ガス(LNG)の浮上式受け入れ施設が稼働する予定。これは恒久的な輸入ターミナルが建設されるまでのつなぎだ。
ニーダーザクセン、シュレスウィヒ・ホルシュタイン、メクレンブルク・フォアポンメルンといった北部諸州は、ドイツ全体の風力発電量64ギガワット(GW)の半分を生産しているが、そのほとんどは陸上の発電施設が占める。ドイツは2040年までに洋上風力発電料を現在の7.7GWから70GWまで増やす計画で、北部諸州は今よりもっと大きな役割を果たすだろう。
南部地方は第2次世界大戦後のドイツ経済復興をけん引し、現在もバイエルン州にBMWやシーメンス、バーデン・ビュルテンブルク州にメルセデスといった大手企業が本社を構えるものの、経済面で北部という新たなライバルが出現した形だ。
<変わる対立軸>
これはドイツ国内の「対立軸」が、従来の「豊かな西部対貧しい旧共産圏の東部」という構図から変わりつつあることを意味している。
ドイツのある州の首相は「北部と南部の間で密かに経済の主導権を巡る闘いが進行している」と明かした。
そして勢いを増しているのは北部の方だ。
米電気自動車(EV)大手テスラは今年3月、北部のブランデンブルク州に工場を開設。ドイツの自動車メーカーで唯一北部を拠点とするフォルクスワーゲンは、ニーダーザクセン州にEV用電池工場を建設しようとしている。
ニーダーザクセンでは、ベルギーのツリー・エナジー・ソリューションズ(TES)も水素工場の建設を計画中。当初は食品その他の廃棄物に由来するメタンを原料とし、いずれ洋上風力による水の電気分解を利用するという。
IW経済研究所が税還付から技能労働者の分布などの要素を用いてドイツの400の行政区域を調べた結果によると、ドイツで最も繁栄しているのは引き続き南部だが、急速に発展しているのは北部と西部だ。
同研究所のハンノ・ケンパーマン氏は「(ドイツ経済の)支配権は当初何十年間も西部が握った後、南部に移り、今や北部が手に入れようとしている」と述べた。
欧州のエネルギー危機も北部にとって追い風になるかもしれない。ドイツは既に、南北をつなぐ高圧送電線を必要としており、北部で生産される再生可能エネルギーが増えるにつれ、設置は一層急務になるだろう。
バイエルン州のゼーダー首相はこれまで繰り返し、連邦政府は同州の経済を十分に守ってくれないと不満を表明し、ドイツに残った最後の原発3基をずっと稼働させて工業活動が苦境に陥らないようにしてほしいと要望している。
これに対して連邦政府は、ゼーダー氏がなかなか州内に風力発電施設を設置しないと苦言を呈しつつ、年末で停止する予定だった2基の原発は来年春までいつでも稼働できる状態を維持する方針を示した。
いずれにせよロシアからのガス供給が細っているドイツは、既に天然ガスに関する3段階の緊急計画で第2段階の「警報」を発令している状態にあり、最終段階になれば産業界向けの電力割り当てが実施されることになる。
ゼーダー氏は今月、北部メクレンブルク・フォアポンメルン州のシュベーズィヒ首相に対して、LNG受け入れ施設建設を加速させるためにバイエルン州職員を派遣すると申し出た。バイエルン州のある高官は「ゼーダー氏はシュベーズィヒ氏の下を訪れた。なぜなら北部から南部にガスを届けるという面で共通の利益が存在するからだ」と述べた。
d1021.hatenadiary.jp
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