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米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は25日、インフレを確実に抑制するために一段の利上げが必要となる可能性があるという認識を示した。

パウエル議長は米ワイオミング州で開催中の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演し、一段の金融引き締めを実施すべきかどうかの決定は「慎重に進める」としつつも、FRBは依然としてインフレが目標の2%に回帰するために政策金利が十分に高いとは結論付けていないと強調した。

パウエル議長は「インフレを2%の目標まで低下させるのはFRBの仕事であり、われわれはそうする」と言明。「この1年、金融政策を大幅に引き締め、インフレがピークから鈍化したのは歓迎すべき動向だが、依然として高すぎる」と語った。

その上で「適切であれば、さらなる利上げを実施する用意がある。インフレがFRBの目標に向かい持続的に低下していると確信するまで、金利を制約的な水準に維持するつもりだ」と表明した。

最近発表された指標に言及し、個人消費「とりわけ堅調」で、住宅セクター回復の可能性もあるとし、「景気が想定通りに減速していない兆候を注視している」とした。

景気はトレンドを上回る成長を続けており、こうした状況が続けば、「インフレに関する一段の進展がリスクにさらされ、金融政策の追加引き締めが正当化される可能性がある」と述べた。

「中立」金利の水準は不明で、政策の立ち位置を正確に判断するのは困難という認識も示した。

利下げが間近に迫っているというシグナルは示さなかったほか、インフレが一段と持続的に鈍化すれば金利を下方に調整する必要があるという他のFRB当局者の見解に同調することもなかった。

金利先物市場では、今年終盤の連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げ観測が強まり、来年の利下げ観測が幾分後退した。

パウエル議長はまた、新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)に起因するモノの価格高騰は緩和し、住宅価格の下落が「進行中」としつつも、広範なサービスに対する個人消費の継続や逼迫した労働市場がインフレの目標回帰を困難にする可能性があるという懸念を改めて示した。

食料とエネルギーを除くコアインフレが最近鈍化したことは「歓迎すべき」としつつも、インフレが持続的に低下していると確信するには、2カ月間の良好なデータは「始まりに過ぎない」と述べた。

住宅を除く幅広いサービス部門の規模を踏まえると、「さらなる進展が不可欠」で、景気減速が必要になる公算が大きいと指摘。「制約的な金融政策がさらに重要な役割を果たす可能性が高い。インフレを持続的に2%に戻すには労働市場の軟化だけでなく、経済成長率がトレンドを下回る期間が必要になる」とした。

その上で、「2%が今も今後もわれわれのインフレ目標とし、「インフレを時間とともにその水準まで低下させるため、十分に制約的な金融政策スタンスを達成し、維持することにコミットしている」と言明した。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのチーフインベストメントストラテジスト、マイケル・アローン氏は「パウエル議長は綱渡りを続けている」と指摘。「今年の金融政策とインフレ鈍化の進展に満足しているようだが、状況を注視し、 なおやるべきことがあるという考えを堅持しているようだ」と述べた。

西部ワイオミング州の高原リゾート地で開かれているシンポジウム「ジャクソンホール会議」にはFRBのパウエル議長や日銀の植田総裁、ヨーロッパ中央銀行のラガルド総裁のほか、著名な経済学者などが一堂に集まり、「世界経済の構造転換」をテーマに議論を行っています。

パウエル議長は25日、このシンポジウムで講演し、「これまでの金融引き締めによってインフレがピークから低下したことは歓迎すべきことだ」と述べました。

一方、GDP国内総生産の伸び率がことしに入ってから予想を上回り、個人消費は特に底堅いこと、そして、これまで急減速していた住宅市場にも回復の兆しがあるなどと経済の力強さを指摘しました。

そのうえでパウエル議長は「インフレは依然として高すぎる。適切だと判断すればさらに利上げする用意がある」として改めてインフレ抑制を優先する姿勢を示しました。

一方で「金融を引き締め過ぎれば経済に不必要な悪影響を与える可能性もある」と述べ、景気にも配慮する姿勢を示しました。

FRB元副議長「議長は慎重になるだろう」

FRBの元副議長でプリンストン大学のアラン・ブラインダー教授はジャクソンホールNHKのインタビューに答えました。

このなかでFRBの金融政策をめぐる現状についてブラインダー教授は「金融政策はいま興味深い岐路に立っていると思う。金融引き締めを優先すべきというタカ派的な議論もできるし、景気に配慮すべきだというハト派的な議論もできる。これまではインフレを抑え込むため利上げしなくてはならないことは明らかだったが今はFRBの金融政策を決めるメンバーのあいだでは多くの議論が行われている。ただ、パウエル議長はどちらの側にもつかないようとても慎重になるだろう」と述べました。

また、景気後退を招くことなく物価目標の2%までインフレ率を引き下げることができるかという問いに対しては「1年半前に同じ質問をされたらとても無理だと答えただろうがいまはできると考えている。インフレ率はかなり低下し、FRBが利上げを開始して以降、失業率は変わっていないからだ」と述べました。

その上で、今後の追加利上げについて「私が金融政策を決める会合のメンバーであったら次回会合での利上げ見送りを支持する。ただ、次の会合では0.25%の利上げを決めるかもしれない。その場合でもFRBは利上げがこれで終わりだと確信を持っているわけではなく、経済指標しだいという状況が続くだろう」と述べました。

IMFエコノミスト「簡潔でタカ派的なメッセージから始めた」

パウエル議長の講演について、元IMF国際通貨基金のチーフエコノミストでカリフォルニア大学バークレー校のモーリス・オブストフェルド教授はNHKのインタビューに対し、「非常に簡潔で金融引き締めを優先するタカ派的なメッセージから始めたと思う。追加の金融引き締めを否定せず、少なくともインフレ低下の証拠を見るまでは金融引き締めを続けることは確かで将来の利下げの可能性にも言及しなかった」と述べました。

一方で、FRBが来月の会合で利上げに踏み切るかどうかについては「経済指標に大きく左右されるだろう」と述べた上で「インフレが強まったり、逆に景気が急速に減速したりするような大きなニュースがなければ、FRBは現在の政策金利を維持しこれまでの金融引き締めの効果を見極めることになる」という見方を示しました。

また、急速な利上げにもかかわらず景気が減速していない現状については金利の影響をすぐには受けにくいサービス産業の堅調さが要因だとしたうえで金融政策は遅れて影響が表れるとして今後景気が減速する可能性があると述べました。

パウエル議長の発言の主な内容

FRBのパウエル議長は冒頭、「去年のジャクソンホールのシンポジウムで短く、直接的なメッセージを伝えた。ことしは少し長いが伝えたいことは同じだ」と述べました。

また、FRBがインフレの実態を見極める指標として重視しているPCE=個人消費支出の物価指数について「変動の激しいエネルギーと食品をのぞいた物価指数がピークから徐々に低下しているということは歓迎すべきことだ」と述べる一方で「インフレが持続的に低下しているという確信を持つための始まりに過ぎない」として、この傾向が続くかどうか見極める考えを示しました。

労働市場については「雇用者数の伸びが著しく鈍化するなど徐々に正常化している」と述べました。

また、インフレの要因となっている人手不足に伴う賃金の上昇も徐々にではあるものの鈍化傾向になっていると指摘しました。

FRBの金融政策をめぐっては「金融引き締めの効果が経済活動やインフレに与える時間差については不確かで評価は非常に複雑だ」としたほか「金融を引き締めすぎてしまうリスクと引き締めが弱すぎるリスクのバランスを取ることが仕事を複雑にしている。われわれは曇り空の下で、星を頼りに航海している」と述べ今後の政策の難しさを打ち明けました。

パウエル議長は「さらに金融を引き締めるか、いまの金利水準を維持し、さらなる経済指標を待つかどうかは慎重に判断する」としたうえで講演の最後を「任務が完了するまでやり遂げる」と去年の講演以降、繰り返してきたフレーズで締めくくり、物価目標の2%にまでインフレを抑え込む決意を改めて示しました。

#ジャクソンホール会議(2023「世界経済の構造転換」・FRBパウエル議長「インフレは依然として高すぎる。適切だと判断すればさらに利上げする用意がある」)

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#ジャクソンホール会議(2023)