ロシアのプーチン大統領は18日、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域からの住民のロシア国内への避難を調整するために非常事態相を派遣した。
ロシア通信(RIA)によると、大統領府のペスコフ報道官は「プーチン大統領は非常事態相に直ちにロストフ地域に赴き、(避難してくる住民のための)宿泊施設、食事、医療体制など、必要なものを全てを整えるよう命じた」と述べた。
親ロシア派指導者は親ロシア派の「ドネツク人民共和国」から約70万人をロシアに退避させることを計画していると発表した。
これに先立ち、ドネツク人民共和国を率いるデニス・プシーリン氏はソーシャルメディアで「18日時点で、ロシア連邦への大規模で集中的な避難が計画された」と表明。避難する住民にロシアが宿泊施設を提供することで合意したとし、「女性、子ども、高齢者を優先して避難させるべき」とした。
ロシアのインタファクス通信は「ドネツク人民共和国」の議会関係筋の話として、数十万人の住民がドネツクからロシアのロストフに避難すると報じた。
ドネツク市にいるロイターの目撃者によると、現時点では住民が避難する様子は見られていない。市内ではサイレンの音が鳴り響いており、インタファクス通信によると、「ドネツク人民共和国」の住民は現地時間午後8時(GMT1700)からバスで避難を開始すると報じた。
近隣の「ルガンスク人民共和国」の指導者も住民のロシアへの避難を表明した。
ロシアのラブロフ外相は18日、ウクライナ東部ドンバス地域で砲撃が急激に増加していることに警戒感を示すとともに、欧州安保協力機構(OSCE)の特別監視団がウクライナの停戦合意違反を見逃していると非難した。
ラブロフ外相は記者会見で「昨日と一昨日、ミンスク合意で禁止されている武器を使った砲撃が急増しているとの報告を非常に懸念している」と指摘した。
一方、ウクライナ軍は18日、ミンスク合意違反を否定。ロシア政府が情報戦を仕掛け、ウクライナが市民を攻撃しているという虚偽の情報を流していると非難した。
ロシアのプーチン大統領がウクライナ国境付近に自国軍を集結させている中で、フランスとドイツは米国の支援の下、両国が関わった「ミンスク合意」の履行こそが外交的解決に向けた最大のチャンスだと主張している。しかし、この合意は複雑かつ争点も多い上に、ウクライナのアイデンティティーと主権を巡る闘いの根源に触れるものでもある。ロシア側はウクライナ侵攻の意図はないと繰り返し表明しているが、米国や他の西側諸国は攻撃の可能性があるとして警戒を解いていない。
1、ミンスク合意締結の経緯
ミンスク合意はウクライナ東部で2014年に勃発した軍事衝突の停止を目指して結ばれた。紛争に至る経緯は以下の通り。親ロシア派だった当時のウクライナ大統領ヤヌコビッチ氏が、プーチン氏の圧力を受け、欧州連合(EU)との通商協定調印を見送った。こうした状況に怒った市民が首都キエフで大規模なデモを行い、ヤヌコビッチ政権は退陣。しかしその後の新政権に対しても抗議デモがウクライナ東部と南部で起きた。ロシアの支援を受けた分離派武装勢力はこの間に東部のドネツク、ルガンスク両州を支配した。この2州に軍を投入したウクライナによると、ロシア軍が戦闘に直接介入し、ウクライナ軍に決定的な打撃を与えた(ロシアは関与を否定)。この紛争の解決を目指した合意が、隣国ベラルーシの首都ミンスクで結ばれたミンスク合意だ。
2、ミンスク合意の中身
2014年9月に締結された「ミンスク1」は12項目から成る。欧州安保協力機構(OSCE)による停戦監視や、分離派が支配する地域への暫定的な特別地位の付与、地方選挙の実施、当事者の恩赦などが含まれている。しかし、停戦合意は15年1月に完全に破られ、その1カ月後に「ミンスク2」がまとめられた。新たな合意は13項目で構成されている。内容は1より詳しいが、問題解決の手順や政治的要件に関する文言は1と同様に分かりにくいものとなっている。
3、なぜ履行がそれほど困難なのか
一つの問題は、ロシアが自国は紛争の当事者ではなく、そのため履行の責任を負わないとの立場を取っていることだ。しかし、ロシアはミンスク合意成立のための交渉を行っており、ウクライナ側はロシアに履行義務があると主張している。状況をさらに困難にしているのは、ミンスク合意がウクライナの憲法を改正し、ドンバス(ドネツク、ルガンスク両州)に特別な地位を与えることを規定している点だ。しかも、親ロシア派が実効支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の指導者らとの「協議・合意により」行う必要があるとしている。また最も大きな争点とみられるのは、特別な地位を付与する地域の範囲が定まっていないことだ。分離派指導者はドネツク、ルガンスク両州の全域が含まれるべきだと主張。ウクライナ政府は現在も両州の半分余りの地域を管轄下に置いているが、それを手放すことになる。
4、ロシア側の解釈
ロシアはミンスク合意について、ウクライナは署名済みであり同国が履行義務を負っているとみている。ドンバス地方をウクライナ政府の管轄下に戻す一方、同地域住民の安全と権利を確実に保障すべきだと主張。今やこの地域に住む約70万人はロシアのパスポートを発給されており、複数の推計によるとその数は人口の20-40%に当たる。ロシア政府はまた合意がドンバス地方に広範な自治権を付与し、ウクライナを連邦化する手段であると見なしており、それが実現した場合、同国が北大西洋条約機構(NATO)やEUといった西側諸国の機関に加盟するのが事実上不可能になると考えている。
5、ウクライナ側の解釈
ウクライナはミンスク合意が要求する「分権化」に関する法を可決した。しかし、その過程で同国がロシア政府の代理と見なす分離派と交渉することはなかった。ロシアはそれを理由に受け入れを拒否している。ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記は1月にAP通信に対し、「ロシアに銃口を突き付けられる中で署名した」ミンスク合意を履行すれば、国家を破壊するだろうと述べた。
6、事態の解決は可能か
ウクライナがロシア政府に受け入れられる方法でミンスク合意を履行することは、NATOに加盟しないと約束することより難しいかもしれない。限定的に履行に取り組んだ15年には、キエフで暴力を伴う抗議活動が起きた。21年12月に行われた世論調査によれば、国民の75%はミンスク合意は修正ないし放棄すべきだと回答。履行すべきだとの回答は12%にとどまった。
原題:Why Minsk Accords Are Murky Path for Ukraine Peace: QuickTake(抜粋)
ウクライナ東部では、政府軍と、一部の地域を事実上支配する親ロシア派の武装勢力による戦闘が再燃し、停戦監視にあたっているOSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構は、今月15日夜から16日夜にかけて、停戦合意に違反して爆発や銃撃が600件近くあったとしています。
こうした中、武装勢力の指導者プシリン氏は18日、「ウクライナ政府は戦闘態勢に入り、力ずくでこの地域を奪還する準備を整えている」と主張し、国境を接するロシア南部のロストフ州に住民を避難させると明らかにしました。
これに対して、ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、「真っ赤なうそだ」と否定したうえで、ロシアが意図的に流した情報だと主張し、非難の応酬になっています。
ウクライナ東部の状況についてロシアのプーチン大統領は18日、記者会見で「情勢は緊迫している」として、ウクライナ政府に停戦合意の履行を迫りました。
また、「ウクライナでは、人権が大規模かつ組織的に侵害され、ロシア語を話す人々への差別が法制化されている」と述べ、ウクライナ政府を批判しました。
この地域をめぐってアメリカのバイデン政権は、ロシア系住民がウクライナ軍から攻撃を受けたという虚偽の情報が拡散し、ロシアがウクライナへの軍事侵攻の口実にするのではないかと警戒を強めています。
ロシア国営メディアは、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派が事実上支配している地域で住民たちがバスに乗るなどして次々に避難を始めているとする様子を伝えています。
バスには、厚手の上着を着た女性や子ども、高齢者などが大勢乗っていて、中には、不安そうな表情を浮かべている人もいます。
ロシアへの避難について明らかにした親ロシア派によりますと、ドネツク州だけでおよそ70万人を避難させる計画だとしています。
一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は18日、プーチン大統領が避難してきた人々に対して、寝泊まりできる場所や食事の提供を行い、医療支援なども整えるよう当局に指示したほか、支援金として1人当たり1万ルーブル、日本円にしておよそ1万5000円を支給すると決めたことを明らかにしました。
ウクライナ東部の親ロシア派当局者は18日、ドネツク市中心部の政府機関が入る建物のそばで、自動車が爆発したと明らかにした。爆発したのは「ジープ」で、爆発時に車内に誰もいなかったとしている。
「ドネツク人民共和国」のメディア機関は、住民に対し落ち着いて行動し、できるだけ市内を移動しないよう呼び掛けている。
目撃者はロイターに対し、ジープは完全に破壊されていると語った。ただ、爆発で負傷者は出ていないもよう。
これに先立ちタス通信とロシア通信(RIA)が親ロシア派地域当局者の話として、ドネツク市中心部で自動車が爆発したと報じていた。
ウクライナ国家安全保障・国防会議(NSDC)のオレクシー・ダニーロフ書記は18日、ロシアがウクライナ東部で挑発行為を行い、ウクライナ軍の反撃を誘発しようとしているとして非難した。同時に、ウクライナは危機の平和的な解決を望んでいるとも述べた。
ダニーロフ氏は「ロシアが今日、親ロシア派を通してドネツクとルハンスク地域で実施したことは全て、ウクライナ軍の反応を誘発するための挑発行為だ」と指摘。「武力を行使して領土を開放する命令は出ていない」と述べた。
その上で、ロシアによる本格的なウクライナ侵攻はないとの見方を改めて示しながらも、ウクライナは一段の挑発に対する準備は整えていると述べた。
ウクライナ国家安全保障局の国防情報部はこの日、ロシアの特別部隊がドネツクの多数のインフラ施設に爆発物を仕掛けたとの情報を入手したと表明。「(親ロシア派が実行支配する地域の)状況を不安定にし、ウクライナによるテロ行為を非難する根拠を作り出すことを目的としている」と公式ツイッターに投稿した。
ロシア連邦保安局(FSB)からこの件に関するコメントは得られていない。
インタファクス通信によると、ウクライナ東部の親ロシア派指導者はウクライナ政府との緊急協議を拒否。ただロシア通信(RIA)は、ドネツクの親ロシア派は何らかの提案が示されれば協議に応じる姿勢を示していると伝えている。
ウクライナ東部の親ロシア派はこの日、ドネツク市中心部で、政府機関が入る建物のそばで自動車が爆発したと明らかにした。爆発したのは「ジープ」で、爆発時に車内に誰もいなかったという。
こうした中、親ロシア派が実行支配する東部の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の指導者は住民のロシアへの避難を表明。ロシアのプーチン大統領は、住民の避難を調整するために非常事態相をロシアのロストフに派遣した。
ウクライナの北部と国境を接するベラルーシでは、今月20日までの日程でロシアとの合同軍事演習が行われています。
こうした中、プーチン大統領は18日、モスクワを訪れたベラルーシのルカシェンコ大統領と会談しました。
その後の共同記者会見でプーチン大統領は、軍事演習は第三国に脅威を与えるものではないとしたうえで、「NATO=北大西洋条約機構の軍事活動が国境の外で活発になっていることから、両国の安全を確保するために必要な措置をともに講じることで合意した」と述べ、欧米をけん制しました。
これに続いて、ルカシェンコ大統領も、「われわれは戦争を望んでいない」としたうえで、ウクライナをめぐって緊張を高めているのは欧米だと主張しました。
両首脳は、19日に行われる軍事イベントにそろって出席することも明らかにし、プーチン大統領としては、ベラルーシとの軍事的な結束をアピールし、連携して欧米に圧力をかけるねらいがあるものとみられます。
ベラルーシの首都ミンスクの市内では、緊迫した様子は見られず、市民からは「ここから攻撃が行われるとは思わない。ロシアもベラルーシも最近、誰も攻撃したことはない」とか、「アメリカは、自分たちが抱える過ちをごまかそうと、戦争をあおっている。ベラルーシ、ロシア、ウクライナ、ヨーロッパの誰もが戦争など望んでいない」といった声が聞かれました。
一方、20日までの合同演習が終われば、ロシア軍はベラルーシから撤収するとしていますが、「ロシア軍の半分ぐらいはひそかに隠れて、そのままベラルーシ国内に残るのではないか」と話す人もいました。
アメリカのブリンケン国務長官は18日、ドイツで開かれているミュンヘン安全保障会議に出席しウクライナ情勢について、「ロシアはウクライナの国境周辺から軍を撤収すると言ったが行われていない。それどころか、国境周辺では侵攻に投入されうる精鋭部隊などが増強されている」と述べました。
そのうえで、ウクライナ東部でロシアが後ろ盾となっている親ロシア派の武装勢力が17日に、「ウクライナ軍から砲撃を受けた」と主張したことを念頭に、「われわれが目の当たりにしているのは、偽の挑発行為を作り出し、それに対応しなければならないというシナリオの一部だ。最終的にはウクライナへ侵攻するというものだ」と述べ、ロシアが侵攻の口実を作るため、虚偽の情報を拡散していると指摘し、強い警戒感を示しました。
ウクライナの国境周辺に展開しているロシア軍について、OSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構のアメリカの大使は18日、最大で19万人に増強されたとみられるという分析を明らかにしています。
またブリンケン長官は、「この事態に対処するうえで、われわれが持つ最大の力の根源は結束だ」と述べ、国際社会に対し、結束を呼びかけました。
ミュンヘン安全保障会議で各国の首脳らに先立って演説した国連のグテーレス事務総長は、ウクライナ情勢をめぐって、関係国の間の誤解や意思疎通の不足が原因で事態が制御できない状態に陥るおそれがあると指摘したうえで「すべての問題は外交の枠組みを通じて取り組まなければならない」と述べ、関係国に対し、緊張の緩和を目指して対話を進めるよう訴えました。
ミュンヘン安全保障会議は、世界各国の首脳や閣僚などがドイツ南部のミュンヘンに集まって1960年代から行われてきたもので、これまでもロシアからはプーチン大統領やラブロフ外相などが出席していました。
しかし今回、ロシアは代表団の派遣を見送りました。
この国際会議をめぐっては15年前の2007年、プーチン大統領がNATO=北大西洋条約機構の東への拡大を非難する演説を行った場としても知られています。
当時、プーチン大統領は「NATOは約束を破りわれわれの国境に迫っている」と述べてアメリカなどを激しく非難しました。
ロシアが、ウクライナ南部のクリミア半島を一方的に併合した翌年(2015年)のミュンヘン安全保障会議でも、今回と同様にウクライナ情勢が主な議題となり、欧米とロシアとの間で激しい非難の応酬となりました。
今回、ロシアが代表団を派遣しないことについて、ロシア外務省のザハロワ報道官は今月9日、「近年、この会議はその包括性と客観性を失っている」と述べています。
アメリカのバイデン大統領は18日、ホワイトハウスで演説し「ロシアが1週間か数日のうちにウクライナを攻撃しようとしていると信じるに足る理由がある。標的は、280万の罪のない市民が暮らす首都キエフだと思う」と述べました。
そのうえで記者から「プーチン大統領が侵攻する決断をした兆候はあるのか」と質問されたのに対し「現時点で、プーチン大統領は決断をしたと確信している」と述べ、軍事侵攻はいつあってもおかしくないと強い危機感を示しました。
また、ウクライナ東部で爆発や銃撃が相次ぎ、ウクライナ政府側と親ロシア派の双方が、相手に責任があると主張していることについて「軍事行動を正当化するためのロシアのかねてからの手法だ」と述べ、ロシアが侵攻のための口実を作ろうとしていると非難しました。
ロシア政府はウクライナに軍事侵攻する意図はないとしていますが、バイデン政権としては、機密情報や分析をあえて開示することで機先を制し、ロシアの軍事的な動きを封じ込めたい思惑があると見られます。
一方でバイデン大統領は「ロシアはまだ外交の道を選ぶことができる」と述べ、外交を通じた解決を強く呼びかけました。
来週には米ロの外相がヨーロッパで対面して会談する見通しで事態打開のきっかけとなるか、注目されます。
緊張が続くウクライナ情勢をめぐってバイデン大統領は18日、カナダやヨーロッパの国々などの首脳と電話で会談しました。
会談に参加したのは、イギリス、フランス、ドイツ、カナダなどNATO=北大西洋条約機構の同盟国などの首脳です。
会談後、アメリカのホワイトハウスは声明を発表し「首脳らはロシアが軍を増強し続けていることに深い懸念を表明し、ウクライナの主権と領土の保全への強い支持を確認した」としています。
そのうえで「緊張緩和に向けた外交努力を継続するとともに、ロシアが事態をエスカレートさせることを選んだ場合に備えて、連携した迅速な経済制裁を科す用意があることで一致した」として、結束をアピールしました。
今週、ウクライナの軍や銀行がサイバー攻撃を受けたことについて、アメリカのホワイトハウスでサイバーセキュリティーを担当するニューバーガー大統領副補佐官は「ロシアが関与しているとみている」と述べました。
行われたサイバー攻撃は大量のデータを送りつけることでシステムをダウンさせる「DDoS攻撃」と呼ばれるものだということで、このうち銀行がねらわれたものについては「GRU=ロシア軍参謀本部情報総局がウクライナ国内のIPアドレスやドメインに大量の情報を送りつけていたという情報がある」としています。
ニューバーガー副補佐官はウクライナ政府の迅速な対応によりサイバー攻撃による被害は限定的だったとしたうえで「今後、ロシアがさらなる軍事的な行動とともに大規模なサイバー攻撃をしかけることもありうる」と述べ、警戒感を示しました。
今週確認されたウクライナの金融機関へのサイバー攻撃について、イギリス政府は、ロシア国防省のGRU=軍参謀本部情報総局が関与していたとして、ロシアを強く非難しました。
外務省の報道官は「サイバー攻撃は、ロシアがウクライナの主権を無視し、攻撃的な行為を行っていることを改めて示すものだ。こうした破壊的な行動は容認できない」などとして、ウクライナを引き続き支援していく姿勢を強調しました。
G7=主要7か国の議長国ドイツは、今月24日に緊急の首脳会議をオンライン形式で開くと発表しました。
緊張が続くウクライナ情勢をめぐって協議を行い、事態の沈静化に向けて各国の連携を確認する見通しです。
これに先立って19日には、ドイツ南部のミュンヘンで緊急のG7外相会合が予定されています。
G20の財務相・中央銀行総裁会議は、インドネシアのジャカルタで今月17日から開かれ、現地では財務省の神田財務官が、オンラインでは日銀の黒田総裁らが参加しました。
会議で採択された共同声明によりますと、ウクライナ情勢について「発生中の地政をめぐる緊張」と位置づけたうえで、「経済・金融の主要なリスクを注意深く見ていく」としています。
また世界経済の状況について「回復は継続している」とする一方、「新型コロナの感染拡大や変異株の出現は、回復のペースに影響を与えている。供給の混乱や需給のミスマッチ、エネルギー価格の上昇は多くの国においてインフレ圧力を高めており、世界経済の見通しに潜在的なリスクをもたらしている」と指摘しています。
さらに、インフレに対処するために欧米などが金融引き締めに動いていることを念頭に、「中央銀行は、政策スタンスに関する明確なコミュニケーションを継続する」として、新興国など周辺の国や地域の経済に与える影響に注意を払っていく必要があるという認識で一致しました。
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が18日、ジャカルタで開催され、2日間の討議を経て閉幕した。採択した共同声明の文言を巡り、ロシアと中国が世界経済に対する地政学的リスクに関する表現を弱めるよう要請。草案にあった「現在の」緊張という表現が削除された。
ジャカルタでの17─18日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で作成された声明の草稿を巡り、ロシアと中国が表現を弱めるよう要請し、地政学的緊張が世界経済の見通しを曇らせているとの言及の前にあった「現在の」という表現を削除した。複数の関係筋が明らかにした。インドネシアで撮影(2022年 ロイター)
会議はオンライン、対面の両方の形式で実施された。関係者によると、今回の会合は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生した2020年以降で最も緊迫した雰囲気に包まれたという。また、貧困国の債務再編や炭素価格の設定などの問題に関する文言を巡っても意見の相違があり、討議が長期化した。
ロイターが入手した草案では、G20は「(現在の)地政学的緊張から生じるものを含む」リスクを監視すると書かれていたが、共同声明では「われわれはまた、発生中の地政学的緊張やマクロ経済、金融の脆弱性によるリスクを含め主要なグローバルリスクを引き続き監視する」と記された。
関係者によると、ロシアと中国が緊張を巡る文言に異議を唱えたという。
このあいまいな表現は、主要7カ国(G7)の財務相が14日発表した共同声明とは大きく異なる。ロシアがウクライナに侵攻すれば、「大規模な」経済的影響に直面することになると表現していた。ロシア、中国はともにG7のメンバーではない。
<債務再編の停滞>
今回の会議では、G20の債務再編の枠組みが停滞していることを巡る意見の相違も目立った。
最終的な共同声明では、再建を求める貧困国に対する債務返済の即時停止と一部の中所得国への支援拡大という国際通貨基金(IMF)および世界銀行の提案に賛同することはできなかった。
代わりに枠組みを「適時かつ秩序だった方法で連携して実施するための取り組みを強化することへのコミットメントを再確認する」としたが、具体的な内容は示されなかった。
これに先立ち、関係者は二国間公的債務で世界最大の債権国となっている中国が、全面的な債務削減を受け入れるという考えに難色を示したと述べた。
世界銀行のマルパス総裁はG20財務相・中央銀行総裁会議後に行われたミュンヘン安全保障会議で、G20が発展途上国で増大する債務超過への対応を「前進させる手段を特定できていない」ことを懸念していると述べた。
<信頼性への疑問>
インドネシアのスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相は、気候変動対策としての炭素に価格を付けることへの支持に慎重な国があることや、パンデミックで債務負担が悪化した低所得国をどう支援するかが最も難しいテーマになっていると指摘。「G20の評判と信頼性にも関わる」と述べた。
このほか、共同声明では「パンデミックによる影響に対処するため、引き続き全ての利用可能な政策手段を用いる」とした一方、「マクロ経済政策の余地がより狭く、不均等となる可能性が高まっている」と警告した。
物価面については「供給の混乱や需給のミスマッチ、エネルギー価格を含めたコモディティ価格の上昇は、多くの国々においてインフレ圧力の高まりにも寄与し、世界経済の見通しに潜在的なリスクをもたらしている」とした。
さらに「中央銀行は、政策スタンスに関する明確なコミュニケーションにコミットすることを継続しつつ、必要なところにおいては、物価の安定を確保するため、それぞれのマンデートに沿って行動する」とした。
また、国際法人税の新ルールを2023年に発効させるべく取り組む方針も示した。
G20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議を受けて議長国・インドネシアの財務相は、ウクライナ情勢について「世界経済の回復の見通しを左右する」として、コロナ禍からの回復途上にある世界経済への影響に懸念を示しました。
会議のあと記者会見したインドネシアのスリ・ムルヤニ財務相は、欧米各国とロシアが参加した今回のG20で、ウクライナ情勢についてどのような議論が行われたか詳細は明らかにしませんでしたが、「地政学的な問題は世界経済の回復の見通しを左右する。回復の努力を妨げることがないように、この問題に取り組む必要がある」と述べて、世界経済への影響に懸念を示しました。
一方、同じ会見の中でインドネシアの中央銀行のペリー総裁は、アメリカをはじめ、各国が金融引き締めを急いでいることについて、「G20各国は、よく調整して計画し、コミュニケーションをとったうえで金融正常化を進める」と述べ、新興国からの資金流出などリスクへの対応を進める必要があるという認識を示しました。
世界最大級のエネルギー輸出国であるロシアは、2021年の経済が過去10年余りで最高の成長率を記録した。原油高と個人消費の伸びが後押しし、新型コロナウイルスの感染拡大による前年のリセッション(景気後退)から回復した。
ロシア連邦統計局によると、昨年の国内総生産(GDP)は前年比4.7%増加した。ブルームバーグが調査した市場予想は4.5%増。政府の景気刺激策や世界的な景気回復、原油高が成長を押し上げた。20年は新型コロナ対策の行動制限などが響き、ロシア経済は2.7%縮小していた。
ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は先週、コロナ禍からの回復期は終わり、今や経済は過熱しつつあると警告した。中銀は過去1年間に政策金利を合計5.25ポイント引き上げたが、それでもインフレ率は中銀目標の2倍を超えて推移している。同総裁は今年の成長率が2-3%に鈍化する可能性が高いとし、来年はさらに減速するとみている。ウクライナを巡り緊張が高まる中、西側諸国がロシアに新たな制裁を科す恐れがあることも見通しを曇らせている。
原題:
Russian Economy Grew 4.7% in 2021, Quickest Pace Since 2008(抜粋)
eigokiji.cocolog-nifty.com
プーチンと彼の二人だけの長い会談後、記者会見におけるマクロンの説明は、ウクライナに関する英米の支配的言説を、はっきりとは侮辱できないフランス大統領のねじれを現していた。ほとんど婉曲とは言えない言葉で、ヨーロッパの破綻した安全保障構造に関する、あらゆる主張や、ヨーロッパでの戦争を招きかねないロシアにとって毒性の実際のリスクに関して、彼はロシアと意見が一致した。
ヨーロッパにおける新たな安全保障の枠組みが絶対に必要だとマクロンは、はっきり述べた。(アメリカを刺激しないようにという彼の配慮にもかかわらず、彼は明らかに非NATOの「新たな」枠組みをさしていた)。彼はロシアがウクライナを侵略する意志を持っていると思わないとも言って、ワシントンの言説をきっぱり否定した。NATO拡大に関し、間違いがあったと補足した。
要するに、差し迫った戦争というバイデンの言説と全く食い違う意見をマクロンは言ったのだ。ミンスク合意のキエフによる完全な遵守と、ドンバスの完全解決というプーチンの「一インチも」ゆずらぬ姿勢を素直に受け入れ、彼は明らかにイギリス-アメリカと一部ヨーロッパ諸国の激怒の噴出を覚悟で行動している。境界線での停戦を強化するため、フランス大統領はその後キエフを訪問した。予想通り、今米英報道機関はミンスク2をキエフの頭に突きつけられた現状を破壊し、内戦を引き起こす武器として歓迎している。
彼の発言からして、どうやらマクロンはヨーロッパに戦争の重大な危険をもたらしているウクライナ危機は逆説的にカロリング朝の恐怖の核心ではないことを理解している。
同じことを中国がはっきり言っているのは、ひときわ目立つ。権威ある環球時報が、論説で、軍事ブロックの統制を強化し、アメリカが率いる組織にヨーロッパ国家を囲い戻すため、ウクライナでアメリカが対立を扇動しているのだと警告している。ヨーロッパをアメリカと、中国をバリケードで包囲し、国境内に封じ込めるという最新の課題のために共同戦線が必要なアメリカの次の段階に向かってを導く上で、ウクライナは格好の転換点なのだと中国が理解しているのは確実だ。
だからヨーロッパの将来を決める重要な決定が今行われているのだ。一方で(ペペ・エスコバールが約二年前に述べた通り)「ロシアと中国の政策目標は、ユーラシア大陸を、マッキンダー風に、史上最大の地政学的提携で三大国をまとめ、アングロサクソンの海軍力に対し、世界権力を三国同盟の優位にすべく、ドイツを取り込むことだ」。
他方、NATOは、そもそもの発端から英米によるヨーロッパ支配の手段、より正確には(欧米戦略家の古い原則で)ドイツを「押さえつけ」ロシアを「閉め出して」おくため考え出されたのだ。NATO最初の事務総長ヘイスティングス卿(ライオネル・イズメイ)がNATOは「ソ連を締め出し、アメリカを入れ、ドイツを押さえつけるため」作られたと言ったことは良く知られている。
#アメリカーンスキ
ウクライナ情勢をめぐっては、18日、ロシアによる軍事侵攻の可能性について、アメリカのバイデン大統領が「プーチン大統領は決断したと確信している」と述べて強い危機感を示すなど、緊張が高まっています。
こうした中、G7の緊急の外相会合が日本時間の19日夜、ドイツ南部ミュンヘンで行われます。
議長国のドイツが、世界の首脳や閣僚などが集まる「ミュンヘン安全保障会議」に合わせて、急きょ開催を呼びかけたもので、日本からは林外務大臣が出席します。
外相会合では、事態の沈静化に向けて外交努力を継続することとともに、ロシアによる軍事侵攻に備え結束して制裁などで対抗する方針を確認するものと見られます。
会合の終了後には、共同声明を出す方向で調整が進められていて、ロシアに対し強いメッセージを打ち出せるかが焦点となります。
ロシアは19日、ウクライナの国防省と銀行2行が受けたサイバー攻撃への関与を否定した。この攻撃は15日に発生したもので、米国や同盟国はロシアによる攻撃だと非難していた。
在米ロシア大使館はツイッターで「われわれは、米政権によるこれらの根拠のない声明を断固として否定する。ロシアは言及された出来事と無関係であり、原則的にサイバースペースでいかなる『悪意ある』」操作も行ったことはなく、行わない」と述べた。
ニューバーガー米国家安全保障担当副補佐官(サイバー・先端技術担当)は18日、ウクライナで発生した「DDoS攻撃」と呼ばれるサイバー攻撃の背後にロシア軍の情報機関当局がいたと明らかにし、ロシア政府の責任を追求すると述べていた。
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