Q.
名古屋にはなぜいらっしゃっていたのですか?
男性.
プライベートでした。前日の日曜に一泊して、月曜日の朝に帰る予定だったのですが、その帰りにバスで事故に遭いました。
Q.
このバスには、たびたび乗っていたのですか?
男性.
そうですね。往復で10回は乗ってると思います。
毎回このバスを利用していたので「別に大丈夫だろう」と、なんとも思っていませんでした。事故が起きるとは思っていませんでした。
Q.
どのあたりに座っていたのですか?
男性.
前から3列目あたりの右側の窓側でした。たぶん平日というのもあったからでしょうけど、乗客は全然いませんでした。
自分は窓からの景色をみて、ぼーっとしていたと思います。
Q.
運転手の方はどのような様子でしたか?
男性.
別におかしな感じはありませんでした。
普通でしたよ。特に印象に残る感じもなく、アナウンスの声とかも普通でした。
Q.
ドライブレコーダーの映像からは少なくとも数百メートル手前から時折、左に寄れるような不安定な走行を繰り返していたとみられています。
男性.
自分は特にふらついてるとは感じませんでした。もし運転がおかしいと感じたら、たぶん他の乗客も騒いだと思うんですよね。
もし「蛇行」とかしていたのであれば、さすがに気付くでしょうし。左に寄れていたとしても「ただの車線変更なのかな」くらいにしか思わないですしね、乗っている人は。
ぶつかるまで異変は感じませんでした。
だから本当にまっすぐにバスが突っ込んだんじゃないですかね。
Q.
スピードはどうでしたか?
男性.
スピードは今にして思えばですが、ちょっと出てたのかなという気がします。
Q.
事故が起きた瞬間はどんな感じだったのですか?
男性.
本当に何が起きたのかわからなくて。
「事故が起きた」とかじゃなくて何が起きたのかがわからないというのが、その時感じたことでした。
衝撃というより、結構、大きめの音がしたかなというのは覚えてます。
何かにぶつかる、本当に大きな音。
衝撃はすごかったのかなあ、まあでもすごかったんでしょうね、たぶん。
バスはぶつかってすぐに横転して、自分はどこかに体を打ちつけてしばらく動けなかったので。
何か、ものにしがみついて、なんとか放り出されずに済んだのですが。
ひじかけとか、そういうのにしがみついて。
でもやっぱりどこかにぶつかったんでしょうね、気付いたら、しばらく体が動きませんでした。全身がむち打ちみたいな感じで。
周りから声があがったりというのもなかったと思うのですが、自分もちょっとだけ意識を失ったのかもしれません。
Q.
事故直後の運転手の様子は見えましたか?
男性.
運転手さんは、ぐったりして微動だにしなかったですね。
意識がなかったと思います。
後ろから見ていたので、けがなどはわかりませんでした。
たぶん座ったままの状態だったように思います。
Q.
周りの人たちは、逃げ始めていましたか?
男性.
そうでしたね。逃げていましたね。
自分が気付いた時は自分と、あと乗客がもう1人いました。
運転手さんと自分以外に乗客がもう1人しかいなかったと思います。
その乗客の方も意識がありませんでした。
自分の近くに倒れていましたので、たぶん近くの席だったんだと思います。
通路に倒れていました。
たぶん年配の人だったと思います。
ぱっと見た感じ、けがをしているようには見えなかったんですが、声をかけたら、「うー」といった感じで。
一緒に逃げようとしたんですが、その方はもう全然動けなくて。
自分もまともに動けるような状況じゃなかったんです。
本当に自分も立つのが精いっぱいな感じでした。
その方を引っ張っていこうと思ったんですが全然動かなくて。
その人を助けようと思って、最後まで頑張っていたんですが、そのうちに火がついてきました。
燃料に引火して、火が燃え上がったような感じでした。
車内に黒煙が充満してきて、うしろから声がしたんですよ。
たぶんバスの外からだったと思うのですが「お前も早く逃げろ!」みたいな感じで、「死ぬぞ!」みたいな感じで。
自分も煙をちょっと吸い込んでしまって、マスクはしていたのですが、隙間とかから入ってきたのか、よくわからないんですが、自分も吸い込んでしまって、すぐ立ちくらみじゃないけど、クラクラして、これはちょっとやばいなと思って、しかたなくその場を離れたんです。
助けなきゃと思って。
動けない人いたんで、最後まで助けようと思ったんですが、最終的に危険な状況になってしまって。
自分も万全な状態じゃありませんでした。
残念でした。
助けられたかもしれなかったので。
Q.
火はすぐに上がったのですか?
男性.
いきなり火がつきました。
気付いたら小さな火が最初についていて、何か燃料みたいなものに引火して徐々に広がった感じでした。
割と運転席の近くのところからだったと思います。そして徐々に燃え広がっていきました。
Q.
そのあとバスの後部の窓から出られたのですか?
男性.
何か亀裂というか、穴のようなものが開いていて、そこから逃げました。
自分がそこから出る時には、確か誰かに引っ張ってもらったような気がします。
Q.
事故から火が出るまで、ご記憶ではどのくらいの時間でしたか?
男性.
数分ですね。5分たたないくらいだと思います。
Q.
外に避難できたあとは、どんな状況だったのですか?
男性.
バスから黒い煙がでて、そこからだんだんと火の勢いが強くなってきて、あと数十秒遅かったら自分も危なかったのかなという感じでした。
燃える勢いはすごかったです。
1回爆発したので、それでちょっとびっくりしました。
脱出してすぐの通路のとこに座ろうと思ったんですが、火の勢いが収まらないので、もうちょっと離れたほうがいいかと思って、もっと後ろの方まで離れました。たぶん先に脱出した人たちもいました。座り込んでいる人もいました。
Q.
もうすぐ1週間ですが、気持ち的にはだいぶふだんの生活に?
男性.
そうですね、落ち着いてきたかなって感じですかね。
Q.
今回、事故に遭われて思われたことはありますか。
男性.
自分には関係ないと思っていたことが実際にこうやって起きて、いつ何が起こるかわからないというか、うん。なんとも言えないですよね。
Q.
本当にぎりぎりまで乗客の男性を何とか助けようとされました。
男性.
脱出したあとに、手を差し伸べてくれた人から「大丈夫だ。おまえはよくやった」といった感じのことを言われました。
そのひと言があったから、ちょっと救われたという気がしています。
Q.
バスの運行会社に対しては何か思われることありますか?
男性.
事故が起きないようにというのは本当に、せつに思います。安全管理とか徹底してほしいです。二度と事故が起きてほしくないですし、どうすれば事故が起きないのか本当に徹底してほしいです。