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中国とアフガニスタンの関係に詳しい防衛省シンクタンク防衛研究所の山口信治主任研究官に聞きました。

(聞き手・国際部記者 北井元気・関谷智)

Q 中国とアフガニスタンのつながりは?

シルクロードがちょうど通っていたということもあり、古くからつながりがあります。

近代以降では、中華人民共和国が1949年に成立すると、1950年代には国交を結びました。
しかし、中国と対立していた旧ソビエトが1978年にアフガニスタンに親ソビエト政権を発足させたことで関係はいったん途切れます。

中国は旧ソビエトの影響下にある国が、自国のすぐ西側に誕生したことを非常に警戒しました。

その後、アフガニスタンが内戦を経て、1990年代に当時のタリバン政権ができたあとも関係は深くはありませんでした。

1990年代末期から2000年代の初頭に少しずつ関係を築こうとしたこともありましたが、アメリカで同時多発テロ事件が起き、アメリカの軍事作戦が始まったこともあって、関係は再び途切れました。

Q 今回のタリバンの権力掌握を中国はどう見ている?

チャンスと不安の入り交じったもので、どちらかと言えば不安感が大きなものになっています。

チャンスという点では、中国は一貫して、アメリカが軍事介入によって相手の国家や政権を転覆させ、民主主義国家の建設を行うということを批判してきました。

アフガニスタンからアメリカ軍が撤退し、アメリカが支援した政権が倒れたということは、アメリカの民主主義国家建設の試みが挫折したと捉えています。

中国にとってみれば宣伝戦を繰り広げるいいチャンスとなっています。

一方、中国国内の安全保障問題という点に絡んで、タリバンはテロ組織を支援しないということをこれまでも約束してきていますが、実際に守ったとしても、どれだけ末端の組織を統制できるかはわかりません。

またタリバン以外のさまざまなテロ組織が活発化する可能性もあるという点で、中国からすれば非常に不安が大きいところだと思います。

Q 中国にとってアフガニスタンの重要性とは?

1つは国内の安全保障問題で、これが基本となっています。

中国は、アフガニスタンが不安定化することは、隣接する新疆ウイグル自治区の不安定化にもつながりかねないと考えています。

特に「東トルキスタン」(新疆や中央アジアの一部とされる)の独立を主張する「東トルキスタン・イスラム運動」などの分離独立運動が、中央アジアアフガニスタンなどの外国勢力とつながることに対する警戒を一貫して抱いています。

2つ目が経済的な利益です。

アフガニスタンは銅やレアアースなどの資源が豊富とされています。

さらには、中国が推し進める一帯一路の中でもアフガニスタンを隣国のパキスタンとの経済回廊に組み込んでいくということも可能性としてあります。

ただし、アフガニスタン政府自体が安定しないことには、道路などの基礎的なインフラも全くないため経済的な利益を獲得することが難しい状況です。

そして3つ目の利益が、地域秩序に中国がどう関与していくか。

地域における影響力の拡大です。

中国は、これまではアメリカによるアフガニスタンの安定化のための軍事作戦を傍観してきました。これに対し、米軍が撤退したことで、その空白をどう埋めていくか、うまくいけば中国が主導する地域を形成していくことができるかもしれないという地政学的な利益があると思います。

Q なぜアメリカの行動を「傍観」した?

中国にとっては、アフガニスタンの安定をできるだけ自国が関与しない形で達成できることが望ましかったわけです。

このため、アメリカがアフガニスタンで安定化のために作戦を行うことは、必ずしも中国にとっては悪いことではありませんでした。

ただ、完全にアメリカが勝利するということも望ましくない。

できるだけアフガニスタン問題に集中してもらい、中国に矛先が向かないようにしたいという意図がありました。

そのため、限定的な協力という形にとどめて傍観するという立場を取りました。

Q その姿勢は続いている?

中国は受動的な姿勢を徐々に転換させています。

その重要な年が2014年です。

アメリカ軍が主体のNATO北大西洋条約機構アフガニスタンでの戦闘任務を終了させ、中国では新疆ウイグル自治区習近平国家主席が視察に訪れた直後に爆発が起きるなどして、自治区の治安への不安が高まったタイミングが重なりました。

さらに、新たに発足した習指導部が中国の外交自体を活発化させていたこともあり、中国は、アフガニスタンを安定化させようと2国間や多国間の外交などに積極的になっていきました。

Q 中国とタリバンとの関係は?

中国は徐々にアフガニスタンへの関与を強めるなかで、タリバンとの関係も構築しています。

2014年には特別代表を任命してタリバンの代表者と面会し、その後もタリバン側と会談や訪問を重ね、タリバンとの間で一定の連絡パイプを作ってきました。

一連の会談で中国は、「東トルキスタン・イスラム運動」の活動にタリバンが協力しないことを求め、タリバン側もこれを承諾してきました。

ことし7月には、タリバン幹部のバラダル師が中国を訪問し、王毅外相と会談しました。

ここでもタリバン側に新疆ウイグル自治区の安定化を要求していて、タリバン側は「いかなる勢力にもアフガニスタンの領土を利用して中国に損害を与えさせない」と返答しています。

中国が、タリバンに出している一番重要な条件は、アフガニスタンを中国に対するテロ活動や分離活動を行うような組織の根城にさせない、ということで、それさえすればある程度、タリバンを受け入れる用意はあるというふうに読める態度をとっています。

Q 中国は今後どのようにアフガニスタンに関与する?

アフガニスタンに対して中国の影響力が高まっていくということは確かだと思います。

アメリカ不在のなかで、誰がこの地域で主導権をとって地域の安定を図れるかというと、中国の役割が非常に大きいことは間違いないからです。

一方で、中国が単独でアフガニスタンに介入し、地域を担っていくという気はおそらくありません。

アフガニスタンは「帝国の墓場」とも言われ、中国でもよく聞かれます。

アフガニスタンに関与したことで、これまでさまざまな大国がはまり込んで、無駄な労力を使ってしまったと言及されています。

かつてはイギリス、ソ連、今度はアメリカ、その二の舞になってしまうということへの警戒も大きいようです。

中国としては多国間の外交、特に周辺の似たような利益を持っている国々と歩調を合わせて、この問題を処理していくというのが一番よいはずです。

ことし9月には、中国とロシアが主導する上海協力機構の首脳会議が行われ、アフガニスタン問題が話し合われています。

こうした多国間の枠組みをうまく使っていきたいというのが、おそらく中国が一番はじめにやることだとみています。

Q 似た国益を持つ周辺国とは?

アフガニスタンと国境を接する国ではパキスタンとイラン、中央アジア

それ以外にもロシアが関わってきますし、中東の国々も関係はゼロではありません。

あとはパキスタンとの関係でインドも関わってきます。

中国から見るとかなり複雑な利害の調整が必要になってきます。

下手をすれば、これまで仲の良かったロシアやパキスタンとの間に溝を生じさせかねません。

この問題の核心であり一番のポイントは、結局のところ中国がどれぐらいこの負担を背負いこむ気があるかということです。

地域の安定化に対して、中国自身が主導していくという気がどれぐらいあるかというところにかかっていると思いますし、中国外交の試金石にもなるとみています。

Q 関与は中国の内政不干渉の原則と矛盾しないのか?

中国は欧米や日本の侵略を受けてきた歴史から、外国勢力や、外国勢力が国内で何らかの影響力を及ぼす事への反発が強くあります。

だからこそ中国が重視するのが「内政不干渉」や「主権の平等」です。中国はこうしたキーワードを、外交の一番基礎的な原則としています。

しかし、アフガニスタンに関して、中国は最近「建設的な関与」といった言葉を使っています。

これは以前と比べて、自国の影響力を他国に及ぼし、なんらかの秩序を作っていこうとする議論にも見えます。

つまり、中国は、「建設的である」といった表現で、自分たちの関与や介入は内政干渉ではない、現地の人々や政府の合意を取りつけたうえで、介入していると主張しているのです。

いまや中国は完全に大国となり、地域的な秩序や国際秩序への影響力が増しています。

より自国の利益を反映した秩序を作りたいはずです。

したがって、今後は、これまでの「内政不干渉」の原則との矛盾をはらんだまま、進んでいくのだろうと思います。

Q 中国が関与を強めるとすれば何が考えられるか?

まず、アフガニスタン国内への、経済上や軍事上の支援、あるいはインテリジェンスや通信、そういう情報面での供与は、おそらく行っていくと思います。

中国もアフガニスタン内部の情報が欲しいので、進んでいくでしょう。

それから、国境の監視は続けていきたい。

特に、中国とアフガニスタンの国境沿いにある「ワハン回廊」の監視を強めたい。

そのためにタジキスタンとの協力は進んでいくでしょう。

もしかしたら現地の軍への指導や訓練での協力も将来的にはありえると思います。

Q 日本を含む国際社会は中国の関与をどうとらえるべき?

国際社会としては、中国の関与は、諸刃の剣のような部分があります。

つまり、アメリカがアフガニスタンにこれまでのように関与できない以上、この地域の安定を誰が担っていくのかという問題は大きくなるわけで、そこを中国がこれまでにない負担を背負って、安定化のために頑張ってやってくれるならば、それ自体はそれほど悪いことではありません。

一方で懸念されることは、穏健化しないタリバン政権を中国がバックアップし続けることです。
これはアフガニスタンの人々に対して非常に抑圧的な政権になるわけで、懸念される材料です。

さらに、中国がアフガニスタンを安定化させ、かつ周辺国の利害を調整してまとめ上げていくということを成し遂げた場合に、地政学的には非常に問題です。

ある意味では中国の鉄壁の影響力圏になってしまう恐れがあります。

ユーラシア大陸に、中国を中心とした影響力圏ができあがってしまい、そこに対してアメリカや日本はあまり手出しができない、そうした状態が生まれてしまう可能性はあります。

したがって、仮に中国が望むようにすべてうまくいった場合には、中国外交の大きな転換につながっていく可能性もあります。

イスラム主義勢力タリバンが再び権力を握ったアフガニスタンからアメリカ軍が撤退を完了して9月30日で1か月となります。

タリバンの統治が進む一方、過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織によるとみられる攻撃が相次ぎ、市民が犠牲になるなどアフガニスタンの安定は見通せない状況です。

アフガニスタンでは8月30日、アメリカ軍の撤退が完了し「アメリカ史上、最も長い戦争」とも言われた20年におよぶ軍事作戦に終止符が打たれました。

再び権力を握ったタリバンは治安の確保に力を入れる一方、誘拐事件の容疑者とされる男らの遺体を、見せしめだとして公衆の前でクレーンでつるすなど、かつて人々をおそれさせた統治をほうふつとさせる行為も見せていて国内外から懸念の声が出ています。

一方、東部のジャララバードではタリバンと対立するISの地域組織によるとみられる攻撃が相次ぎ、タリバンの車両が爆発し子どもを含む市民も巻き込まれ犠牲が出ています。

また、タリバンの強硬派のグループは国際テロ組織アルカイダとの結び付きがあるとされ、アフガニスタンが再びテロの温床になるのではないかという国際社会の懸念にもつながっていて、アフガニスタンの安定は見通せない状況です。

アメリカ軍の撤退完了から1か月となった30日、首都カブールの中心部ではタリバンの戦闘員がパトロールする中、多くの人が行き交う姿が見られました。

50歳の男性は「アメリカは私たちを裏切り置き去りにした。今は支援もなく現金も銀行に凍結されている。人々は貧しく仕事もない」と不満を訴えました。

また57歳の男性は「タリバンが統治を始めてまだ1か月余りしかたっていないので、国内でのアルカイダやISの状況は把握できていないと思われ心配だ。統治の体制が整い平和になることを望んでいる」と話していました。

アフガニスタン情勢に詳しい中東調査会の青木健太研究員は、現在のタリバンの統治について「軍事的な勝利を収めたあと、これまで目標としてきたイスラム的統治を実現しようとしていて妥協や譲歩の姿勢は見られない」と述べました。

その理由として「タリバンは数万から十万単位の構成員からなる大きな組織で、イスラムの教えに反する問題には末端の構成員からの強い反発が予想される。さらに軍事部門が政治部門に対して強硬な姿勢を貫くよう圧力をかけているとみられ、タリバンが融和的な姿勢を示すことが難しいという構造的な問題がある」と指摘しました。

今後については「タリバンとしては一部の親しい国からの協力が得られれば、前政権への権力の分与などで妥協する必要はないと判断してもおかしくない。タリバンが強硬な姿勢を貫き国際社会と平行線が続く可能性が高い」と分析しました。

また、過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織によるとみられる攻撃が相次いでいることについては「ISの地域組織はタリバンと敵対関係にあり、今後も攻撃を散発的に起こす可能性はある。一方で、すでに国内の支配領域を失っているとも見られていて軍事的に大規模な攻撃を連続して引き起こすような能力はないだろう」と分析しました。

そして「タリバンアメリカはISに対する脅威の認識が共通している。今後両者が何らかの形で協力するということも想定される」と述べ、ISの排除に向けてアメリカとタリバンが協力する可能性にも言及しました。

そのうえで「20年前と比べて活動が低迷しているとはいえ、国際テロ組織アルカイダとの関係についても疑わしいと言わざるをえない。アフガニスタン国内に潜伏し国外に対して脅威を与えるという懸念はぬぐえず、引き続き十分な警戒が必要だ」と述べました。

アフガニスタンの和平や人道支援などにあたるUNAMA=国連アフガニスタン支援団で去年までおよそ4年間トップを務めた山本忠通氏は、30日、日本記者クラブで記者会見を開きました。

この中で「もともとタリバンは統率がとれた組織だったが、今は軍事指導者と政治委員会との間で、どちらが重要な役割を果たしたかという議論があり、まとまる様相を見せていない」とタリバン内部の対立を指摘しました。

また「アルカイダの要人が入国し、タリバンの関係者が迎えに行ったという情報や、ISがタリバンの中でも特に過激な不満分子を勧誘し始めたという情報もある」と懸念を示しました。

一方アフガニスタンの内外で『今のような混乱した時期には、タリバンにチャンスを与えるべきではないか』という意見もある」と指摘しました。

そのうえでタリバンの勝利をそのまま認めることは難しいが、アフガニスタンの安定は地域全体の安定のために重要だ。放っておけばテロ組織が復活するおそれもあり、アフガニスタンのことを第一に考えて何をすべきかを見極めなければならない」と述べ、アフガニスタンの安定に向けて国際社会が足並みをそろえ、特に人道支援の分野では今後も支援を継続していく必要性を訴えました。

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